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#266 筆なんか持ってないし

普通、原稿は一人称で書く。なので、自身のことを示す時に「筆者である私は……」みたいな書き方にならざるを得ない時がある。その度にいつも躊躇する自分がいる。お、なんかイキッてんのんか?

誰かが「今日は一日、執筆でした」的なことを口にしたり、SNSで報告していたりするのを目にすると、他人事なのにカァッとなる。怒ってんじゃなくて、赤面の方。なんだか妙にむずがゆい。気取ってんなぁ、自分という気持ち。

筆でなにかを表現するひとなんて、もはや絶滅危惧種に近い。筆なんかもう何十年も持っていないけれど、日常的な表現として、まだまだ多数の筆が生活の中に残っている。筆記試験で筆を使ったら、たぶん怒られるのに。50年後くらいには、筆言葉は死語になっているのだろうか。


2022年 秋晴
木漏れ日差す書斎にて筆の赴くままに
伊丹孝裕


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