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#354 ガンダムの武器が西洋風でなかったら

先日、飛行機に乗っていた時のことなんですけどね。近くの席の方が、タブレットでガンダムの映画かアニメを観てらっしゃいました。
 
オリジナルのガンダムがテレビで放映されていたのは、僕が小学生の頃のこと。それはそれは凄まじいブームで、同級生たちはこぞって近所の模型屋さんに通い詰め、手から喉が出る思いでガンプラの入荷を待ち望んだものでした。僕はといえば、宇宙戦闘系のアニメは宇宙戦艦ヤマトで一段落し、ガンダムは完全スルー。マクロスとバイファムで少し復活したものの、中学生以降はその手のアニメを観ることがないまま、現在に至ります。
 
タブレットの中でボカーン、チュドーンってなってるガンダムやらグフやらを横目で観つつ、「なぜ自分はガンダムに興味がなかったんだろう」と考えてみたところ(←本当はそんなに考えていない)、思い当たったことがひとつ。ガンダムに出てくるモビルスーツって、その多くが西洋的な武器を使うじゃないですか。右手にサーベル、左手に楯みたいに。今、振り返ってみると、たぶんあの立ち姿に馴染めなかったというか、感情移入できなかったのだと思う。
 
技術が飛躍的に発達した未来において、ヒト型のメカに原始的な形の武器を持たせて肉弾戦に臨ませる不条理さ。それはまぁいいとして、西洋の剣の類って、人間の腕力と剣そのものの重量を相手に叩き込み、力でなぎ倒すやり口でしょ。当時、影の軍団とか隠密同心を好んで観ていた者にとって、つまり日本の静かなる剣術に心惹かれていた者にとって、ガンダムの西洋風戦闘形態はまったくエレガントさに欠けて見えたのです。
 
とはいえ、日本の時代劇にも言いたいことがありまして。それは日本刀を持った武士が対峙する時、その多くが西洋の剣のようにズバッと振り下ろして切りつけようとするじゃないですか。それで額から血を流しつつ、うぅ無念なり~(バタッ)みたいな。
 
あれって、全然現実的な刀さばきじゃなくて、日本刀ってまずは突いたり、刺したりし、それから切り裂くように設計されています。相手に切っ先を向けて躰のどこかに当て、その勢いで刃を滑らせたり、貫いたり。ほら、剣道の面や小手がまさにそれ。武術の流れとして、竹刀の先を手首等に当てた後は、上方へ力を逃がす所作になっていますが、真剣の時はそのまま刃を押し当て、こすりつけるようにしてダメージを与えるのが本来。日本刀というものが、先端から鍔までのすべてを有効に使えるよう、ほぼ全体が刃としてデザインされているのはそのためです。
 
西洋スタイルではない、リアルな日本の殺陣を観たいものですが、なかなかないものですね。あ、でも、鎌倉殿では切りつけるよりもしばしば刺すシーンが描かれ、正統の匂いが感じられます。
 

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