#293 カーラジオから
また軽トラの話? また軽トラの話である。
スーパーキャリイの大好きなところはたくさんあるのだけれど、ラジオのアンテナを手でシュッとできるところもそのひとつ。伸ばしすぎはあまり粋じゃなく、短すぎても不格好。わかんない? わかんなくてもよろしい。
一体全体いつからパーソナリティだとか、ナビゲーターだとか、そんな風に呼ぶようになったのか。ラジオを生業とするひとは「DJ」であり、「ディスクジョッキー」である。僕らの時代のDJという響きには、ほの暗さというか、俺のためだけに感があって、ブースでレコードをチュクチュクやるようなパリピでは決してない。陰キャでいることを肯定してくれる存在であり、それは今も。
テレビ番組と違って、ラジオは先読みできないところがいい。トークの内容も流れる曲もセオリーがなく、決して派手ではないけれど、「へぇ」とか「これ誰が歌ってんだろ」とか「うわ、ドンピシャのタイミングやん」という小さなサプライズが散りばめられている。
クルマで距離を走ると、拾う周波数が変わる。東名なら大井松田あたりで雑音が交じり始め、そのうち聞こえなくなったと思ったら御殿場手前でクリアになる。同時に、局の雰囲気は少しローカルっぽくなる。県をまたげばまたいだ分だけ、それが繰り返され、飽きることがない。ラジオが聞こえる限り、どこまででも走っていられるし、どこまででも走っていたい。
30年くらい前に、しっとりとしたインストゥルメントのピアノ曲がスピーカーから聴こえてきた。ラジオドラマのBGMとして使われていたそれがとても美しく、その後も数回ラジオの中で流れてきたのだけど、いまだに誰が作ったなんという曲なのかは知らない。まったくのマイナーというわけではないから、いつかまた出会える機会があるに違いない。その日を楽しみにラジオのスイッチを押し、今日もスーパーキャリイを走らせている。
ターン、タン、タララァ~ン……タララァ~ン、タララ~
こんな曲。誰か分かるひとがいたら教えてください。
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