京都学派
菅原潤著「京都学派」を読みました。著者は哲学研究者で、日本大学の教授でもあります。先月読んだ「京都学派と日本海軍」を深堀したくて手に取りました。
京都学派とは西田幾多郎と田邊元、そして彼らに支持した哲学者たちが形成した哲学の学派で、その中の西谷啓治、高坂正顕、高山岩男、鈴木成高の4人を京大四天王なんて呼ぶそうです。カッコいいですね。そうした哲学者の面々を紹介し、誰が誰からどのように影響を受けたのかなんて言うことを細かく解説してくれました。正直、よくわからないのですが、これだけしっかりと説明できるというのは、凄まじいです。そうした中で、私でも名前くらいは聞いたことがあるヘーゲルについて「ヘーゲルは一年そこらで理解できるものではない」、「ヘーゲルの論理学を研究したために一生を棒に振った」とありました。哲学がらみの本はなかなか理解が進みませんが、ハマると恐ろしいのでしょうね。ヘーゲル、ちょっとだけ齧ってみたいです。また、上山春平という方が気になりました。上山は兄弟の哲学科から海軍航空学校を経て、人間魚雷「回天」の搭乗員となり、訓練中に窒息死寸前で救出され、二度の出撃でも九死に一生を得る一方、同僚を亡くし、お骨を実家に届けるなんて言う経験をされている方です。そんな方が京大に招聘され、新京都学派の一員となっているそうですから、ちょっとこの方の本を読んでみたいと思います。
先述した京都学派四天王は、太平洋戦争直前に「世界史的立場と日本」と銘打った座談会を中央公論誌上で三回開催しており、そこでの発言が戦争を正当化するものとみなされたこと、また戦後には彼らのうち、西谷と鈴木が「近代の超克」という座談会に参加したことで、戦争協力と言われています。「世界史的立場と日本」は現在手に入らないそうですが、解説を読んでみてぼんやりと理解したところでは、「ヨーロッパは近代、アジアは近代ではなかったが、日本のみ近代をもった、日本は東亜に新しい世界を喚び起こす」なんて言う感じでした。この辺りは「京都学派と日本海軍」でも読み取れたところですが、戦争協力というにはちょっと薄いように思います。ただ、そうした戦争に協力したとされる集団はほかにも結構あるようなお話もありました。
京都学派四天王は戦後、GHQによって公職追放されています。これも「GHQによって」ですから、いわば東京裁判と同様の戦勝国による押しつけのようなものだと思えなくもありません。本書の結論とはちょっと違った方向の感想になりました。いや、しっかり理解ができておりませんので、またいろいろ読んだら結論が変わるかもしれません。
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