ホタル(ネタバレします)

 映画「ホタル」を観ました。知覧に行ったのが2年前で、その時にこの映画を知り観たいと思っていたのですが、すっかり忘れていました。先日、何となくAmazonプライムビデオで観てみて、知覧の富屋食堂が登場したところでようやく思い出しました。


 主人公の山岡秀治を演じるのは高倉健、その妻・知子役が田中裕子と聞いただけでもう十分な感じですが、期待通りにとてもいい感じの夫婦を演じてくれました。山岡は自ら漁船を所有して、漁業を営んでいるのですが、知子が人工透析となり、遠方に漁に出ることが出来なくなったので、「いけす」と呼ばれる漁港近くでの養殖で生計を立てているようです。そうした夫婦のディティールが徐々に明らかになって行き、山岡が知覧特攻隊の生き残りであることが分かります。昭和天皇が崩御され、山岡によって生き残ることが出来た藤枝が山岡を訪ねてきて、富屋食堂にも顔を出しますが、藤枝は山岡に会わずに青森に帰ってしまいます。そして、その後、雪山の中で遭難し、亡くなってしまいます。この辺りを書き連ねていくと全然まとまらなくなってしまうのですが、なんていうか一つ一つの描写がとても印象に残っています。藤枝の葬式に来た山岡が知子に「あの時ここに来て、一緒に吞んで、一緒に泣いてやったら、、、人が人に出来ることは、そういうことだけなんじゃないかと、今になって気がついた。」といいますが、なんとも良いセリフを、高倉健らしい間で表現してくれました。


 山岡の特攻隊の先輩で金山という方がいるのですが、この方は在日朝鮮人でした。金山には許嫁がいるのですが、それが知子でした。察しの良い方なら、映画の序盤で分かるのかもしれませんが、私はそれがはっきりしたシーンでビックリでした。金山は許嫁に何も伝えることなく出撃するといいます。しかし、山岡と藤枝に諭されて、二人に対して言葉を残します。「大日本定刻のために死ぬのではない。朝鮮にいる家族のため、知さん(許嫁)のため、出撃します。」と2人に伝えるのですが、それは2人も突撃して亡くなる前提だったのですが、2人とも生き残ってしまいます。山岡は意を決してその言葉を知子に伝え、知子と共に韓国の金山の家族のところにも伝えに行きました。


 タイトルの「ホタル」は、特攻隊の中で「ホタルになって帰ってくる」と言って飛び立っていった方々がいたことから来ているのですが、金山の家族を尋ねた韓国で山岡夫妻はホタルを観ることが出来ます。金山に会えたのでしょう。


 とても良い雰囲気で場面が進んでいき、色々と良いところがありましたが、一番良かったのは、山岡が知子に「2人でここまでこられて夢のようだ」と言ったシーンでした。あんな夫婦でいたいと思える映画でした。

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