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会社再建

 福永正三著「会社再建」を読みました。著者は京セラ勤務を経て、富岡光学(株)(現在の京セラオプテック(株))に赴任し、毎月一億円の赤字を出していたこの会社を、毎月一億円の黒字を出す会社へと変貌させた方です。

 京セラ時代に稲盛塾長の薫陶を受けており、稲盛哲学に惚れ込んでいるのが伝わってきました。昭和57年の経営方針発表では「苦のない世界」というタイトルで、宇宙の真理を説かれたということで、この話は3時間にも及んだとのことでした。正直、稲盛塾長のお話に惚れ込んではいるものの、宇宙関係になると咀嚼しづらいのですが、著者は大きな衝撃を受け、「心の奥底まで響いていった。」と言っていました。私などが簡単に「惚れ込んでいる」なんていう言葉を使ってはいけませんね。上には上がいます。

 そんな著者ですが、富岡光学への赴任を打診された時は、「左遷」という言葉が頭を過り、前向きになれなかったということでした。いざ赴任となった時には「京セラから来た憲兵」などと言われたのだそうです。そんな状態の中で、著者は、午前中は挨拶、午後は掃除を行うような毎日を繰り返し、徐々に社員の心をつかんでいったということでした。著者は、最初から富岡光学の社長として赴任したのだと思っておりましたが、当初は技術部長という肩書だったそうです。本書の中では、どのタイミングで社長になられたのか分かりませんでしたが、他に社長がいる中で、社員に京セラフィロソフィを説き、会社の再建をしようと動いておられたようでした。トップで改革を行うのと、トップが別にいる中で行うのでは、やりやすさが全然違うでしょうね。

 社員が、家を建てるためのお金を貸してもらえないと聞けば銀行に直談判し、組合員たちが前向きになってくれないと言えば、組合の上層部の方との会食を取り付け、その場で上層部の方に説教をしていました。物凄いパワーを感じましたが、この組合上層部への説教が、物凄く痛快でした。今こんなこと言っちゃったら大問題でしょうけどね。その説教で、逆に組合上層部に気に入られて、改革が進んだということでした。

 現場の社員との会話等、具体的な言葉が惜しげもなく掲載されており、大変勉強になりました。帯には「京セラ稲盛哲学実践の書」とありましたが、まさしくその通り、我身の至らなさを痛感させられました。巻末には、「稲盛語録」が掲載され、語録の中の言葉がどのページに反映されているのかが書かれていました。勉強になった上に、非常に親切な本でもありました。

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