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【第4回】アメリカのトレーナー現場を紐解く~1年間のインターンシップを通して感じた4つのポイント~

第4編 学びの場としての大学スポーツ
 アメリカではスポーツが強ければそれでいいということは許されません。大学での成績も非常に重視されます。もちろん、日本でも文武両道が唱えられているのは承知ですが、アメリカの方がより事細かに規則が定められていると思います。

 第1章で少し触れましたが、学業成績不振者の練習参加禁止は典型的な例だと思います。具体的には、eligibility(適格条件)と言われる基準があり、指定された科目に置いて良好な成績を修めなければ練習に参加することができません。

 日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは主にGPA(grade-point average;成績の5段階評価を簡単な数字で表し平均したもの)で成績が評価されます。簡単に言うとGPA 2.0 以下の選手は練習に参加できません。2.0以上を保つためには可ギリギリの成績では不可能です。点数で言うと平均して70点は最低でも必要となります。

 この他にも単位の取得数の決まりなど、実際には事細かくeligibilityが定められていますが、ここでは割愛させていただきます。詳しくは第1章で紹介したマニュアルにすべて書かれています。https://www.ncaapublications.com/s-13-Manuals.aspx (マニュアルのリンク)

 このような学業に対する取り決めがある一方で、成績優秀者の表彰などもされます。特にGPA 4.0、いわゆるオールAの選手などは高く評価されます。

 学生トレーナーの場合は、GPAによって活動ができないと言ったことはありませんが、奨学金をもらったり、大学院に進む、就職する際に大きく影響してくるので高いGPAを保つ必要があります。この点についてはSports Medicine Teamも理解があるので、テストや課題で忙しい時は学業を優先してもいいということになっています。

※毎年5月に行われるAthletic departmentの表彰式。写真は女子バスケットチームが表彰されている時の様子。

 また、学業に加えボランティア活動にも力を入れています。すべてのスポーツチームを統括する大学の部署、すなわち、Athletic department(大学体育局) が1年間で最低でも一人10時間のボランティア活動をするように義務づけられています。

 アメリカンフットボールチームだけでも100人を超える大所帯であり、それぞれが10時間のボランティアを行った時の貢献力は相当なものになります。

 もちろんSports Medicine Teamにも義務付けられており、私もテキサス南部を襲ったハリケーン「ハービー」の被災地を訪れて清掃活動を行うなどしました。

 1年間のインターンシップでしたが、学業やボランティア活動などのスポーツ以外のことに関してもたくさんの取り組みを見ることができました。学生を育てるという、一教育機関としての役割をAthletic departmentもまた担っているということだと思います。

※テキサスを襲ったハリケーン「ハービー」の被災地でボランティア活動した時の様子。

最後に
 今回のインターンシップを通して、アメリカの大学スポーツはとてもシステム化されていると実感しました。また、大学スポーツが生み出す経済力も日本とは比べ物にならないです。

 それはアスリートをサポートするSports Medicine Teamにも及んでおり、Sports Medicine Teamが保有している施設の充実ぐあいも半端なものではありません。ただ、それらの施設・環境を十分に生かし切れているかどうかはまた別の問題ではありますが。

 とはいえ、アメリカの大学スポーツは世界をリードするものであり、学ぶべき点がたくさんあると実感しています。

 最後になりましたが、英語もまともに話せない私にこのような貴重な経験を与えてくださったSports Medicine Teamには感謝しかありません。アメリカ人のフレンドリーさ・親切さがあったからこそ、これらの経験・学びができたと言っても過言ではありません。

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