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10年前の憧れを鮮明に思い出した話┃なくなったブランドが教えてくれるスノーボードのかっこよさ

誰にでも「欲しかったけど手が届かなかったもの」があると思う。自分でいうと、それは無くなってしまったブランドのスノーボードだ。

わたしはスノーボードが好きな32歳だ。16歳くらいの時にテレビでスノーボードの大会の映像を見て、かっこいいと思い、そこからずっと愛好家でありプレーヤーとして関わってきた。

一言で「スノーボード」というとすごく大きい単位になるが、道具という括りでスノーボードを見ると、その中には様々なブランドや種類があって、それぞれ個性もある。その中から自分が気に入ったものを選ぶことはスノーボードの大きな楽しみの1つだ。

撮影:https://www.instagram.com/nishi_yutomo/

スノーボードは安い買い物ではない。とくに最近は、物価高や円安の影響もあってかなり高価なものになってきているが、社会人の今なら買おうと思えば買える。しかし、当時16歳や17歳のころの自分にとって、スノーボードのギアはすごく高価で自由に買えるものではなかった。

買えるものではなかったが、当時どうしても気になる憧れのスノーボードブランドがあった。それが「FORUM SNOWBOARDS」(以下:フォーラム)だ。


https://forumsnow.com/

少し、このFORUM SNOWBOARDSについて話すと、フォーラムは1996年に当時スノーボード界のアイコン的存在だったピーター・ラインが設立。業界をリードする多くの有名なプロスノーボーダーが所属していて、業界最大手のBURTONと張り合うブランドだった。2004年にライバルのBURTONに買収されることになるが、BURTON傘下の間でも独自のアイデンティティを保持し続けていた。古参のスノーボーダーからするとシーンを創ってきたアイコン的なブランドだったが2012年に経済的理由でなくなった。

自分より上の世代は00年代初頭の勢いがある頃を知っていると思うが、わたしがこのブランドの存在を知ったのは、勢いに少し陰りが見え始めた2008年~2011年くらいだった。しかしながら、かっこいい世界観は当時から変わっていなくて自然と憧れを抱くようになった。

なぜ憧れを抱くようになったのか。

そのエピソードについても記したい。

スノーボードの右も左も分からない高校生の頃、幼少期から家族でお世話になっていたペンションで冬休みや春休みに1週間とか2週間の単位で居候をさせてもらっていた。ペンションのお手伝いをすれば、滑らせてもらえる最高の環境だった。居候をしていたスキー場は、新潟県にある妙高杉ノ原スキー場。杉ノ原は、当時から独自の空気感のあるパーク(雪上に設置されたアイテム)を展開していた。スキー場のパークは一般的に様々なレベルの人が滑れるように、いい塩梅のアイテムを設置するのだが、妙高杉ノ原スキー場は尖っていて、かなり難しいレイアウトだった。スキー場のパークを整備する人たちを「ディガー」と呼ぶのだが、そのディガーの人たちが、かっこいい映像を撮るためにあえて難しいアイテムが配置されていたのだ。当然、技術的に未熟なわたしには全く歯が立たたず、なにもできなくてパークの隅で座り込んでる時間が多かった。座り込んでいると、パーク入口からディガーたちが滑り降りてくる。なんというか、みんなとても悪そうな格好をしていて、高校生のおれからすると怖い人たちだったが、でも滑りはめちゃくちゃかっこよくて痺れた。

居候していたペンションにディガーの人たちが遊びに来ていた。そのペンションはゲレンデの中腹にあるペンションだったから、ディガーが滑ったついでに立ち寄る場所でもあった。なんか怖い人たちがロビーにいるのを見て若干ビビっていたけど、話しているのを聞いていると純粋にかっこいいスノーボードを追求している人たちだということは分かった。

雪かきの業務があったので、ディガーを横目にロビーから外に出てみると、ディガーたちの板がならんでいた。身につけてるものがすべてかっこよく見えてたから、どんなブランドの板に乗っているかすごく気になった。そこで板を1枚、1枚見ていくとその中にフォーラムの板があった。悪そうなデザインの感じがすごく自分に刺さり、それからフォーラムというブランドを意識するようになった。調べれば調べるほどかっこよくて、そのまま憧れになったが、高校生の自分が容易に買えるものではなく、当時フォーラムに乗ることは叶わなかった。

大学生になったら、バイトをしてフォーラムを買おうと思っていた。しかし、大学生になった途端にフォーラムがブランドごと消滅することになった。モデル落ちとか探せば買えたかもしれないが、無くなってしまうということもあり、ミーハーな大学生のわたしは、あえて消滅するブランドを乗ろうとは思わなかった。ここでフォーラムとは一度離れることになった。

しかし、ブランド消滅後もなぜかフォーラムは度々メディアに現れた。普通、メディアに出てくるライダーは毎年NEWモデルに乗るので、なくなったブランドに乗ることはありえないのだが、どういうわけかフォーラムだけはそういうことが起きていた。大学を卒業したくらいの時にそれを見て、フォーラムに乗りたかったことを再び思い出した。

2014年、DEW TOURのAlek Oestreng。

https://whitelines.com/archive/news/forum-snowboard-spotted-dew-tour-return.html

2015年、BURTON Rail DaysのSean Ryan。

https://www.youtube.com/watch?v=vZhJDwsRofo&t=3s

社会人になって少し自由に使えるお金が増えた。フォーラムのことは忘れてない。ふと、「そういや昔のフォーラムの板ってメルカリにあるんだろうか」と思った。メルカリで調べてみると、当時憧れのライダーたちが乗っていた板がまあまあ出品されていた。胸が高鳴った。それからは、メルカリで「FORUM snowboards」を検索するのが日課になり、状態がいいものが出品されるたびに購入した。2020年~2021年にかけて買い集めていたと思う。10年くらい前の板をわざわざ買って乗るというのが楽しかった。スノーボードのものとしてはそりゃあ最新の板のほうが軽量だし扱いやすい。しかし、フォーラムには機能性以上の価値を感じていた。

「当時、欲しかったけど買えなかったものを10年越しに買って楽しむ」というのはかなりエモい気分にさせてくれる。当時の気持ちを思い出させてくれる。多分メルカリがなければこういう楽しみ方はできなかったと思う。ブランドが無くなってからもう10年以上が経つので、今となっては状態のいいフォーラムの板は絶滅危惧種になってしまったが・・。

買ったお気に入りの板も紹介したい。5年前くらいに3万円くらいで買った、FORUM Destroyerの2012年モデル、152cmのキャンバーだ。Destroyerはフォーラム発足時からあるアイコニックなモデルで、ライダー使用率もすごく高かった。2012年のデストロイヤーは最終モデルということもあって、特に人気だった覚えがあり、FORUM消滅後もあえてこの板にのるライダーがいた。

FORUM Destroyer

ほぼ新品の状態で出品されていた。嬉しくて2〜3回くらい乗っちゃったけど、今ではほぼディスプレイてきな感じになっていて大事にしている。

フォーラムの話は、話せばキリがないのだが・・Youngbloodというモデルも買った。このモデルは生産数も当時多かったのか、頻繁にメルカリで販売されていた。しかも結構安くて、買いやすかった。先述のDestroyerはさすがにヘビーユースできないので、このYoungbloodをメインボードで運用していた。

FORUM Youngblood

この2012年のYoungbloodのソールのデザインはDestroyerと人気を博したHolly Mollyと色違いのソールデザインであったのも良いポイントだ。というわけでこのYoungbloodでなにかスノーボードで画を残したいと思うようになり撮影にも使った。2023年の話だ。未だにYoungbloodは引っ張り出してきて乗っている。古いくて重たいので、お世辞にもで乗りやすい板ではないが、そんなのは関係ない。好きかどうか。かっこいいかどうかなのだ。昔のモデルを乗り続けるのがかっこいいブランドってほんとにフォーラムくらいだと思う。

撮影:https://www.instagram.com/kook__boob/

もちろん機能面とか性能は最新のものがいいだろうけど、モノ選びのこだわりを表現するなら、フォーラムのようなモノの選び方も楽しみ方のひとつだ。「あの頃欲しかったけど手が届かなかったもの」を買ってみれば初心を思い出したり、自分のこだわりの源泉を見つめるいい機会になるはずだ。

#メルカリで見つけたもの

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