カバンの中のコテ
リンちゃん
私も、これまでの生活と比べて文字を書く時間が1日の割合の多くを占めるようになった気がする。気がするんだけど書いて添削したらどんどん文が短くなって最終的に消え失せて一体今日はなにをしてたんだっけ…という日が続いているので何もなくならないようにこのコラムを書きたい。
去年の冬りんちゃんと会ったとき、その時もりんちゃん大荷物だった気がする!カバンからコピックとか大きいノートとか色々現れて、デニーズの机がどんどん狭くなったその隙間でパフェを食べた記憶がある。
カバンの中のコテの話↓
なるべく荷物は少なくしたいと思うほうだけど、旅行の時とかコテばかりは必ず持ち歩いてる。鳥取の砂丘でも、青森の恐山でも、京都の清水寺でも、ほんの少しの前髪のカーブのために、私はカバンの中に長さ30センチほどのコテを入れて持ち歩いている。
コテとは、熱で髪の毛に丸みや動きを出すためのもので、180度とか250度とかの高温を持つので下手したら火傷の危険が伴う厄介なアイテムで、私は多くの傷あとを残しながらも10年ほど愛用している。
化粧とかお洒落とか自分が女子っぽいことをすることに恥ずかしさを感じてあんまりできていなかったけど、コテによって前髪を数ミリ浮かしてまろやかな感じを身に付けることは、お洒落のもっと手前の段階のような気がしていて初心者の私にでもできるおめかしだと思ってる。
そのまろやかなおめかしを知ったのは、何はともあれ菊池亜希子のムッシュ本「マッシュ」だ。
「マッシュ」とは、菊池亜希子が、モデルと編集とイラストと文章を務めた雑誌であり、センスがあって、髪の形が丸くてまろやかな、女子っぽすぎないかわいらしさをもつ彼女を全ページに渡って堪能できる素晴らしい本である。
彼女の好きなものから、目にしたものまでそれらは全部おしゃれだし、好きなものに対してとことん没頭する姿勢とかもすごくかわいい。菊池亜希子は私より20センチぐらい背が高くて、素朴だけど整った顔立ちで、華奢で、色白で、私とは何もかもが違うのだけど今も昔も憧れ続けて10年目、そのまろやかな髪を一応真似し続けて今の私ができている。
ちなみに「マッシュ」でも菊池亜希子のカバンの中身特集をしていたのだけど、彼女のカバンの中にはコテは入っていなかった。
卒業旅行の時、男女共々同室で川の字になって、私は歯ぎしりがひどいため1番端で寝ていた。
朝起きて男子達が部屋から出てトイレやらどっかに行った時に、その時を待ち構えていたかのように私たち女子はカバンの中から服やら化粧品を引っ張り出して素早く身支度を始めた。化粧水を顔に引っ張ったくように叩きつけたり、ジーンズをジャンプして履いたり、私もコテで、職人の如くものすごい勢いで前髪を巻いた。
いくら男女で川の字に寝れる仲でも、身支度する姿は男子には見せたくない。と言う女子っぽさにひとり後ろめたさを感じていたから、あの時女子総出で猛スピードでめかし始めたのはかなりおもしろくて、堂々と急いでたみんながすごくかわいかった。
男子が部屋に戻ってきた時にはみんなわりかしきれい目な姿になっていた。
卒業旅行、最後に行った出雲大社の大しめ縄の下でみんなで神頼みしていた時も、私はカバンの中にコテを入れて、2礼2拍手1礼をしたのだった。
ユミ