Torihada on Sunday
千里さんがゲスト出演したのだとSNSで知り、1日遅れで森山良子さんの「オールナイトニッポンMUSIC10」を聞き始めたのは7/9の24:00少し前。
リアルタイムで聞けなかった番組も、こうして一定期間、視聴ができるradiko。あっという間に本当に世界は便利になった。つくづくそう感じる。その喜びとありがたみを噛み締めながら番組を聴き進めていくと、大江千里さんの告知コーナー。
千里さんが「BIG SOLO」というタイトルで、日本へピアノツアーでやって来る事は存じ上げていたが、細かな会場詳細までは追っていなかった。
そんな中、千里さんの口から「東京オペラシティコンサートホール」の会場名が。
え!?おぺらしてい!?はつだい!?
僕タカハシコウスケの曲に「opera city」という楽曲がある。馴染みのある地名と名称にハッとする。
僕の頭の中ではまさに「千里が街にやってくる」な状態。
直ぐにスケジュールを確認する。
よし、行けるぞ。そのままネットでチケットを予約。やっぱりこれも便利になった。昔は電話かけたりチケットショップに足を運んだよなぁ。
そんなこんなで7/21。あっという間にその日は来た。自転車のスタンドを蹴り上げ出発。もう何が起こっても驚かない、夢中で錆びたペダルを漕いで初台へ。
割とギリギリになるかな、なんて思っていたが、会場の30分以上も前に到着してしまった。気持ちが前のめり過ぎた。
いざ、自分で曲のタイトルにしたものの、一度もその敷地に立ち入ることの無かった東京オペラシティへ。はじめまして。
コンサートホールのエントランスからたくさんの人。
今は歌うことをやめ、ジャズピアニストとして活躍する千里さん。きっと昔からのファンの方、最近初めて過去の千里さんの作品を知ってファンになった方、ピアニストとしての千里さんからファンになった方、色々な層の、色々な想いがここにギュッと集まっているんだろうな、なんて考えたら胸が熱くなる。僕も、94年に「Sloppy JoeII」を耳にしてから、30年来のキッズだ。
チケットの表記を頼りにたどり着いた僕の席は2階の下手側だった。ちょっと観づらい位置ではある。が、きちんと生・千里さんを拝むには十分な位置だ。
ステージのど真ん中に置かれたグランドピアノ。静かなざわめきが天井や壁に反射する会場。そういえば、僕が初めて千里さんを生で観た15周年コンサートもこんなだった。NHKホールのステージのど真ん中にグランドピアノが置かれ、ピアノを弾いて歌う千里さん。それをぐるりと囲むサポートミュージシャンの面々。
あの時の画と音に、僕の心は射抜かれたのだ。
今では遠いあの日に想いを馳せているうちに開演時間。
千里さんが下手からやってくる。
会場の拍手がどんどん広がっていく。それはどんどん大きくなって、うねる。僕の全身の毛穴が広がる。自分の視力が悪いことを恨む。
一曲目の「YOU」のイントロがコンサートホールに響く。音の粒が方々に飛散して、僕の元にも届く。ああ、僕はこのひとの今夜を見届ける為に生きてきたんだ。なんてことを、大袈裟ではなく本気で感じる。
千里さんの姿を、表情を、動きを、MCの言葉を、鍵盤の上で踊る指先を、ピアノを弾きながら小さく口ずさむその声を、ひとつも取りこぼさないように僕は一生懸命にステージに全ての神経を集中させた。
あっという間にコンサートは終わってしまった。
どっと疲れを感じて、満足感と幸福感を含んだ息を大きく吐く。
今日、来れて良かったな。本当に良かったな。本当に本当に良かったな。
何度も何度も反芻しながら、僕はすっかり夜になった東京の街を、灯りの中を、自転車ですり抜けて帰った。
また、千里さんの息づかいを感じられる空間に行ける日を想って。
ちょっと気持ちが向いた時に、サポートしてもらえたら、ちょっと嬉しい。 でも本当は、すごく嬉しい。