”心理戦”の調査で明らかになったこと
●英・米人学者は”大東亜戦争”をどう捉えていたのか
平成25年から何度も渡英し、「内なる方向づけ」の「長期的浸透」によって大衆を洗脳し、敵国の抵抗精神を弱める心理戦の方法を研究したタヴィストック研究所について調査した。
洗脳のポイントは、国民の道徳心を低下させて、国民の誇りとアイデンティティを完全に破砕する「精神的武装解除」にあった。
そのために同性愛を奨励し、男らしさ、女らしさという固定的性別役割分担意識を否定する性革命によって、性道徳を破壊し、「女性を社会に進出させて税収を増やし、家族崩壊へと導く『男女同権運動』」を推進する戦略を考案した。
同研究所の委員会メンバーに選ばれた英社会人類学者のジェフリー・ゴーラーは、日本の侵略戦争を「性差別の社会化」と捉え、幼児期の家庭教育によって強制された「男性優位と女性の受動性、従属パターン」が「成人に達した日本人によって民族国家の世界にまでも拡大」され、「型にはまった規範によって閉じ込められていた欲求不満と憤怒が、海外の敵に対してすさまじい凶暴性を帯びて爆発した」と結論づけた。
ゴーラーの推薦によって米戦時情報局の主任アナリストになったルース・ベネディクトは、「伝統的攻撃性」「本姓に根差す軍国主義」という日本人の国民性、道徳の「病的特性」が侵略戦争の原因と捉えて、『菊と刀』を執筆した。
この二人に、米人類学者のマーガレット・ミードとその夫グレゴリー・ベイトソンらが加わって、太平洋問題調査会の「日本人の性格構造会議」が1944年12月に開催され、同様の「国際誤解」が共有されるに至った。
同会議のまとめ役を務めたミードは、タヴィストック研究所で科学者養成の中核的役割を担い、親密な関係にあったゴーラーとベネディクトをつなぎ、米政治学者のハロルド・ラスウェルも同研究所を通してつながっていた。
ラスウェルは敵国地方紙を解析するプロファイリング(同研究所の作戦用語で、個人、集団ごとに格付けする作業)の専門家として活躍し、米戦略諜報局が1942年に「日本軍の信頼を貶め、打倒する」ために作成した「日本計画」の土台となったゴーラー論文「日本人の性格構造とプロパガンダ」の重要な情報源となった。
●”男性が女性を支配している”と考える歴史観
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