LGBT理解増進法案と「日本型包括的性教育」

LGBT理解増進法案の修正審議が正念場を迎えている。本日3時から開催される自民党の性的マイノリティに関する特命委員会と内閣第一部会の合同会議が注目される。
G7国で「差別禁止法」制定はカナダだけ
 「G7国でLGBT差別禁止法が制定されていないのは日本だけ」というマスコミ報道は事実に反し、明白な誤りである。「LGBT法」が成立しない米国の実情については、福井県立大学の島田洋一名誉教授が産経新聞の4月6日付「正論」に詳述している。
 憲法レベルで差別・平等に関する一般的規定はあるが、差別禁止法はカナダ人権法のみで、「いずれの国にも性的指向・性自認に特化して差別禁止を求める法律はない」ことを衆議院法制局が明らかにした。
 雇用、住居、公共施設・サービスなどの利用に関して性的指向・性同一性が法律に盛り込まれているのは全米の23州に過ぎず、19州で「反LGBTQ法」が制定が制定され、対立・分断が深刻化し、31州で「スポーツの性区分は出生時の性とする」と州法に明記。
 イギリスでは、性的自己決定権を強調する「包括的性教育」によって、性転換手術をする18歳以下の子供が10年間で77人から2590人に急増し、英唯一の児童ジェンダー医療機関が今春閉鎖され、LGBT問題が政局の火種となり、政権瓦解、国家分裂の危機に直面している(『日本の息吹』6月号の拙稿参照)。
性道徳・性規範の解体を目指す「差別禁止法」「包括的性教育」
 クビー著『グローバル性革命』によれば、性に対する認識を根本的に変革することを目指す世界戦略である「性革命」論者は、「差別禁止法」という「欺瞞的な悪法」を成立させて「差別」する人を「逆差別」し、弾圧することを狙っているという。
 「包括的性教育」は性革命を実現するための手段であり、性道徳・性規範を撤廃し、幼稚園から「ジェンダー平等」イデオロギーを子供たちに洗脳することを狙っている。1991年に出版された『包括的性教育のためのガイドライン:幼稚園一12学年』や2010年に発刊された「欧州の性教育標準」に明記された年齢別性教育の具体的内容を見れば、クビーが厳しく批判しているように子供たちを「性的強迫の深淵の中に溺死させる」ものであることは、一目瞭然である(詳しくは、モラロジー道徳教育財団「道徳サロン」拙稿連載51参照)。
 拙著『「こども庁」問題Q&A』(歴史認識問題研究会発行)で詳述したように、安倍元首相を中心とした自民党の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育」全国実態調査によって浮き彫りになった『間違いだらけの急進的性教育』(拙著、黎明書房、参照)を推進する団体の代表幹事と幹事各2名が翻訳したユネスコ編『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店)の奥付の上には、誰も気づかない小さな文字で注目すべき但し書きが付記されている。
 「国際セクシュアリティ教育」の中には傾聴すべき科学的知見も部分的に含まれているが、訳者の代表格である浅井春夫著『包括的性教育』(大月書店)には、「政府・文科省が強引に進める道徳教育の目的と内容に真っ向から対抗するのが性教育である。道徳教育と性教育とは相容れない目的と内容がある」と明記している。
「日本型包括的性教育」によるLGBTの「正しい理解」の増進を
 
LGBT理解増進法案第7条は、学校の設置者に理解増進施策に「協力するよう努めるものとする」と明記しており、研修会の講師として道徳教育を全面否定する過激派団体の活動家が継続的に呼ばれ、予算化される危険性が高い。
 1981年に結成された「全国性教育研究団体連絡協議会」の野津有司理事長(筑波大学名誉教授)が提唱する「日本型包括的性教育」の構築こそが求められている。道徳授業の著書(東京書籍)もある同理事長によれば、その実践上の留意点は、①学習指導要領を正しく理解し、実践する拠り所を明確にして、教職員の共通理解を図って取り組む、②児童生徒の実態を踏まえて教材等を工夫する、➂家庭・地域との連携を推進し、保護者や地域の理解を得る、④集団指導と個別指導の連携、の4点である。
 これは前述した全国実態調査を踏まえた3年間の中教審論議に基づく性教育の「歯止め規定」を踏まえた「日本型包括的性教育」として高く評価できる。LGBT理解増進法が性道徳・性規範解体を目論む「グローバル性革命」を目指す過激派団体が推進する「包括的性教育」ではなく、「日本型包括的性教育」を推進する人々によって、LGBTの「正しい理解」が増進されるように修正する必要がある。
 
 

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