楊尚眞『ジェンダーイデオロギーの真実』の警告⑵一世界戦略に無知な国会議員
●LGBT法を推進している政治家に欠落している「性革命」世界戦略の認識
本日の衆議院本会議でLGBT理解増進法案が可決されたが、ドイツの社会学者ガブリエル・クビーは、今日の日本が直面しているLGBT問題は、性に対する認識の根本的変革を目指している「グローバル性革命」の世界戦略の一環であることに警告を発している。
この世界戦略はフランス革命からジュディス・バトラーに至るポストモダン的ジェンダーイデオロギーの先導者たちによってリードされており、すべての文化と宗教を通して継承されてきた価値体系の破壊を目指しているが、LGBT理解増進法を推進している国会議員にはその認識が全く欠落している。
クビーは同書で「欺瞞的な悪法を成立させてその法律に反する者を逆差別し、欧米社会は驚くべき速さで家庭と社会の崩壊の道を歩んでいる」と警告し、国連や欧州連合等の国際機関の公式的なアジェンダとなり、伝統的な親の概念を破壊し、性的少数者を利用して、家族は父母と子供で構成されるという伝統を壊し、「性道徳・性規範の解体」を狙っていることを客観的文献に基づき明らかにしている。
この「性革命」を実現するために、「性愛化」すなわち「性は楽しむものである」という基本理念に立脚する「包括的性教育」をゆりかご・幼稚園から始めて幼児からジェンダーイデオロギーを注入して、性行為に対する「性道徳・性規範」の撤廃を目指している。
●国際家族計画連盟が提唱した「包括的性教育」の狙い
この「性愛化」を促進し、「包括的性教育」を提唱した国際家族計画連盟は、包括的性教育の重要な要素として強調しているのは次のような視点である。
⑴ ジェンダーに対する偏見、固定観念と不平等の兆候と結果
⑵ コンドーム使用法、他の形態の避妊法、合法的で安全な中絶
⑶ 性的権利と性的市民権:性と生殖に対する権利に基づいたアプローチ、様々な性同一性の支持・選択・保護・安全で健康で楽しい方法で性行為を自由に表現して探究する権利
⑷ 楽しさ:若者たちの性に対する肯定、ジェンダーと喜び、自慰行為、情欲と関係性の多様性、最初の性的経験、喜びに伴う不名誉な烙印に対する対処
⑸ 異なる関係(家族、友人、性交、ロマンチックな関係など)
ところで、前回の拙稿で述べた「グローバル性革命」を推進する『ジョクジャカルタ原則活動家ガイド』は、抑圧的な法的基準に挑戦し、大衆運動を起こして大衆を教育し、迅速に対応してくれる政権を探して、政府の政策を開発するなどの具体的戦略を明示した上で、以下の国々の「模範的な実践」事例を通してジョクジャカルタ原則の重要性を強調している。
●ジョクジャカルタ原則戦略の10カ国の「模範的な実践」事例
⑴ ネパール一最高裁が性転換女性を認めた判決は完全な圧勝であった。この判決は全世界的に性的少数者を法的に認める先例となる。
⑵ インド一HIV/AIDSの予防、子供の権利、女性の権利活動家たちとLGBTQI運動家連合で合意された同性間の性行為の非犯罪化のためにプライド行進、言論キャンペーン、VIPと公開イベント、裁判の訴訟等を展開
⑶ オランダ一同性愛を最初に合法化した国であり、活動家たちは、性転換手術等の医療の介入なしに、自ら選択した性同一性を法的に容認させることに成功
⑷ 中国一同性愛が中国の精神疾患の分類表には記載されないが、新たな分類表に「性的指向によって同性愛者たちが経験する苦しみに対しては精神保健的治療が必要である」と記述したのは、同性愛者たちには多少、失望的なことである。
⑸ ブラジル一「同性愛嫌悪のないブラジル」という政府のプログラムが2004年に施行された。
⑹ スウェーデン一最も進んだ同性愛擁護国で、同性愛の権利が国際開発協力団体によって開発支援政策によって体系的に統合されており、協力国の同性愛擁護機関に直接的な財政支援もしている。
⑺ ニュージーランド一ジェンダーの再指定のための保健サービスへのアクセスが改善され、身分確認文書に記録された性別変更がより簡単にできるようになった。トランスジェンダーはパスポートに自分の性別が表示されないように要求することもできる。
⑻ ベネズエラ一同性愛擁護のNPOが2006年に800人の警官と120人の法学者たちに研修を提供した。
⑼ ポーランド一同性愛パレードや学校での同性愛宣伝禁止が解除され、2001年には同性愛嫌悪反対キャンペーンが「ベルリン・ジョクジャカルタ」という名称の巡回展で開始され、展覧会では「ナチス時代の同性愛迫害の恐怖とLGBTQの権利の増進のための証拠としてジョクジャカルタ原則を代弁される希望」を示した。
⑽ レバノン一「レズビアン、バイセクシュアル、クィア、クエスチョニングの女性」の人生の証言を描いた週刊誌や書籍の発刊を通じて第一歩を踏み出した。
この「ジョクジャカルタ原則の活動家ガイド」の最後には、「このガイドで説明した活動が実践される時、あなたは変化を創造するだけでなく、すべての人のために運営されている全世界の人権システムの価値ある一員となるだろう」と書かれている。
こうした世界的動向と「性革命」世界戦略、その突破口を切り拓く「包括的性教育」の正体をしっかりと見据えて、我が国はいかにあるべきかを考える必要がある。
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