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BRIDGE BOOK LAB

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印象に残った本を紹介します📚|テーマ:世界を捉える、視点を変える、自分を見つめる、没頭する|ジャンル:デザイン/アート/建築/自然/科学/暮らし/社会/哲学/ミステリ/SF/文学…
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2024年2月の記事一覧

本の紹介📚|マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険

私たちがよく“自然”と感じる山や森は、実はその多くが商品となる木材を供給するために計画的に整備された人工林である。それは人の手で作られた“木の畑”であり、本来の自然の様相とは大きな隔たりがある。 本書は、自然の森が持つ複雑性と多様性がもたらす、驚くべき秘密を解き明かしていく科学ドキュメントだ。 著者のスザンヌは、カナダの人工林で計画的に植樹した苗木がうまく育たず、そばに自然に生えた苗木の方が生き生きと育っていることに疑問を持つ。効率的に木を成育させる環境を整えたはずの苗木に不

本の紹介📚|魔女 第1集・第2集

「魔女」というと、ファンタジー作品に登場し三角帽子で箒にまたがる「魔法使いの女性」をイメージするかもしれない。そうした魔法使いは「Wizard」と呼ばれ、超自然的な魔法の力を使役する思慮深き善の者として描かれる。 本作で描かれる魔女はそれとは異なり、民間伝承にあるような呪術的でシャーマニズムの要素が色濃い、自然や精霊との繋がりを持った女性たちだ。「Witch」と呼ぶほうがニュアンス的に近いのかもしれない。 構成としては上下巻にまとめられた短編集で、世界中様々な地域や民族の「魔

本の紹介📚|言葉の展望台

言葉とはなんて曖昧なんだろう。 何気ない日常のありふれたコミュニケーションの中で、ふと感じる違和感やモヤモヤはないだろうか。 発言が自分の意図と異なるとられ方をしたり、知らず知らず相手に何かを強いてしまっていたり。 会話の背後には、話し手と受け手の立場や関係性、意識や価値観、言葉の発せられた状況や文脈など、実に様々な要素が渦巻いて、言葉の外に強い力を発生させる。言葉が言葉の通りの意味で交わされている場面なんて無いのではないかと思うくらいに。それは時に目に見えぬ暴力ともなり当事

本の紹介📚|星を継ぐもの

今さら何を語るまでもない、SFの金字塔。それでもあえて紹介するのは本作が真摯に”サイエンス”であると感じたからだ。 私のような素人が科学の定義に触れるのも恐縮だが、科学とはおおむね「観測された事象に対して、観察や実験といったアプローチを用いて正しいと思われる因果関係や法則などを見出していく」ようなものだと理解している。 世の中のSFを見ると、単に宇宙船やロボット、未来といったいわゆる”SF的な”ガジェットやシチュエーションを扱うもの(それはそれで大好きだ)も多いが、そんな中で

本の紹介📚|ゼロからトースターを作ってみた結果

私たちが普段何気なく使っている身のわりの道具たち。それがどのように作られているかを考えたことはあるだろうか。 例えばトースター。なんとなく金属やプラスチックが加工された部品が組み立てられているくらいは想像がつく。ではその素材の原料はどうだろうか。全くのゼロまで遡り、そこからトースターができるまでを独力で再現することは果たして可能なのか。 そんな疑問に対して、とあるイギリスの芸術学生が立ち向かったプロジェクトのドキュメントが本書だ。 トースターを構成する部品を素材ごとに分類し、