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バックパックに入り切る量で

少し前にテントを新調した。

一番最初に使っていたポップアップテントは嵩張るのとやや頼りないのを理由に出番が減り、次に使っていたソロテントは長年愛用していたものの、ついに雨が滲むようになってきてしまったので今回新たに買い替えた。

3代目となる今回のテントは2人でも使えるくらいは広いが、2代目同様、バックパックに括れる程度に軽いし、小さくまとまる。


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大人になって初めてキャンプをしたのは7年前の初夏。車を借りて一人で北海道を旅行したのがきっかけで、正確にはキャンプというよりも、「費用をなるべく抑えるためのテント泊」だった。

旭川、網走、屈斜路湖……と、体が疲れていないときにはテントで泊まるようにしていたわけだけれど、屈斜路湖で夕暮れの湖畔を見ながら、テントから半身を乗り出してビールを飲んでいるときに突然ハッと脳に閃光が走った。

「こ、これは……テントで湖を眺めながらビール飲んでるだけで最高なのに、キャンプ道具を揃えたら最強になってしまうのでは……?」

ここで初めて「いや、もしかしていま自分はすでにキャンプをしているのか?」と思う。350mlのサッポロクラシック、セイコーマートの惣菜、その場凌ぎの銀マットと、テント、寝袋。これしかないけど、これでぜんぜんキャンプなのかもしれない。

子どもの頃に行った、あんなに万全の準備をしたキャンプとはなにもかも違うのに、鳥の声も、風が葉を揺らす音も、山の形も、湖面の青さも、そのときよりも素直に体に入ってくる気がする。3本買ったサッポロクラシックも素直に体に入ってきて、もうあっという間になくなっている……。


それから少しずつ道具を買い揃えて、(自覚的に)キャンプをするようになった。ほとんどなにも持ってない状態で十分楽しかった体験があるので、急いで買い足したりはしなかった。

以降、どれだけキャンプする機会が増えても、今でも基本的な道具はバックパックに入り切る量で収めている。

一番の理由はその身軽さを気に入ってるからだけど、あの、なにもなくても楽しかった頃の感触を忘れないためでもあるのかもしれない。

今でも、まとまって休みが取れるときには必ず車のトランクにバックパックとテントを詰め込んで、天気と場所を見計らってはキャンプをしつつ旅している。

#キャンプの話をしよう


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標高1300m以上、八ヶ岳を真正面に臨む長野県の川上村にて、ここ10年近くは年に数日しか運営していなかった知られざるキャンプ場で現在運営代行をしています。

青木の平キャンプ場
https://aokinodaira.com/

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