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取り戻せない時間

 9月13日のバンテリンドームナゴヤ。中日が1点リードして迎えた9回表ヤクルトの攻撃最終回、1死1,2塁。一打出れば同点、一発出れば逆転の大チャンス。投手は中日の絶対的守護神のA.マルティネス、打者はヤクルトの代打の切り札の川端慎吾。皆が息を飲んで見守る中で事件が起こった。

 マルティネスが投じた初球の外角低めスプリットを川端が引っ掛け、弱いゴロがセカンドの堂上の元へ。堂上は一度一塁走者の西浦にタッチを試みるも失敗に終わり、一塁にボールを送球したが判定はセーフ。そのまま現場では一二塁間で西浦を挟むプレーが続き、二塁走者の古賀が三塁から本塁突入を狙う。そして西浦が挟まれてる間に古賀が本塁に突入するも、生還ならず。2死1,2塁で試合続行かと思いきや、何やら中日の与田監督がここでリクエスト。短いリプレー検証を経て一塁走者の西浦にもアウトが宣告されて、まさかの形で試合が終了してしまった。
 現場は騒然とし、中日の選手が一旦引き揚げる中ヤクルトの高津監督が猛抗議をしている。一体何が起こったのか。
 実は、セカンドの堂上が一塁走者の西浦にタッチ出来ず一塁で川端をアウトに出来なかった時点で二塁はフォースプレー(走者が塁を踏む前にボールを持つ守備側が塁を踏めばアウトとなる)となり、この時一塁がセーフという判定になった瞬間に中日のファーストの福田が二塁を踏んでいる状態のショートの京田に送球しており、西浦が二塁に到達する前に京田はボールを持った状態で二塁を踏んでいた。この時点で西浦のアウトは成立していたのだ。しかし、この時二塁塁審の嶋田がアウトを宣告しなかったのだ。

 この審判のミスによって試合は決定されてしまった。この時二塁塁審がアウトを宣告していれば、二塁走者が本塁に突入することはなく、2死1,3塁でまだ同点・逆転のチャンスは続いた訳だ。優勝争いの一角を担うヤクルトとして負けられなかった試合だった。当然高津監督は20分近く猛抗議を繰り広げた。

 審判がこんがらがるのも理解できる。確かに現場でみてて自分も状況は飲み込めてなかった。ヤクルトの三塁コーチがきちんと把握していればというのもあるかもしれない。しかし、これをヤクルトの三塁コーチの過失としてしまうと審判の存在意義はない。やはりどう考えても二塁塁審の過失なのは間違いない。これのせいで負けが増えてしまったと思われても仕方ないと思う。それにこの負けによって開いたゲーム差によってヤクルトが優勝を逃したら審判はどう責任を取るのだろうか。謝って許されるものじゃないし、辞めたからいいものでもない(個人的感想としては職を辞するべきだと思うが。)。
 審判も人間なのはあるが、ミスが許される職と許されない職とあり、審判はミスが許されない以上叩かれて当たり前である。今回審判の言い訳として「見ていなかった」と話しているが、これは大問題であり、ほかの職業ならキャリア剥奪ものだと思う。
 特にここ2~3年リクエスト制度が導入されてから、審判の誤審が目立つようになった。2年前にはナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)で、しかも同じカードで二塁塁審のよそ見事件があった。他にもあげればキリがないレベルで誤審が問題になっている。

 この負けを覆すことはできない。しかしこれを機にNPBは審判のあり方を今一度考え、審判の能力維持・向上のために動いてほしいと思う。

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