見出し画像

京都大学入試英語の評価基準:受験英語、資格英語、ネイティブ英語の視点からの考察

京都大学入試英語の評価基準: 受験英語、資格英語、ネイティブ英語の視点からの考察

1. 研究背景と問題意識
 京都大学の入試問題は「英文和訳」と「英作文」のみで構成されており、その採点基準は不透明である。具体的な採点基準を明示している教師や講師は少なく、採点者自身も評価基準を完全に理解しているとは限らない。
 私自身は名古屋大学教育学部の卒業生であり、アメリカの公立中学校で教師を務め、30年以上にわたり予備校、塾、専門学校で受験指導を行ってきた経験がある。その経験を通じて、多くの英語教師や英語講師、そしてネイティブスピーカーと接する機会があった。
 その結果、日本には大別して3種類の英語が存在することが明らかになった。それは、「受験英語」「資格英語」「ネイティブ英語」である。
 そこで、この研究の問題意識として、「京都大学の入学試験の英作文ではどのタイプの英語が評価されるのか」という問いを設定した。

2. 研究方法
 本研究では、まず「受験英語」「資格英語」「ネイティブ英語」の3つを理解することから始めた。次に、京都大学の英語試験の専門家とされる人々の英語力と指導方法を確認した。そのために、名古屋の7つの予備校・塾・専門学校で英語講師を14年間務め、また、河合塾と駿台の「京大模試」を計10回受けてみた。
 その結果、講師に旧帝卒レベルの人がほとんどいないこと、また英検1級所持の人がほとんどいないことが判明した。これらの結果から、自分自身で京都大学を受けて確認する必要性を感じた。
 具体的な研究方法としては、京都大学を実際に6回受験し、成績開示を行った。その際、最初の2回は「受験英語」、次の2回は「資格英語」、最後の2回は「ネイティブ英語」を意識した書き方を試みた。その結果の平均値を比較し、どのタイプの英語が高く評価されるのかを考察した。

3. 研究結果
 平成18年と20年(文学部)の試験では、正解率の平均は66%(受験英語)であった。平成21年と22年(教育学部)の試験では、正解率の平均は76%(資格英語)であった。そして、平成24年と25年(総合人間)の試験では、正解率の平均は79%(ネイティブ英語)であった。
 最高得点は81%であり、これを超える得点を出した人がいれば報告してほしいとYouTube、ブログ、ホームページ上で挑発したところ、2件の報告があった。それらの得点は82%であった。また、京都大学が公表している最高点は総合点だけであるが、その得点は8割程度であったため、この8割は英語単独の最高点と考えてよいと思われた。

4. 結果の分析と考察
 この結果からは、サンプルが7個では有意差の検定ができないこと、私が受験慣れしたこと、受験、資格、ネイティブの訳し分けが曖昧であること、年度、学部による難易度、採点の厳しさの違いなどの変動要因が考えられ、単純に「ネイティブ英語が最も評価される」と結論づけられない可能性がある。
 しかし、この調査結果と京都大学教授の置かれた状況、つまり英語で論文を発表して評価されなければならない状況を考慮に入れると、結論は異なるかもしれない。また、私が指導した生徒が京都大学医学部、阪大医学部、名大医学部などに合格した事実も考慮に入れると、結論はさらに異なるかもしれない。

5. 結論
 以上の結果から、京都大学の英語試験で8割を超えるための対策は、「ネイティブ英語とは何か」を定義づけて学ぶことに尽きると考えられる。

6. 今後の課題
 この検証を行うためには、受験英語、資格英語、ネイティブ英語の3つをよく知る人が必要である。しかし、現実にそのような人は稀であるため、追試が困難と思われる。しかし、今後「受験英語」「資格英語」「ネイティブ英語」は1つに収れんしていくべきであると考えられる。その1つとは「ネイティブ英語」であるべきであると、多くの英語指導者が同意すると思われる。ただし、問題はネイティブ英語を指導できる教師、講師が決定的に不足しているため、目標が明確になっても対応はできないことである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?