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【続編】北海道新幹線は新千歳空港と直結を!

私は、北海道新幹線新千歳直結の具体化を探るべく、工費を概算をした。
 
札幌駅から出た新幹線は、白石区の平和駅付近までは高架にて在来線と並行に進む。新札幌駅付近は市街地であり、高架橋の建設が困難であることから、在来線から離れ、地下に入る。北広島市と恵庭市の境界付近で地上に出て、恵庭駅の手前で在来線と合流し、在来線と並行に新千歳空港へと向かうイメージだ。延長約40㎞。工費は決算数値が明らかにされた整備新幹線の八戸=新青森間や博多・新八代間の建設費をベースに概算で3000億円程度と試算された。試算では、構造物、停車場、用地費、付帯工事等含め建設費総額2800億円余となったが、ゆとりを見て総事業費3000億として話を進める。
 
建設期間は、環境アセスメントや用地買収、予算の制約がなければ10年で完了する。いやアジアでの熾烈な都市間競争を勝ち抜こうと思えば10年でこの事業は完成させなければならない。私が概算した北海道新幹線を新千歳空港にまで直結する工費はおよそ3000億円。確かに巨費ではあるが、北海道の、いや日本の100年、200年先という将来から見ると、どれほどの金額なのだろうか。

道外に目を向けると、高速横浜環状北西線は、横浜市青葉区下谷本町から港北区川向町をむすぶ約7・1㎞の高規格道路である。このわずか7・1㎞に2200億の事業費が投じられた。関東地方の高速道路は、東京を中心に放射状に延びている。横浜市にも東名高速道路や第三京浜道路、首都高横羽線などがあるが、いずれも西から東へと延びて東京へと向かっている。このため、横浜市の北西部と横浜都心、湾岸エリアへのアクセスが悪く渋滞など発生していた。横浜港大黒埠頭、南本牧埠頭と東名高速を直結する全体が完成すると、横浜北西地区から臨港地域までのアクセスがそれまでの50分から30分に半減することが効果として期待されている。他に渋滞の緩和による信頼性や交通事故減による安全性の向上、環境負荷の低減などの効果もあげられているが、これら横浜環状北西線による約7キロの効果を、国と公共団体は2200億円の事業費に見合うものとして判断したのである。
 
ひるがえって北海道新幹線新千歳空港直結の場合は40キロで事業費が2800億。工費が膨らんで3000億円になったとしても、10年間で工事を行うとすれば一年当たり事業費は300億円である。高速横浜環状北西線のような公共事業であれば事業費は国と地元公共団体でそれぞれ負担する。整備新幹線の場合は、JR側に建設費の負担は無く、受益を限度としたレンタル料があるだけだが、北海道新幹線の新千歳直結も同様に考える。
 
新幹線新千歳空港線の場合は地元負担が整備新幹線に習って仮に3分の1とすると1000億、そして年間では100億だ。実はこれは札幌市の年間の除雪予算の半額である。さらに、道路や港湾を整備するといった公共事業では、北海道の特例措置が認められており、本州に比べると本道の負担が低く定められている。例えば、直轄国道では北海道の負担は15%で、他の都府県が33%であることに比べると半分以下の負担で済んでいる。これをそのまま適応すると、地元負担は年間45億になる。絶望的な数字ではないはずだ。
 
北海道新幹線直結の目指すところは、新千歳空港の国際ハブ空港化にあるので、新千歳空港の整備も行わなければならないこと、さらには北極海航路の受け皿となる道内の港湾整備も併せて進めなければならないことを考えるとこの事業費は全体ではない。だが北海道の特例措置が、日本の食糧基地・資源供給基地としての北海道への期待感の表れだったのであり、そのことに北海道が忠実に従ってきた結果、農産物の市場開放によって特に北海道が甚大な打撃を受けるのならば、北海道のグローバルハブにも特例措置があってしかるべきではないだろうか。

実現への道筋

続いて、北海道新幹線を新千歳空港まで直結する手法を考えてみよう。素直に考えれば、新函館〜札幌間の整備新幹線と同じ手法が提案される。しかし、これにはいくつもの課題がある。
 
整備新幹線は全国新幹線鉄道整備法に基づいて整備されている。これによれば、「(第1条:目的)新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もって国民経済の発展および国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」とされており、さらに、「(第3条:新幹線鉄道の路線)新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであって、第1条の目的を達成し得るものとする」と定められている。また、第2条では、「この法律において『新幹線鉄道』とは、その主たる区間を列車が200㎞毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう」と定義されている。
 
つまり、新幹線とは日本の国を発展させるため、中核都市を200㎞以上の新幹線網で連結するというものである。この法律で新幹線が「中核都市」と「中核都市」を結ぶものとしていることが、日本において新幹線のような高速鉄道が一例も飛行場と結ばれていない事実と無関係であろうか。
 
北海道新幹線を新千歳空港に延長する場合、路線自体は整備新幹線の基本計画に基本計画線として明記されてはいるのだが、新千歳空港を擁する千歳市は中核都市に該当するのかという課題がある。中核都市とはどのようなものか。似た言葉で中核市があるが、これは地方自治法に基づき指定される都市で、北海道では、函館市と旭川市が該当する。ただし、中核市制度よりも新幹線の法律が先に定められているので、厳密には新幹線法でいう「中核都市」がどのようなものか定義はさだかではない。
 
国内の主要都市を連結して、全国的な高速鉄道網を整備することにより国民経済の発展、生活領域の拡大は図れるかもしれない。しかし、時代はグローバルである。いかにこれに対応するかが重要である。国の内外の主要都市を連絡するもう一つの重要な交通手段である航空路と連結するという観点が欠如しているのだ。
 
都市と都市を連結することは重要であるが、それだけで十分ではないことはこれまでも述べてきた。つまり、都市同士に加え、交通の要衝を連結することがグローバル時代の交通政策として重要なのである。これまで新幹線が直結する空港が日本に存在しないことの原因が、この法律にあったとすれば大変残念である。
 
さて新たに新幹線を敷設する場合、まず新幹線の基本計画に位置づけられ、その後整備計画、ルートの公表、環境アセスメント、そして事業認可申請とその認可、さらに事業着手、そして用地買収や工事等を経てようやく開業という段取りになる。
 
具体的には次の新幹線整備の「基本5原則」を満たすことが求められている。

①民営化後のJRの判断を尊重(JRの同意)
②JR負担は、受益を限度とした貸付料のみであり、建設費の負担はない(第2の国鉄は作らない)(※受益とは、新幹線を整備する場合の収益と新幹線を整備しない場合の収益の差)
③並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意等基本条件を確認のうえ着工
④費用対効果等を算定し着工を決定
⑤財源については、貸付料等収入の一部を充てた後、国が3分の2、地方自治体が3分の1を負担

こうした数多くある手続きをひとつひとつクリアしていかなければ、開業は現実のものとならない。北海道新幹線の最初の開業予定区間である新青森〜新函館間では、基本計画が昭和47年、事業着手が平成14年である。ここまでに約30年の時間を要している。開業までは実に40年以上、約半世紀の時間が費やされることになった。しかもこの間、多くの紆余曲折があった。
 
計画に乗せる働きかけを始めても、札幌〜新千歳空港間が日の目を見るのはいつになるのか、想像を絶すると言わざるを得ない。この手のビッグプロジェクトで開業や完成が遅れた例は数多くあるが、予定が早まった例は稀有である。従って、現在の手法をそのまま適用するのではなく、他の手法も検討しなければならない。
 
わが国の国土をより安全で、より有用なものに発展させる高速道路(正確には高規格道路)の整備にはさまざまな手法が用いられている。国土開発幹線自動車道法にもとづき、道路関係公団(現高速道路会社)が施行する高速道路整備に加え、一般国道の自動車専用道路として整備する手法、地方道として公社が整備する手法、一般国道のバイパスを活用する手法、さらに新直轄方式など、努力と工夫を用いて安全で安心な規格の高い道路整備が進められてきた。グローバル化の時代にネットワークアクセスの加速化が求められている時代には、新幹線の整備手法をたった一つに限定し続けるのはいかがなのものか。
 
主要都市ならびに世界的に魅力ある観光地も連結し、さらに新千歳空港を国際的なハブ空港に押し上げる、そういう新しい鉄道の考え方を柱とするためには特別の立法措置がなされるべきかもしれない。既存の財源とは異なり、また重点的な予算配分により短期間に事業が完成するような新しい手法が必要である。

現在わが国は、地方を合わせて1000兆円超に上る公債残高におびえる議論が広がっている。しかし、この時を逃してはならない重要なプロジェクトを進める上で、財源確保のための融資を端から議論しない手はないのではないだろうか。