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Ep:5 時代の最先端を行く~企業不正を糾弾

平成13年、私のキャリアに再び転機が訪れました。

バブル崩壊後、デフレによる経済不況や内部告発制度の浸透により、企業不正件数が年々増加していきました。例えば平成7年の都市銀行ニューヨーク支店巨額損失事件、平成8年の大手商社による銅不正取引事件、複数の大手証券会社による損失補填事件、大手自動車メーカーのリコール隠し事件、大手乳製品加工会社の食中毒事件、大手食品加工メーカーの牛肉偽装事件等々、枚挙に暇がないほどの増加ぶりでした。

バブル崩壊後の企業不正増加を受けて、90年代後半から一部の大手監査法人が企業内の不正調査を代行するニュービジネスに乗り出しました。当時、日本の大手監査法人はいずれも世界5大会計事務所の系列下にありましたから、フォレンジックあるいはBFIS(BusinessFraudInvestigationService)などと呼ばれ、欧米で盛んだったビジネスを日本にも導入しようと進出機会を狙っていたわけです。そして企業不正調査部門を日本で立ち上げるに当たり、会計知識があり捜査経験のある人材を探していたのです。

高額な報酬も魅力ではありましたが、既に米国公認会計士の資格を持っていたこと、日本で新たな事業分野創出に携われること、さらには学生時代を含めて約8年間の米国滞在で培った経験や外国語スキルも活かせると考え、挑戦してみることにしたのです。こうして私は、大手監査法人の中で日本でこうしたサービスを始めた第1号であったアーサーアンダーセン系列の朝日監査法人に入社しました。

そこのBFIS部門で待っていたのは、私より数カ月前にリクルートされた英国スコットランドヤード(英国警視庁)出身のこれまたアメリカの刑事ドラマ「刑事コジャック」に出てくるコジャック役のテリー・サバラスにそっ
くりな風貌の英国人でした。二人とも警察出身ということで意気投合し、企業不正を暴く専門家集団として大手金融機関の情報漏洩などの事案に関わらせていただきました。

企業不祥事に際してその調査を外部委託するのは欧米では当たり前ですが、日本でも企業の積極的な説明責任が求められる中、調査を外部委託することで結果の妥当性、透明性、公平性が確保でき、経営リスクを軽減できることから、調査の外部委託は時代の流れでもありました。不正調査のチームは、アーサーアンダーセンが消滅した後、業務を引き継いだ世界4大会計事務所の一つであるKPMG(KlynveldPeatMarwick& Goerdeler)でさらに強化されました。会計士はもとよりハイテク犯罪に詳しい専門家なども加わり、不正調査を担うプロフェッショナル集団として、捜査のノウハウに加え会計分析、コンピュータ・データ解析などを武器に、情報漏洩、従業員の横領、経理不正操作や経営者の不正隠し、再発防止体制づくりから訴訟対策まで幅広い分野にわたって不正リスクに関わるサービスを提供したのです。

日本でこうしたビジネスの創成期にその一員として携わることができたのは幸運でしたし、政治家になってからも、官公庁の裏金問題、3セク企業の経営問題、税金の無駄遣いなどを追及する際、そのときの視点やノウハウは大いに役に立っています。

画像1新聞に取り上げられたインタビュー記事
(「監査法人が新ビジネス-企業不正暴く専門家集団」東京新聞2004年8月27日)