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北海道新幹線は新千歳空港と直結を!

北海道の交通環境は他都府県に比べて大きく立ち遅れています。

東海道新幹線の開業により、東京―名古屋―大阪の移動時間は劇的に短縮されました。東京―大阪間は約500㎞、それまでは特急で約8時間でしたが、東海道新幹線により4時間にまで短縮されました。現在はさらに短縮され、東京―新大阪間の最短は2時間20分台です。その後、東京を中心に北は青森、南は鹿児島、日本海側も新潟、金沢と全国各地が新幹線で結ばれています。さらに四国も3本の本四架橋によって陸路で結ばれました。日本の時間距離を表す地図は大きく塗り替えられました。

一方、北海道の交通環境の改善は進まず、本州に大きく後れをとっています。東京―名古屋間は約300㎞で、札幌―函館、札幌―帯広間に相当する距離ですが、この300㎞を本州では約1時間半で移動できるのに、北海道では約4時間と倍以上の時間を要します。都市間の移動時間が短縮されることは、拘束時間が減るということであり、ビジネスや余暇に利用する時間が増えるということです。移動時間は、人々の交流、仕事の効率に大きく影響するばかりでなく、めぐりめぐって賃金格差につながる大きなハンディといえるでしょう。今でもこのように大きな差があるのに、北海道新幹線の札幌開業よりもはるかに先行して2027年にはリニア新幹線が開業し、東京・品川―名古屋間は1時間に満たない距離となります。

新幹線の建設に関する動きでも北海道は大きく遅れています。北陸新幹線は石川県金沢駅とその先の白山車両基地までが平成27年に開業しており、現在は、その先の福井県敦賀に向けて工事が進められています。そして、現在、関西の話題は、さらにその先の計画区間である敦賀と新大阪間のルート選定で、平成29年には小浜を経由する西側ルートで京都・新大阪まで連絡するルートが発表されています。北海道新幹線では2030年の札幌開業に向け、トンネル工事も始まっていますが、関西・北陸で行われている議論を北海道に置き換えると、建設中の新函館―札幌間ではなく、その先の計画区間である札幌―旭川、札幌―新千歳間についての議論が具体的になされていることになります。

平成28年度の冬は、新千歳空港にとって大きな課題を浮き彫りにしました。その年の12月、札幌は50年ぶりという大雪に見舞われ、新千歳空港で1万人とも1万5000人ともいわれる旅行者が2晩も3晩も空港で缶詰め状態を強いられたのです。この雪害は北海道における冬期間のリスクを如実に示しています。冬の北海道は予定が立たないと思われ、来道を敬遠するという事態になりかねません。冬の北海道でビジネスの予定を入れると、スケジュールに相当のゆとりを持たせなければなりません。これが福岡であれば、仮に天候が悪く飛行機が飛ばなくても、博多から新幹線に乗ることで遅延の影響を最小限にできるのです。

一方、北海道では札幌から先の議論はほとんどなされていません。道内の他地域の衰退に直結する課題です。札幌で新幹線を止めてしまえば、札幌を除いた地域は衰退し、人口を維持することが困難となるでしょう。人口減少時代を迎えて、道内の各地域が繁栄していくためには、広大な道内を円滑かつ迅速に移動できる手段を早期に確保しなければなりません。

では、札幌より先へ北海道新幹線をどのように延ばしていけば良いのでしょうか。

私は、北海道新幹線を札幌で終わらせず、新千歳空港と結ぶべきと考えます。札幌から新千歳空港までは30㎞余りです。リニア新幹線の実験線の候補地にもなった区間で、新幹線を整備するには効果の高い場所と考えるからです。現在、札幌―新千歳間はJR北海道の快速で40分弱ですが、他の国内空港と比較すると、決して都市の中心から近い空港であるとはいえません。もし新幹線が整備されれば、10分足らずで札幌都心部に到達できるのです。

これからの北海道がグローバルハブを目指すならば、交通ネットワークの中心は札幌ではなく新千歳空港となります。新幹線が新千歳空港と直結することによって、北海道のみならず東北地方、場合によっては北関東地方からの海外渡航者も期待することができます。例えば盛岡以北の住民が成田空港を利用しようと思えば、列車を乗り継いで3時間以上かかりますが、新幹線が新千歳と直結すると明らかに新千歳を利用する方が早く飛び立てるようになります。

札幌で開かれる国際学会に出席するため、米国カリフォルニア州から9時間かけて新千歳空港に降り立った参加者が新千歳空港から新幹線に乗り換え、20分から30分でニセコのリゾートホテルに着くといったことが可能になるのです。

わが国には、新幹線と直結している空港はまだ存在していません。フードバレーを展開するオランダでは、オランダ・ベルギー・ドイツ・フランスが共同で運用する最高時速300㎞を誇る高速鉄道タリス(Thalys)が空港と直結しています。首都アムステルダムから出発したタリスの次の停車駅は、ヨーロッパのハブ空港であるスキポール空港です。そしてスキポール空港を出たタリスは、これまたヨーロッパ最大のコンテナ港であるロッテルダムに止まり、ドイツへと向かいます。陸海空で世界とつながったネットワークが互いに連結し合っていることが、オランダをヨーロッパ最大のネットワークハブにしているのです。

現実的な問題として、現在のJR千歳線では、増え続ける新千歳空港の利用客を捌ききれなくなる可能性も高まっています。4列シートの快速エアポート721系の1車両の座席数は300席程度です。もちろん、立って乗ることもできますが、座席に座った乗客を運ぶことができるのは、1時間に1200人程度です。1日12時間往復するとしても2万8000人程度にしかなりません。一年間に換算すると約1000万人です。新千歳空港の年間利用客数は現在約1800万人ですが、年々伸びてきており、JR千歳線は既に乗車率が相当高くなっています。現在はコロナ禍において、利用は少ないですが、かつて、北海道は500万人のインバウンドを目標として掲げていましたが、来道者の8割が新千歳空港を利用している現状を考えると、こうした需要に対応できるとは考えられません。

1㎞建設するのに約50億円といわれる北海道新幹線を新千歳まで40㎞延伸すると追加投資はどうなるでしょう。単純に計算すると追加的な投資は約2000億円です。北海道新幹線の総工費は約1兆5000億円といわれていますが、これに約13%上積みするだけで、北海道新幹線への投資効果を格段に向上させることができるのです。札幌と新千歳空港の所要時間が現在の40分から10分程度に短縮されるという時間短縮の効果以上に、道都札幌が世界と直接「つながる」ということに意味があるのです。関西では、北陸新幹線の敦賀―大阪間のルート検討で関西空港まで直結させる案が浮上しています。新幹線の基本計画にも載っていない関西空港ルートが議論されるのであれば、以前から「南回りルート」として基本計画に位置付けられている新千歳空港ルートは十分検討に値するはずです。

「北海道新幹線は新千歳空港と直結を!」私はこれを実現したいと思っています。