見出し画像

Ep:4 「打てば響く」の精神~刑事の誓

平成6年に北海道拓殖銀行の札幌本店に戻り、営業部で勤務をしていましたが、自宅を札幌に建てたこともあり、少し腰を落ち着かせたいと考えました。そのような折、北海道警察で専門官の幹部警察官を採用するというニュースが目に留まりました。ちょうど80年代後半くらいから、犯罪が悪質化、巧妙化、多様化し、外国人犯罪や暴力団による金融犯罪などが増加の一途を辿っていました。こうした犯罪情勢に対処するため、全国の大きな都道府県警察で、専門的知識を持った国際捜査官や、財務捜査官、心理専門官等を採用し始めたのです。北海道警察も警察官の数が1万人を超える全国で9番目に大きな警察であり、専門官の採用に踏み切ったのです。

95年1月、私は北海道警察における国際捜査官第1号として採用されました。それまで、警察署はおろか交番にさえ足を踏み入れたことはありませんが、性に合ったのか、警察という組織に違和感なく溶け込めました。

画像1札幌方面警察署の刑事課長席に座る筆者

警察官になったからにはまずは捜査というものを習得しなければなりません。3カ月ほど道警の警察学校で捜査の基礎を学んだのち、札幌市内の警察署に配置されました。そこの刑事一課に、織田裕二主演の「踊る大捜査線」という映画を観られた方も多いと思いますが、映画の中で今は亡きいかりや長介氏が演じていた老刑事の和久さんに雰囲気がソックリの刑事がいて、その刑事とコンビを組んで捜査に出かけることが多かったのです。警察署の刑事一課とは、主に殺人や強盗、窃盗等を捜査している部署です。その和久さ
んにソックリの刑事から教わったのが、北海道警察「刑事の誓」です。

一 社会正義のために。これが我々の使命である。
一 打てば響く。これが我々の感覚である。
一 腰軽く粘り強い。これが我々の根性である。
一 心と心の触れ合い。これが我々の誠意である。
一 物からものを聞く。これが我々の科学である。
一 どんな役にも誇りを。これが我々の組織である。

以上、6つの誓からなりますが、私はこの誓の文言が好きで今でもそらんじて言えるほどです。警察だけではなく、どこの組織にでも通用する標語であると思いますが、私は特に「打てば響く。これが我々の感覚である」という言葉が好きで大切にしています。取り調べでも、ある供述を得てそこに何かを嗅ぎ取ってさらに掘り下げて真実に到達できる人と、その供述をただ右の耳から左の耳に聞き流してしまう人とでは大きな違いがあります。まさに「一を聞いて十を知る」という感覚が大事なのです。また、鐘を打てば音が鳴るというのは、鐘やしゅもくに構造上の欠陥がない限り、当たり前の現象です。直ちに反応するという点でも非常に大事な姿勢といえるでしょう。地域の方々や国民のさまざまな想いを受けて活動している政治家にとっても、この感覚を磨くことは大切であり、身に付けなければならない感覚といえるのではないでしょうか。

その後、来日外国人犯罪捜査やハイテク犯罪捜査、風俗事件捜査などの各部署で仕事をし、札幌方面管内警察署の刑事課長も務めました。とにかく立件に至る事件捜査はやりがいがありました。当時を振り返ると、犯罪被害者に寄り添い、正義感に燃えた若い刑事であったと思います。

現在は警察OB会である警友会地元支部の相談役を務めさせていただいていますが、警察官時代に上司、部下、同僚を含めて出会った人々とは今でも交流があり、私にとって大きな財産です。