からメシ 第121話 模試とチキンカツと減数分裂

11月の初日。
頬を横切る風が、涼しく、というかちょっと冷たく感じられる放課後。

「西片。ちょっと神社寄らない?」

神社の軒下に腰掛けて2人で話す。

「西片、模試ってしってる?」

「もし?」

「模擬試験のことだよ。……西片大学目指すって言うしさ。その大学に、今の状態でどれくらいの確率で入れるかどうかを見る試験かな」

「へー。世の中にはそんなものがあるんだ」

「うん。でね、一緒に受けてみない?」

「……でも、お高いんじゃないの?それに島の外まで遠出して受けに行くんじゃないの?」

「今回の模試は自宅で無料で受けられるやつだよ。便利な世の中だよね。ただ高一、高二対象で受けられるの今年までだし、主要3教科だけなんだけどね。」

「そうなの?凄いね。」

「うん、普通は神樹館とか讃州大みたいな学校施設や大きなイベントホール、各予備校が会場で有料でやるんだけどさ
今は自宅で受験できる模試も増えたみたいなんだ。でも無料のは珍しいみたい。」
「最初だし無料で自宅でできるのの方がいいかなって思ってさ」

「うんやってみよう。一緒に。」

「ちなみに申込受付明日までだから。今日一緒に登録しよ?」

てなわけで俺の部屋で登録するわけだが。

「西片の家で試験する?私の家にする?」

「うーん。どっちでもいいかな。」

「私も一緒に受けられればどっちでもいいかな。あ、ただそれぞれの自宅ってのは無しね」

「じゃあ俺の家にする?」
高木さんの部屋より自宅のが緊張しないかな。…好きな女の子の部屋だと、色々…いい匂いがするとか、高木さんがいつも寝てるベッドが…とか気が散っちゃうかもしれないし

「じゃあ西片の家に私のテストも届くようにしようよ」

と、俺の住所で高木さんの名前も登録した

「なんか、一緒の住所で登録するとさ。一緒に住んでるみたいで…うれしいや」

なるほど、俺のとこに届くようにしたのはそのためか

---
というわけで日曜日、受験日の早朝

高木さんが俺の部屋に来た。

俺は机、高木さんは下から持ってきたちゃぶ台で試験を解く。
せっかくだから机使いなよ。と言ったら、西片にはいつも通りの環境で試験受けてもらいたいから。とのこと。やさしいな。お言葉に甘えて机を使わせてもらう

「とりあえず開始時間は9時を予定してます。開始時間はまあ何時でもいいんだけど、試験を解く回答時間は厳守ね。国語は90分とか、英語のリーディングは80分とか。アラーム設定するからね。これは守らないと意味ないから。」

「うん。」

「数学はうちのクラスだとまだ数II、数BCの範囲あまりやってないし、倉敷大だと教育学部は数I・数Aまででもいい場合もあるそうだから数IIBCの選択無しで数学は100点満点の方にしよっか」

「そうだね。得意とは言えない教科だし」

「ほかは得意みたいな言い方だね。」

「全部苦手だよ!」

「あ、でも西片保健の実技は得意だよね。初めての時…気持ちよかったよ///」

「言わないで///恥ずかしいから///」

「あと、試験中にスマホももちろんダメ。あと試験中に脇腹つついたりうなじをペロッとしたりするのも無し。
それから、試験中に終わったら思う存分えっちしよっか?とか言って西片を誘惑したり、ブラチラ、パンチラ、服脱ぎで西片を誘惑したりするのも無しだからね。というか試験中私語厳禁」

「自分に言い聞かせてない!?それ!!」

「あはははは。バレちゃったか」

そういうと高木さんは俺の首筋をぺろっとして

「終わったら思う存分えっちしようね」

「今言っちゃだめって言ったろそれ自分で!///」

「まだ試験前だもん♥。あれ、西片、膨らんでるね。試験に集中出来ないんじゃない?これ」
「いいよ?試験10時からにして…先に…しちゃう?交接」

「こうせつ?」

「こういう字だよ」

「…それって…せっ…が、学術的に言ってもだめだから!それに本番の試験では時間は待っちゃくれないんだからさ!」

「あはははは。そうだねー。じゃあ西片、自分でなんとか沈めてね。それ」

高木さんめ~!
試験中私語厳禁を逆手に取り、試験前に誘惑して俺の心を乱す作戦だな!

「大体さっき西片にはいつも通りの環境で試験受けてもらいたいって言ったばかりなのに、いきなりからかって心を乱すとか」

「西片が私にからかわれるのこそいつも通りの環境じゃん。」

「そうだけどさ!」

開始のアラームがなる

「ほら、西片。試験始まるから喋っちゃダメ。私だって西片と喋りながらしたいけど我慢するからさ」

国語
わからん!

英語リーディング
わからん!

ここで休憩を挟む。通常は50分だがたっぷり2時間。なんでもやりたいことがあるとか。

えっちなことではあるまいな

すると高木さんはキッチンへ向かう
なにやら揚げ物のいい匂いが

「はい、西片。チキンカツお待ち」

「ありがとう。いただきます。美味しい!肉がジューシーで。揚げ方も…流石だよ高木さん。」

「西片。カツには勝つ、って意味が込められてるんだよ。」

「そんなことまで気にしてくれて…ありがとう。高木さん。」

「どういたしまして」

高木さんのこういうやさしさが…
大好きな所の一つだ。

英語リスニング
リスニング
わからん!

数学IA
よく分からん!

てなわけで全行程が終わる。
結果は水曜日に届くらしい

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水曜日。結果閲覧出来る日

俺の結果から見てみる

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西片
英語
55点/200点満点 偏差値36.3

数学(1Aのみ)
39点/100点満点 偏差値39.9

国語
66/200点満点 偏差値38.1

総合
160/500点満点 偏差値35.0

国立 倉敷大学 教育学部 中学校教育コース (偏差値56) 判定F 合格可能性0%

~~~

高木
英語
150点/200点満点 偏差値61.4

数学(1Aのみ)
83点/100点満点 偏差値61.7

国語
150/200点満点 偏差値65.1

総合
383/500点満点 偏差値63.1

国立 倉敷大学 教育学部 中学校教育コース (偏差値56) 判定A 合格可能性95%以上

~~~

「高木さん凄くない!?これ。すでにほぼ合格できるくらいなの!?」

「……」

「高木さん?」

「……ま…まあそういう事なのかな。…一応。でも目安だから。」

「……俺……全然ダメだった……やっぱ勉強自体向いてないのかな。これじゃ特進に進むのすら無理だよね。就職にした方がいいのかな」

「……西片がそう思うなら、私は構わないよ?就職でも。だけど、西片。私も同じとこで働くから、志望先は教えてね。」

そっか
俺が働くとしたらまあ夏休みにお世話になった棟梁のとこが一番有力だろうけど
俺は確かに高木さんの為にって一心で、踏ん張ってたからそこまで苦になって無いかもしれないけど
高木さんが、炎天下で……重い資材を運んだり……高いとことか危ない場所もあったり。危ない器具とかもあったり……

だめだ、高木さんにそんなこと。俺ならいいけど。

太田さんの所は……繁忙期に手が欲しいだけでフルタイムで客が少ない平日にはなかなか入れないし、最低時給しか出せないって最初から言われてしまっている。
それだと家計的には厳しいかもしれない。それも食糧難レベルで。高木さんは俺と一緒なら、食べられる野草とか炒めて食べたら平気だよ~とかいって気にしないだろうけど
俺が気にする。

ここは本気出して頑張ろう。
高木さんのためにも。

「高木さん。俺全然ダメだったけど、頑張ってこの大学目指そうかな。ごめん。高木さんには教えるので負担かけちゃうかもしれないけど」

「西片、負担だなんて思ったことないよ。むしろ、西片にみっちり教えてあげられるのが嬉しいくらいだよ。それとね、西片」

高木さんが俺を抱きしめる。
「西片は、ダメじゃない。ダメじゃないよ。……私は西片のいい所、山ほど知ってるよ」

「高木さん…」
ちょっと…いや、結構泣いてしまった。
高木さんはからかわなかった。
抱きしめながらやさしく、俺の頭を撫でてくれていた

---
高木さんを家まで送る

「じゃあね、西片。また明日」

「うん。また明日。」

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偏差値63か…
合格可能性は95%以上ってあったけど

特待生にはもっと必要だよね…

ネットで調べたら特待生には一概に言えないけど、最低でも+10の偏差値は求められるらしい。
私も頑張らないとだなあ。

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そんなこんなで、俺と高木さんは学校帰り、出かけない日の休日は俺の部屋で毎日勉強をするってことにした。
出かける日も(バイクとかじゃなければ)移動中とか教科書や参考書を持って勉強することに

早速今日から、方針を決めていく
「ただ、詰め込むのはストレスになって逆効果だから楽しく、面白く効果的に2人で勉強しよう」
「そして遊ぶ時は遊ぶ。これが大事だよ。…ヤる時はヤるのもね」

「ヤるとか言わないで!///」

「じゃあ…せ…セックスするときはセックスするって事で」

「悪化してるよ!///」

「あははははは」

相変わらずからかってくるけどね。

「早速なんだけど高木さん。この減数分裂ってなに?」

「えっとね、生殖細胞は染色体数が分裂前の半分になるの。その事だよ。」

「え、なんで半分になるの?」

すると高木さんは、顔を赤くしながら、自身のあの部分を指さして
「これはね、例えば西片が私の…ここ…ち、膣に精子を直接出した時にさ…///」

「ち、ちょっ、か、関係ないえっちな話はなしだよ!」

「関係あるよ。私の子宮の中で西片の精子と私の卵子が合体して受精、つまり赤ちゃんの元の受精卵ができるわけでしょ?」

「…///」

「その時、私の卵子と西片の精子の染色体の数が体細胞と一緒だと、私と…西片の愛の結晶の…染色体数はどうなる?私の卵子と西片の精子の何倍?」

「言い方!///……えっと…2倍」

「ピンポーン。もし、生殖細胞の染色体数が体細胞と同じだとこうやって私たちの子が、好きな人と赤ちゃん設けたら4倍、孫で8倍、って凄いことになっちゃうんだよ。」
「動物は元々2倍体、2倍体ってのは普通の体細胞と同じなんだけど、つまり染色体が2組セットで細胞が働くようにできてるから、
そもそも4倍体、4組セットだと上手く働かずに生きられなかったりするの。」
「……ここまでわかる?」

「うん…なんとか」

「だから子供を作る時染色体数が倍になって、細胞がうまく機能せずに、赤ちゃんが産まれなくならないように。私と西片の赤ちゃんが元気に産まれてくるように
西片の精子と私の卵子は減数分裂して染色体数を体細胞の半分に減らしてさ、で、西片が私の…な…中に精子出して、私の卵子と西片の精子が受精した時に、
半分の数の私の染色体と、半分の数の西片の染色体を両方合わせて、普通の体細胞の数の受精卵。つまり西片と私の赤ちゃんができる。ってこと♥」

「い、意味は何とかわかったけど俺と高木さんに例える必要なくない!?///しかもそういう行為の話に…///」

「自分たちに例えた方がわかりやすいでしょ?あとは実践だよ。西片。」

「へ?」

高木さんがベッドに寝っ転がる

「ほら、減数分裂で減った染色体数が受精で元に戻るの、感じたいなあ。///」

「や、やりませんから!///勉強するよ!」

「ベッドで勉強しようって話なのに~」

これで成績が上がるかはまだ分からないけど
高木さんと毎日勉強する時間は、勉強なのに楽しく思えた。

第121話 完

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