からメシ 第161話 高木-takagi- 出陣

高木さん「ツモ。」

ツモ六
一一二四二四二四七八/西■■西

高木さん「えっと、三暗刻混一色役牌ドラ4で10飜?だから」

高橋「ちょ、ちょーっとまった。あ、ツモ入れて11飜っすわ。…え、なんでこの手牌で最初に三切ってるの??今4巡目なんだから多分配牌から順子にはなってたよね?」

高木さん「なんでって言われても…あ、6000・12000です。」

戒能「というか並べ方独特だね~~二四二四二四、にしにしにしって。こだわり?」

高木さん「うん。」

戒能(ん?にし?…)

~~
アナウンサー「小豆島総合の高木選手、いきなり三倍満だ~!…ビギナーズラックってやつですかね。それにしてもかなり素人みたいですね。いきなりあの配牌で順子崩して三切りって。

神之浦「初心者なのは間違いないが、あの三切りは初心者だからじゃなく、明確な意図があっぞ。」

アナウンサー「?なんででしょうか」

神之浦「麻雀最初に教えてもらった時、どういうゲームだって教わった?」

アナウンサー「えーと、数字の順番、例えば456とか同じ数字、例えば333とかを3つ並べたのを4セット、あと雀頭として同じ牌を2つ」

神之浦「それだよ。高木ちゃんはこれでも20日程は麻雀やってんだ。一番最初の5分の「どんなゲームか」の説明で説明されることが出来てないのはいくら何でもおかしい」

アナウンサー「でも三捨てる意味は…」

神之浦「初めから二が重なることが分かってたらどうする?そして三がある限り和了れないか、もっと重大な損失があることがわかってたら、どうする?」

アナウンサー「そんなオカルトみたいな事…それに点数計算間違ってましたよ?最初」

神之浦「あれも違和感ある。なんで最初のツモ和了り入れ忘れて、子の三倍満の点数、6000・12000はすぐ出るんだ?」

アナウンサー「そうですけど…」

神之浦「まあ西家の件は素っぽかったけどな。場決めで西引けてはしゃいじゃったんだろう。」

アナウンサー「なんで西引くとはしゃぐんです?」

神之浦「知らん!よっぽど西に思い入れがあるんじゃね?」

神之浦「ほら、そうこういってる間にまた高木ちゃん③切ってるぞ。4巡目で③④と揃ってたのに浮いてる發スルーしての切りだ。それに…次で…ほら、また西か4つ重なった。」

~~

東2局中盤
ドラ東

高木さん「カン」 西■■西
カンドラ南

戒能(また私の能力が高木さんにだけ効いてない。やっぱ自分に対する力の無効化が高木さんの能力?……でもまた西の暗槓?それより前に4巡目③切り?)

高木さん「チー!」 5鳴き 567

高橋(③を早い順目で切ってる。張ってるのか
、初心者だからなのか)

そして

高木さん「ツモ!」


二④二④二④ 八/ 567 西■■西

高木さん「えっと、三暗刻のみなので2飜で符は…」

指折り数える。

戒能「70符2飜だね~~。」

高木さん「ありがとう。えっと1200・2300!」

行長(高木さんの打ち方、捨牌、和了明らかにおかしい。やっぱなにかある、これ。)

高橋(やっぱ初心者だからの打ち方?いや、でも2連続西の暗槓は……)

戒能(またこの並べ方。なるほどね~~。あと今回は12巡目で和了り。いつも早いわけではないみたいだね~~。)

~~~

六車「今の所作戦効いてるみたいやな」

すみれ「作戦て?」

六車「初心者アピールや。最初だけ飜数間違えて申告しろって言っといたんや。符計算は高木ちゃんはまだ多少時間かかるし、それ含めてかなり素人なのをアピールできる
油断をさせるだけでなく不自然な3の牌の切りを初心者だからって先入観を持たせるんや。もちろんいずれ能力がバレるがバレるのが1局遅いだけでも高木ちゃんなら5000点ぐらい稼げるからな」

~~~

東三局
高木さんの親
ドラ⑥

高木さん「カン!」

西■■西

カンドラ三

戒能「高木さん。高木さんのすごい仲良い彼氏ってなんていったっけ。たしか…」

高木さん「西片です。」

戒能(なるほど~~。だから、にし、ね。これは確定だね~~。多分私の力が効かないのは、この西、またはにしがセットで集まる能力が絶対的だからかな。ということは。弱点が見えて来たね~~。)

高木さん 三切り

戒能「そのドラの三ポン!」

發捨て

高木さん3切り

戒能「その3チーするね~~。」123

1捨て

~~

ナレーター「おーっと戒能選手!不可解なチーだ!これ、役なしですよねこのままだと。」

神之浦「両方3の牌で鳴いてる。まあドラ抱えてるけど、和了るんじゃなくて別の目的だろうよ。この局で他家に示せれば次の局から優位に進められるんだろうな。」

ナレーター「えっ?」

~~

六車「まずい。高木さんの能力、もう戒能にバレたわ。…できれば前半戦、少なくとも南入まで持たせたかったんやけど」

すみれ「2回目の鳴きが不自然だしね。あえて鳴く牌を明言してるし三がドラなのも強調。この局は和了り捨てて、高木さんの弱点を暗に示してるのかな?」

六車「ああ、そうこうしてるうちに戒能も聴牌か。中のみだけど…さすが全国手強いな」

すみれ「でもさすが高木ちゃんだよ。他家に一度も西も2の牌と4の牌のセットも渡ってないよ」

六車「戒能優子が居るのにな」

~~
戒能(ラッキー、中ツモるかロンしたらドラ5乗って跳満~~。)

そして…

高橋 中切り

高木さん・戒能「「ロン!」」

高木さん
2四2四2四 中/789 西■■西

戒能優子
③③赤⑤⑥⑦中中/123 三三三

高橋「あ、頭ハネっ!?」

高木さん「こ、こういう場合どうなるんだっけ?」

戒能「この大会のルールだと頭ハネっていってツモ番が先に来る方のロンが優先されるルールだね~~
高橋さんが北家だから、ツモ番的に早いのは南家の私より東家の高木さんだから、高木さんのロンが優先かな~~」

高木さん「ありがとうございます。えーと2飜で……70符?だから6800?」

高橋「あああ振り込んでしまったー。はい。」

戒能「いえいえ。高木さんの1本場だよ~~」

ナレーター「なんということでしょう!初出場、部員ギリギリの無名校小豆島総合が135500点で2位に45000点近くの差をつけトップだー!高木選手、大きく稼いでおります!」

神之浦「隠れたとこにもこんなすごい逸材がいるもんなんだな」

戒能(……これで…次の局私の配牌には……)

東3局1本場
ドラ③

戒能優子 配牌
③③⑥⑦三三四八八19發中 ツモ六
中切り

高木さん 三捨て

戒能「ポン!」 三三三
發切り

高木さん⑤捨て

戒能「チー!」 ⑤⑥⑦
9切り

高木さん五捨て

戒能「チー!」四五六
1切り

そして…
高木さん③捨て

戒能「ロン!タンヤオドラ3!40符4飜で7700!」


③③⑧⑧/三三三 ⑤⑥⑦ 四五六

高木さん「はい。」

~~
ナレーター「おおーっとここで初めて小豆島総合の高木選手以外の和了りだー!大生院の戒能選手が高木選手を直撃ー!」

神之浦「まあもう流石に高木ちゃんの弱点にも全員気づくわな。全国なんだからよ。まあ気づいても有効利用できるのこのメンツだと戒能位かもしれんが」

~~
六車「もう全員に弱点気づかれたか。」

すみれ「というと?」

六車「戒能の手牌、配牌時から対子で③と三があったやろ?戒能は他家が欲しい牌を2つずつ抱え込めるから…」

すみれ「つまり、高木ちゃんから3の牌がすぐに出るのを他家全員が知ったから、みんな3の牌を欲しがったってことか」

六車「そうや。やけん、それだけやなくて、戒能には牌種問わず3、1、5の順で出やすいのも把握されとる。やから5の牌をやたらチーしとったんや」

すみれ「2と4の牌を刻子で集めないといけない。2と4の牌の間に数を挟めない制約があるから3の牌は真っ先に捨てられ、
1の牌は刻子か雀頭のみ。使い道が限られるから非常に切られやすいし5の牌も高木ちゃんからしたら普通の人の1・9牌と同じ使いにくさ、だからよく切られるということだよね」

六車「それ全部踏まえて、能力も狙い撃つために使って狙い撃ちされたんや。今のは。……ただ、高木ちゃんは、特定牌が集まる性質上、早くて火力が高いからな。種がわかったところで毎回狙い撃ちや阻止なんてできひん」

~~

東4局 中盤

ドラ⑦
カンドラ一

高木さん

②4②4②4 八/七七七 西■■西
高木さん「ツモ。えっと対々和、三暗刻。70符4飜だから、満貫かな?2000・4000。」

高橋「お、親っかぶり…」

戒能(鳴いて聴牌までしたけど間に合わなかったね~~)

高橋(やべえっすわ。この卓。小豆島の子も素人かとおもったらとんでもない強さだし)

~~
ナレーター「前半戦南入~!なんと小豆島総合が135200点でトップ!高木選手大活躍です!続いて大生院女子が100000点丁度!3位が千里山女子で83800点!最下位尼ヶ坂女子が81000点です!
まさかの初出場の高校が、全国屈指の強豪校を圧倒する展開です!」

神之浦「いやー、この高木ちゃんって子いいわ」

~~

南1局
高木さん 西家
ドラ西

高木さん「カン!」西■■西
カンドラ八

行長(また高木さんが西家の時、ドラが西だ…)

高橋(よし、4巡目で聴牌!リーチかけて跳満の手、畳み掛けるっすわ)

高橋「リーチ!」
捨て白

高木さん「ポン!」白白白

そして5巡目

高木さん「ツモ!対々和三暗刻役牌×2混一色ドラ4で…12飜だから三倍満で6000・12000」

9
2424249/白白白 西■■西

行長(にしが集まるだけじゃなく西家だと強いのね...)

~~
ナレーター「高木選手、圧倒的だー!まだ前半戦も半ばで160200点!2位の大生院女子に65000点以上の差をつけているー!」

神之浦「この火力は脅威だよな。ただそろそろ周りも動き出すだろうな」

~~

南二局
ドラ1

高木さん配牌
12234 二四九②④ 南西西 ツモ西

六車「まずい。2の牌4の牌が配牌全種類ある。高木ちゃんとしては和了りにくいやつだ」

すみれ「そして親の戒能さんの配牌が…」
戒能配牌
1133三三七九③③赤⑤⑦⑨北(親の第1打で北捨てしている)

六車「三色やられるのが厄介やな…3の牌は高木ちゃん以外からも出るやろうし…厄介なのは高木ちゃんの手牌と被ってる。つまり直撃される危険性が極めて高いんや。1も鳴かれそうやし。」

すみれ「他家から3の牌ってなんで?高木ちゃんの弱点じゃないの?」

六車「3の牌は高木ちゃんの弱点やから対子や刻子ではみんな欲しい牌や。せやから、戒能が高確率で配牌から2つずつ抱えてまう。
単騎で3の牌持っとっても2と4の牌はかなりの数高木ちゃんに持ってかれ、3の牌はかなりの数戒能に持ってかれると…
一気にいらん牌になるんや。まあ、中盤以降は戒能の当たり牌候補筆頭になるから切るに切れない牌になるんやけどな」

~~
高木さん3捨て

戒能「ポン!」333
九捨て

高橋③捨て
戒能「ポン」③③③
⑨捨て

行長(すでにもう三は切りづらいわね…③か3どちらかが自然に対子になったものならこの時点で三は危険牌だし)


しばらくして

高木さん「カン!」西■■西 カンドラ八
高木さん1捨て
戒能「ポン」111
七捨て

そして数巡後

戒能手牌
三三⑤赤⑤/111③③③333

高木さん手牌
二四二四242④②④ /西■■西

~~

ナレーター「おーっと戒能選手親倍テンパイだー!」

神之浦「高木ちゃんの手がある意味えげつねえな。どれだけにしが好きなんだよー。」

ナレーター「おおっと高木選手、戒能選手の当たり牌三をツモってしまったー!」

神之浦「あちゃー。万事休すだな。」

ナレーター「とはいえ普通、三切りませんから大丈夫ですね。」

神之浦「いや、多分切る…ってか切ったぞ」

ナレーター「えええええ!なんででしょうこれは!?」

~~

高木さん 三切り

戒能「ロン!三色同順対々和ドラ4で24000!」

ドラ1


三三⑤赤⑤/111③③③333

高木さん「はい。」


ナレーター「高木選手、ここに来て不可解な放銃!親倍を振込みましたー!リーチしていた高橋選手のリー棒も含め戒能選手25000点獲得!小豆島総合136200点、大生院女子119000点。一気に17000点差ほどに詰め寄りました戒能選手!しかも親継続です!…でもどうして三なんか切ったんでしょう?」

神之浦「にしを崩したくなかったんだろうよ。和了るよりも譲れないものがあるんだろうな」

ナレーター「??な、何言ってるんです?」

~~

すみれ「大生院の戒能さんもやばいよね…私やうちの部員が高木さん相手に打った時は、高木さんの力を把握したあとは和了ること自体は多少できるようになったけど
誰一人プラス収支にはできなかったのに。あの人今普通にプラス収支だよ?」

六車「この中で高木ちゃんの能力を一番対策しやすい能力やし、他家の欲しい牌を抱え込める時点であっちも打点も速さもあるからな~。高木ちゃんはこういう和了りに繋げられない局や振り込むしかない局もあるのがかなりの弱点やね。」

~~

戒能(決まった!弱点をついた親倍。…弱点をつこうとしても、高木さんは速さがあるからその前に和了られることもある。他家もいるし、ましてや三色なんて決まらないことも多いけど、でも。私なら、決まればでかい)

戒能(南2局1本場!連荘して終わらせる!)

ドラ北

高橋「チー!」
/678 一一一 東東東

戒能(高橋が三副露。おそらく聴牌だけどあんまり高い手には見えないね~~。なら)

戒能「リーチ!」

高橋「ツモ!2100・4100」


北北赤⑤⑥/678 一一一 東東東

高橋「なんとか前半戦焼き鳥回避っすわ」


南三局

ドラ3

行長(高木さん。早いし打点も高いけど、ちひの相手してる時と違って、全然和了れないことはない。今回は行けそうな気がする。なら...。)

高橋「リーチ!」

行長(高橋さんもリーチ。今のツモで聴牌したけどどうするか。…リーチかけたら高くなりそうな気がする)

行長「リーチ!」

高木さん「カン!」西■■西
カンドラ南

行長(高木さんがいるからリーチすると裏含めドラ4種類になるのよね)

そして

行長「ツモ!」

カンドラ・カンウラ 1・9

赤⑤
⑤ 五六七456999⑦⑧⑨

行長「リーチツモドラ4で3000・6000!」

~~

ナレーター「行長選手の跳満ツモ決まったあああ!ついに前半戦オーラスです!トップは小豆島総合の高木選手、128100点。2位は大生院女子の戒能選手、110900点。3位は千里山女子の行長選手82700点。最下位は尼ヶ坂女子の高橋選手となります!
初出場の無名校が強豪校を圧倒する展開!しかも高木選手は麻雀歴20日程度と言うから驚きです」

神之浦「たまにこういうやついるんだよな。まあ今年は多すぎだけど。1日目大きく稼いで二回戦進出した沢良のサラも長点上機の鈴科も麻雀歴4ヶ月位らしいし」

~~
ドラ①
行長(この局、また和了れそうな気がする。)

行長手牌
①①①789⑦⑧一一七八九

行長「リーチ!」

高木さん(あんまり点差作れてないや...)

高木さん「チー!」789

高木さん手牌
二④二④⑨⑨六六西西西/789

高木さん(……何を捨てるか…河に⑨2つ出てるけどこっちのが和了れそうな気がする)
六捨て

ツモ西
高木さん「カン!」西■■西
カンドラ⑨

高木さん(聴牌した)
二④二④④六⑨⑨/789 西■■西

六捨て

高木さん(西片、頑張るからね。)

~~
ナレーター「なんということでしょう!高木選手!河に⑨は序盤で2つ出ているので和了できない⑨を手牌にのこしたー!あえて片牌シャボ待ちを選んだー!」

神之浦「結果的に行長に三倍満…裏乗れば数え役満の手振り込むの回避したけどな。直感が鋭いのか、二引く自信があるのか…片牌シャボだとなにか都合がいいのか……」

~~
すみれ「行長さんのがどう見ても早そうだよね」

六車「…いや……西をカンして、片牌シャボ……高木ちゃん、片和了とか片牌シャボって多分知らないよな?もしかして……無意識に……」

すみれ「??」

~~
そして次順

高木さん「ツモ!」


④二④二④⑨⑨/789西■■西

高木さん「三暗刻ドラ2で2000・4000と供託です。」

行長(わ、私の和了れる直感が外れた!?)

~~
ナレーター「前半戦終了ー!高木選手!片牌シャボ待ちを和了ったー!なんと小豆島総合の高木選手が137100点!前半戦だけで37000点も稼ぎトップだー!麻雀初めて20日程の高木選手、快挙だー!」
ナレーター「続いて2位108900点、大生院女子の戒能選手が追います。3位は千里山女子行長選手79700点。4位は尼ヶ坂女子高橋選手74300点です!」

神之浦「やっぱおもしれえわ高木ちゃん。」

~~

終盤の方は俺は控え室じゃなく、スマホで高木さんの対局を見ながら対局室のドアの前にいた。
まだ後半戦もあるけど、一番に高木さんを迎えてあげたかったから。

そして対局室のドアが開いた。

第161話 カン

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