からメシ 第25話 二人で旅行


「そういえば、西片、さっきの全国優勝の学校の近くに旅館あったよね」

「え?そうなの?」

「結構ちゃんと景色見てたからね。西片の背中の温かさとか匂いと、きれいな景色、両方心に刻み付けてたからね」

「えっ…そんな俺の背中臭いの?」

「んーん?違うよ。西片の匂い。私の一番好きな匂い。」
(今日…夜…この匂いに包まれるんだな…私…)

「は、恥ずかしいよ…///高木さん」

というわけで旅館についた。稲村旅館とかいう、古いながらも結構綺麗な旅館だ。

まずは旅館に交渉。事情を話す。実は相当な老舗人気旅館らしく、ギリギリ、一応1部屋空きはあるそうだ。俺と高木さん、お互いに家族に連絡し、
旅館の人に電話も変わり話してもらう。無事1部屋取れることになった。

しかも素泊まりのつもりだったが

「夕飯付きの当日キャンセルがついさっき出てしまい困ってたんですよ。勿体ないなって。1名様だったのでおふたりだと少し少ないですが…
もしそれで宜しければ食事の方もいかがですか?食事の方、お代頂きませんので」

と。悪いと思いつつも。無駄になってしまうとの事だったんで。お言葉に甘え付けさせてもらった。
また、こっちに来る事があったら今度はここを予約して利用させてもらおう。そう思った。

…とはいえ
れ、冷静に考えたらた、た、高木さんと2人きりでお泊まりー///
たしかに前、高木さんが家に泊まりに来た事はあったが、あの時は普通に両親もいたし…

でも今は…

な、なんか恥ずかしいし…いけないことしてる気になってきたぞ…///

チェックインを済ませ…部屋に入る。1人宿泊のキャンセルが出た部屋なので6畳に、窓の外を眺める椅子が2つついたスペース?があり、
ユニットバスとトイレと押し入れ。いよいよ、高木さんと「お泊まり」をするんだなあと実感し
ドキドキで心臓飛び出そうだ。息苦しい。絶対こんなの高木さんにからかわれる
と、ふと高木さんを見ると、なんと、高木さんも顔を真っ赤にしている。ちょっと俯いた感じで。

「高木さん…急に2人きりで泊まるなんて、やっぱあんまり乗り気じゃないの…?」

「そんなこと絶対無いよ…けど……」
これから西片とする事を意識してるだなんて…言えない…

「私も…て、照れてるんだよ……いま、西片がからかえたら…西片に負けちゃうね…///」

「お、お風呂入ってくるね…西片っ///」

「うん……食事18時30分にしちゃってるけど大丈夫?…あと1時間無いけど…///」

「…大丈夫…だけど、……それなら一緒に入る…?」
(よし、なんとか、からかえた!)
高木さんがユニットバスを指さす

高木さん、今日、攻めすぎじゃないか?前も似たようなこと一度だけあったけど…このお泊まりの雰囲気で…これって…!
どうする…今回は一緒にはいっちゃったら多分…そのまま…俺は…高木さんと…いや、でも…落ち着くんだ西片ぁぁぁ!

「た、た、高木さん?せっ、せっかくく、温泉旅館なん、なんだから、さ、大浴場入った方が。いい、よ。ユニットバスなんかじゃ、なく」

「……///そ、そうだね…///それもそっか…あはは…///急いでいってくるね…///」

バタン

お、おかしい
明らかに高木さん、からかいのキレが無い。俺も恥ずかしすぎてからかい返せないが…
今からかわれたら負けちゃうね。なんて初めて聞いたぞ?高木さんの口から
例えるならいつもは凄いキレで内角低めにカーブしてストライク取ってくるからかい魔球が
さっきから四死球連発押し出し祭りって感じのからかい暴投だ。ストライクゾーンにからかいが決まっても打たれて長打になるような甘いからかい

そんなこんな悩んでるうちに…
げ。もうご飯まで30分ない。仕方ないからお風呂はご飯の後にするか…

---
とにかく、全身くまなく綺麗にしなきゃ…良く洗おう。西片に誇れる状態にしとかないと。今日、西片に…その…あ、愛してもらうんだから…///
私が汗臭かったりしたら最悪だ…ムダ毛も…ここの毛は全部剃るべき?いや、そこは自然な方がいいのかな…あんま濃い方でもないし…西片の好みは…そこまでまだ分析できてない……どうしよう…!
美肌の湯。なんだしお湯にもしっかり使って…浸かってか…

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食堂で食事
旅館の浴衣姿の、高木さん
俺はまだ私服…
かわいい…というか綺麗だ…
お風呂上がりの高木さん…ものすごくいい匂いがする…
ついつい見とれてしまう
いかんいかん

食事はけっこう豪華だった
まず、ノドグロ、鯛めし、お刺身盛り合わせ。
こちらは七類という所で取れた魚だそうだ
続いて宍道湖で取れたシジミ汁とシジミ、鰻の炊き込みご飯
大社やきそばと出雲そば

1人分にしては多く、緊張してる(高木さんも?)俺達にはちょうどいい量だったかもしれない。

「…1つのお膳を2人でつっついて食べるなんて…お行儀は悪いのかもしれないけど…でも、そういうの…私達、か、家族みたいで…いいね…///」

「…うん///」

ちょっとからかい交えた本音なのはわかるが
やはりからかいにキレがない。
それにいつも必ずのようにやってくるあーん
もない。さすがに食堂みたいなところなので、やられてもちょっと困るけど…

「ほんとおいしいね」

「うん…おいしいね、高木さん」

「生まれてきてよかったって思う…」

「お。大袈裟じゃない?」

「食事の事じゃないよ?…好きな人と…西片と…今…こうやって…///」
「旅行に行って、楽しいとこ行って、楽しいねーって二人で言って…おいしいものを食べて、おいしいねーって二人で言って…」

中学2年の頃だったか。きいた、宝くじ100万円当たったらどうするって話…その時話してくれた夢

「それが叶って、今すごく幸せだよ。西片」
高木さん。泣いてる…

「高木さん。大丈夫?」

「うん、嬉しくてさ…だから生まれてきてよかったって思ってるんだよ?西片」

「…///。お、俺も、高木さんがいなかったら、人生つまんないし…」

「ありがと。西片。」

美味しくご飯をいただいた。
二人で部屋に戻る。

「高木さん、お、俺…お風呂入ってくる」

「ごゆっくり…いいお湯だよ……」

「うん…///」

「に、西片っ…で、も、もし、よかったら、お風呂あがったら…」
「い、一緒に寝てもらえませんか…///」

25話 完

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