からメシ 第111話 祭りのあと
夏祭りから3日後
高木さんから大事な話があるからと、
神社に向かう。
そっか。それって多分
俺はもう覚悟も決心もしている。
高木さんと、高木さんとの子供のために
身を粉にして働くぞ!
「西片。ごめんね。呼び出しちゃって。」
「大丈夫だよ。俺も高木さんに話があってさ。」
「そうなの?じゃあ西片からどうぞ」
「いや、高木さんからお願いします。」
「実は……生理が……」
やっぱりだ。来なくてってことか。
赤ちゃんできたのか。
「た、高木さん!俺さ、高木さんと、高木さんと俺の赤ちゃんのために働くから!学校もやめて!高木さんと子供を養って、幸せに……」
「来ちゃった。生理。...夏祭りの日の初めてでは、赤ちゃん出来なかったみたい」
「へ?」
「……そもそも...西片としたの、生理予定日直前で出来にくい日だったんだよ。赤ちゃん。
まだ着床出血の可能性も絶対無いとは言えないんだけど。
ただ着床出血って性交で腟内に精子が入ってから1~2週間後らしいし、血の量も少ないんだって。そもそも着床出血起きない人が多いらしいし」
「今回のはタイミングからしても血の量からしても生理だと。思う。念の為生理終わったあとと、次の生理予定日前あたりで妊娠検査薬使うけど。ほぼ、これは赤ちゃん出来てないと言えると思う」
「そっか」
正直、赤ちゃん出来てたら色々大変になるのはわかってたけど、出来てないと聞くと。
ちょっと残念とすら思った。
だって。世界一、唯一、生涯ただ一人愛してる人と子供できるってやっぱとてつもなく嬉しいことだから。
高木さんと、高木さんと俺の子供との家庭を早くも想像したりもしてた。決して裕福な暮らしはさせてあげられないかもだけど。でも、家族本当に仲良く暮らす家庭。
でも、そっか。まだ出来なかったのかな。
「西片の赤ちゃん欲しかったな...でもありがと、西片。赤ちゃん出来てたら私と赤ちゃんのために働く!って決心までしてくれてて。嬉しいよ」
「当たり前だろそんなの。大好きな人と子供できたら、幸せにするために頑張るのなんか」
「当たり前でもないんだよ。西片。それって。凄いことなんだから」
「そうなの?俺はそんなの当たり前だと思ってるけど…。」
「ごめんね。西片。一生に一度の初めては何も隔てるものなく、西片を感じたい。なんてわがまま言ったせいで、振り回しちゃったというか、負担かけちゃったというか。」
「振り回されただなんて、負担だなんて思ったこと一度もないよ。」
「そっか。ありがとう。じゃあお言葉に甘えてこれからも毎日何も付けずにそのまま中に…」
「初めてだからって話だったんだから、そこはちゃんと……す、するにしても、ご、ゴム付けるから。これからは///」
「あはははは。冗談だよ。冗談。」
全く高木さんは、すぐこれだ。
しかしどうしようか。
高校辞めて働く覚悟でのぞんだけど
……また、高校通っていいのかな。
検査薬で来月2回?はかって陰性だったら
棟梁にも謝っておいた方がいいよな?学校通うなら。でもまたお世話になる可能性があるなら……というか俺、将来どうする?
大工?それとも漠然と考えてた教師を目指すために大学行く?なんにしろ高木さんと一緒の道。これだけは譲らないけど。
「色々悩んでるね。西片。」
「うん、赤ちゃんできてないとなると一気に将来どうしようって」
「あはははは。普通と逆な悩みだね。出来ちゃった、将来どうしようって悩みが多い中」
「だって好きな人と子供できたらとにかく幸せに養って行くために働く!ってなるだろ。それが無くなると何やっていいんだか。」
「ゆっくり考えればいいんじゃない?」
「高二の二学期だよもう。高校生活半分終わったんだから。もう進路しっかり決めないといけなくなってくる時期だよ。進学か就職かすら決まってないなんて」
「でもさ、西片。何をするかは決まってなくても、誰といるかは決まってるでしょ?」
「うん。それは絶対決まってる」
高木さんの目を見つめる。
「私もね、誰といるか、だけは絶対に決まってるよ。西片。」
「だからさ、一緒に決めてこうよ。私と西片が2人で進む道。」
「そうだね。」
帰り道。
高木さんの報告を聞いて。
お父さんになるからドンと構えるという心意気だったのが、ドンと構えなくなってしまい
急に恥ずかしさと照れ、そして
なんて大層なことをしてしまったんだ俺は!
という気持ちが押し寄せてくる。
手をつなごうと頑張っても
……意識しすぎて、それすら出来ない
あの日の記憶が蘇り
この手に色々触ってもらったよなとか
入れる時この手に誘導されたよなとか
また…手繋いでしまっていいのかとか
本当にだめだ俺は。ダメなやつだ
こんなんじゃ高木さんを不安がらせてしまうのに…。
家に帰っても
どうしよう。俺が照れすぎて素っ気ないせいで、西片、私の事好きじゃなくなっちゃったのかなとか思われちゃったら。
そんな事絶対ないのに。高木さんの事愛してるのに。世界一、ただ一人、ずっと、一生。
始業式の日になってしまった。
「おはよ。西片」
「おはよう」
「9月になっても暑いね~温暖化だね」
「9月1日なんか実質夏だろうし」
「水分しっかり取らないとね。どうする。西片、熱中症になりかけた時水分もってなかったら」
「ど、どうするもなにも……どうしよう」
「そしたら私の汗ぺろぺろさせてあげるからそれでしのいでよ。」
「そんなしのぎ方しないから!///」
「あははははは」
高木さんは相変わらずだ。
それに比べて
高木さんの手に手を伸ばそうとするも
「ん?どうしたの?西片?スカートに手近づけて。ここは人目に付くから、スカートめくりは西片の部屋でにしてね。」
「そうじゃないよ!///」
「西片の部屋で西片と二人きりなら痴漢ぷれいでもいいよ?」
「だから違うから!///」
くそう、からかわれなければ手繋げたのに!
学校に着く
高尾「おーい、西片。夏休みどうだった」
西片「夏休...あっ...べっ……べっ別にな、夏休み...だったけど...//////」
高尾「支離滅裂な言動...真っ赤にする顔、まさかやっぱりお前…やっ…」
その時、高木さんがキッと高尾の方を睨む
高尾「...ご、ごめんなんでもないです。はい。すいませんでした。余計なことに首突っ込んで」
そんなこんなで始業式とホームルームを終え解散。
高木さんと一緒に帰る。
「じゃあね、西片。また明日」
「うん、また明日。」
また明日じゃないだろ。西片。俺は
走って高木さんの手を握る。
「高木さん!俺。最近ずっと恥ずかしさとか、照れとか、高木さんにとんでもないことしちゃったんじゃないかとか...色々考えちゃって」
「高木さんに、素っ気ない素振りとかしちゃったり、手も繋げなかったりしたけど……でも」
さらに手をぎゅっと握る。
「俺……高木さんの事、ちゃんと愛してるから!」
高木さんが涙目になる
「うん。知ってる。知ってるよ、西片。何年西片の事だけ見てきたと思ってるの?私。4年半もだよ。」
「でもちょっと寂しかったから。ありがとね。すごく嬉しいや。今日のこれ、クリティカルだよ。」
高木さんが俺を抱きしめる。
「それでね、西片。私も、西片のこと、しっかり愛してるからね。」
「うん。それは毎日実感してる」
「でしょー?」
「あ、でも西片がとんでもない事したってのは事実かな」
「ご、ごめん!」
「そうじゃなくて、とんでもなく嬉しくて、幸せな事をしてくれたって事だよ。」
ちょっと神社に寄り道する。
「そもそも西片が、私と初セックスした後に恥ずかしくて照れまくるのは織り込み済みだよー。」
「せ、セックスって言わないで...///」
「……まあまさか手を繋ぐのすら難しくなるほど照れて恥ずかしがるのは想定以上だったけどね」
「でも...正直私だって西片の顔みただけで赤くなったりしてたし」
「へ?」
「なんでもないよー。まあ私が西片誘惑しまくってリハビリしてけばいいだけの話だもんね」
「お手柔らかにお願いします」
「うーん。クリスマスとかお正月にはやっぱりしたいしなあ。お手柔らかにできないかも。お手で柔らかい所なら揉んでいいよ」
「お手柔らかってそういう意味じゃないから!」
「あははははは。西片。9月入ったらまたすぐ、文化祭だね。2年生ではどんな出し物になるのかな?」
「そうだね。楽しみだね。」
明日には文化祭の出し物決めがある。
今年はどんな文化祭になるのかな
なんにしても高木さんと楽しもう
第111話 完
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