【ショートショート】正義のヒーロー・マスクエース!!

 悪の組織が送り出した頭部だけマグロの頭になっている怪人・マグロ男爵!!
 そんな恐るべきマグロ男爵と、採石場で激しい戦いを繰り広げる正義のヒーロー・マスクエース!!

「マスクドパンチー!!」

 マスクエースの強烈な一撃が、マグロ男爵の腹部に命中する。

「ま、まぐろぉおおーーー!!!」

 激痛の声を上げるマグロ男爵!!
 マスクエースは、最強の必殺技『マスクドビーム』を放つ構えを取った。

 ……『マスクエース』とは!
 白い仮面を被り、全身白いタイツを着た正義のヒーローである!!
 マスクエースは悪事を働く悪の組織と、終わりのない戦い続ける孤高のヒーローである!!
 だが、しかし!
 誰もマスクエースの正体を知る者は居ない……。

「頑張れー!マスクエース!!」
「頑張ってー!!マスクエース!!」

 採石場で戦うマスクエースを応援する少年少女が二人。

「いっけぇー!マスクエース!!」

 小学4年生の英輔くんが大きな声で、マスクエースに向かって叫ぶ。

「負けないで!!マスクエース!!」

 小学5年生の栄子ちゃんが祈りながら、マスクエースを応援する。
 すると、二人の応援が届いたのか、マスクエースの両腕が七色に光る!
 そして、マスクエースは光り輝く両腕をクロスさせた!!

「マスクドビーム!!」

 マスクエースが叫ぶと、クロスさせた両腕から七色の光線が発射された。
 その光線は、マグロ男爵に命中!!七色の光線を全身に浴びるマグロ男爵。
 この七色の『マスクドビーム』は鉄板をも溶かす超高熱の光線!!どんな敵であっても、この光線に耐えられるはずがなかった!!

「く、くろまぐろぉおおおおーーーーー!!!!!」

 マグロ男爵は大きく断末魔を叫び、爆散した。

「やったー!!勝ったー!!」
「すごいわ!マスクエース!!」

 クロスした両腕の構えを解くマスクエース。
 マスクエースは英輔くん、栄子ちゃんに向けて手を振る。
 そして……。

「ショウワッ!!!」

 掛け声を放ち、マスクエースは空へと飛んでいく。

「ありがとうー!マスクエース!!」
「さようなら、マスクエース!!」

 英輔くんと栄子ちゃんは空を飛ぶマスクエースに向け、感謝と別れの言葉を送る。
 夕陽の中に溶け込むように、マスクエースは空に消えていく……。

「へへっ、カッコイイな!マスクエース!!」

 鼻の下を人差し指でこすりながら、英輔くんはそう言った。

「本当に素敵だわ、マスクエース」

 両手を握りしめ、空を見つめながら栄子ちゃんは言う。
 すると……。

「おおーい!!!英輔くん!栄子ちゃん!!!」

 採石場に、白い革のコートを着た長身でオールバックの端正な顔立ちをした二十歳ぐらいの青年がやってきた。

「あ!丈一郎兄ちゃん!!」

 英輔くんは、その白いコートの青年に顔を向けた。

 青年の名は、『白井丈一郎《しらい じょういちろう》』。
 どこにでも居る、ごく普通の青年である。
 背が高く、スマートでありながらも、筋肉質でガッチリとした体格の好青年だ。
 何故か、いつもマスクエースが去った後に姿を現すことが多い。

「二人とも、大丈夫だったかい?」

 丈一郎は、英輔くんと栄子ちゃんの肩に手を置く。

「うん!大丈夫だったよ!!」
「マスクエースが助けてくれたよ!」

 英輔くんと栄子ちゃんは、笑顔でそう答える。
 そんな二人を見て、丈一郎も笑顔になった。

「そうか、またマスクエースが助けてくれたんだね!」
「うん!!」

 丈一郎の言葉に、英輔くんと栄子ちゃんは大きく頷く。
 すると……。

「……でも、マスクエースって一体、何者なのかなぁ?」
「そうよね……。一体、どんな人なのかしら」
「……」

 英輔くんと栄子ちゃんの疑問の表情を見て、丈一郎は口をつむぐ。
 丈一郎は二人の肩から手を離し、空を見上げた。

(英輔くん、栄子ちゃん……。僕は君たちに秘密にしていることがあるんだ……。それは、マスクエースの正体が……《《僕》》だということを……)

 謎の仮面のヒーロー・マスクエースの正体は、なんと、この好青年!白井丈一郎だったのだ!!
 彼、白井丈一郎の正体はW46星雲からやってきた宇宙人。
 そして、『宇宙の安全を守る会』のメンバーでもあり、彼は地球の平和を守るためにやってきた正義の使者なのだ!
 ……しかし、そんな彼には悩みはあった。

(……もし、僕がマスクエースだと言うことが、誰かにバレてしまえば、僕は強制的に故郷・W46星雲へ帰らなければならなくなってしまう……)

 彼が所属する『宇宙の安全を守る会』には、自分の正体を秘匿する義務があった。
 もし、正体がバレた場合。丈一郎こと、マスクエースは地球を守る任務を解任され、故郷へ帰らねばならなくなるのだ。

 何故、正体を隠さなければならないのか?

 それには、様々な理由があるのだが、とにかく、丈一郎は『マスクエースの正体が、自分であることを誰にも知られてはいけない』のだ。

(知られるわけにはいかない……。僕の正体がマスクエースだなんて……。もし、正体がバレてしまったら、この美しい地球と、子供たちの未来を守ることが出来なくなってしまう……)

 丈一郎は表情を曇らせた。

「どうしたの?丈一郎兄ちゃん?なにかあったの?」

 暗い顔の丈一郎に、英輔くんが心配そうに声をかける。

「ッ!い、いや、なんでもないよ、ちょっと考え事をしていただけだよ、ハハッ(いかん、いかん……子どもに心配をさせるなんて……)」

 丈一郎は、本心を隠すかのように空笑いをした。
 すると、栄子ちゃんはなにかを思いつき、声を上げる。

「あ!そうだわ!!みんなで、『マスクエース』のお歌を歌いましょうよ!!」
「うん!やろう、やろう!!」

 英輔くんはノリ気だ。
 丈一郎は、英輔くんと栄子ちゃんの姿を見つめる。

(英輔くんと栄子ちゃんのような純粋な子ども達のために、僕はこれからもヒーローとして、『マスクエース』として戦っていくぞ!!)

 心の中で、丈一郎はそう固く決意するのであった。
 そして、英輔くんと栄子ちゃんは『マスクエースのうた』を歌い始める……。

『マスクエースのうた』
作詞、作曲 要マサル
唄 そこら辺に居た少年合唱団

マスクエース マスクエース
しろいかめんのヒーロー

わるいやつらがやってきた
わるさをするため やってきた
わるいやつらとたたかう せいぎのヒーロー
そのなは マスクエース

だれなんだ だれなんだ
きみはいったい だれなんだ
しろいかめんにかくされた
せいぎのこころをむねにひめ
いまだ!
へんしんするんだ!《《じょういちろう》》!!

マスクエース マスクエース
わるいやつらはゆるさない
マスクエース マスクエース
《《しらいじょういちろう》》がへんしんするヒーローだ

だれなんだ だれなんだ
きみはいったい だれなんだ
それは ひみつ 
それは ひみつ
マスクエースのしょうたいが 《《しらいじょういちろう》》なのは ひみつなのさ
しょうたいがバレたら こきょうへきょうせいきたく

ああ いけ ぼくらのマスクエース
さあ いけ ぼくらのマスクエース
もういちど いうけど
マスクエースのしょうたいは

《《しらいじょういちろう》》

 ……英輔くんと栄子ちゃんは『マスクエースのうた』を歌い終えた。

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