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行きつけの店だけれども。

私はフリーでWebマーケティングの仕事をしている。

基本、自宅で仕事をしているのだが、ずっと自宅に籠もっていると息が詰まるので、昼過ぎから外に出掛けるようにしている。

そんな私には、週1回必ず通うカフェがある。自宅の最寄り駅から2つ目のA駅で降り、15分程歩いた場所にある。

少し高台になった場所にあり、見晴らしが良い。加えて、異様に敷地が広い。カフェなのに駐車場が8台もあり、建物内も無駄に広く、ものすごくゆったりとした贅沢な作りをしている。

カフェのあるA駅は都心から電車で30分圏内に位置し、いわゆるベッドタウンとして急激に発展した町で、駅近くの築10年の1K27平米の部屋が月額家賃9万円なので、決して土地が安いという訳では無い。

私の予想では、地主か何かだと思うのだが、それにしても、贅沢な作りをしている。

そんな行きつけの店に突然行列が出来るようになった。私は不安になった。私にとっては好きな店。でも混むのは違う。1ヶ月程様子を見てから再度訪れたが、まだ行列が出来ている。

仕方無い。私は別の行きつけの店を探す事にした。

なぜなら、行きつけとは言っても、いつ行ってもガラガラで、店舗が広く、席間も広く、窓からの景色も良く、PC作業がしやすいから通っていただけで、味は微妙、接客も微妙、珈琲も微妙な店なのだ。

宣伝過剰というより半ば嘘のPOPを見る限り、恐らくどこぞのコンサルが支援した成果だとは思うが、この行列が原因で「居心地が良い」という理由だけで長年通っていた人達に見限られたらどうするのだろうか? 付近にある2店舗が、この行列に危機感を覚え努力し始めたらどうするのだろうか? 

カレーという商品で、あの微妙な味しか出せないとなると、集客すれば集客する程、悪評が広がるだけのような気がする。

この繁盛が命取りにならないよう祈る事にした。

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【題】お宅が求められている理由はそこじゃない。
この物語はフィクションです。

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