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タイのバス事故が日本でも報道されたらしい【日タイ比較】

 今月11日に日本の報道でタイのバス事故が取り上げられたらしい。ネットを見ると、確かにNHKなども報道していた。両親から「なにかあったのか」と訊かれて知ったのだが、正直、タイのバスの事故はよくあることなので、なにがなにやら。乗客はサムットプラカン県の人たちだったので、両親も気になったのだろう。ボクはバンコク在住と言っているが、実はサムットプラカン県住まいである。実際、自宅の目の前まではバンコクである。うちの敷地からサムットプラカン県であって・・・・・・。

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 日本で報道された事故は下記のものだ。ちなみに、今回使用する画像はそのバス事故とはまったく関係がない。

 概要は、サムットプラカン県内にある工場の従業員たちがタンブン(功徳)するため、隣のチャチェンサオ県内にある寺に向かっていたところ、途中の踏切で列車と衝突した。日曜の早朝のことだ。そして、報道によって若干違いがあるようだが、タイ語報道や上記のサイトによれば、18人が死亡し、42人が負傷する大惨事になった(ほかでは見出しに20人死亡という報道がある)。

 大惨事とはいえ、なぜわざわざ日本で報道するのだろうか。バスの事故でたくさんの人が同時に亡くなるのは、残念ながらタイでは日常茶飯事すぎて驚きもしない。

 タイは交通事故が多い。たとえば、欧米のYouTubeチャンネルで、ドライブレコーダーを中心に、交通事故の映像を専門にあげているものがよくある。アメリカ、オーストラリアなど、国名を書いているとそこの国のみの映像であることが大半である一方、国名がないタイトルの動画はいろいろな国の映像を集めている。その中で多いのがロシアなのだが、アジア映像で多いのは中国(あるいは台湾?)、タイ、ベトナムだ。それほどタイは事故が多い国なのだ。

 そして、一般ドライバーもそうだが、プロであるはずのタイの交通機関の運転手はレベルが低い。レベルというのは運転技術はもちろん、人としてという感じで。つまり、交通モラルが著しく低い。

 見通しが悪い上に勾配のあるカーブにハイスピードで突っ込んでいき、黄色車線をはみ出して追い越すとか、タイではもう普通過ぎる。だから、ボクはタイでは極力、電車以外の交通機関は利用したくない。地方に行くときは絶対、自分で運転して行くくらいだ。

 たぶん、タイは日本が注目する国のひとつでもあるし、人々の行き来がなくなっている今、そういった大きな事故がほとんどなかったこともひとつの理由で、今回はわざわざ日本でも報道したのかもしれない。

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 今回の事故で向かった寺院は、最近人気の金運の寺院である、チャチェンサオ県内のピンクのガネーシャで有名なワット・サマンかなと思って、一応タイの報道も確認してみた。

 タイの報道は結構細かくて、目的地の住所や、今回は違うが犯罪者などは住まい、あるいは実家の住所がさらされる。ひどい場合は被害者の住所などもばっちり報道される。数年前にうちの近くで日本人女性がタイ人夫から家庭内暴力を受けて警察に保護される事件があったのだが、そのときはその女性のパスポート写真が番号や生年月日などを伏せないで掲載されていた。

 タイラット紙を見てみると、どうやら、ワット・バーンプラ―ナックという寺のようだ。そして、よく記事を読んでみると、内容が日本の報道とは違っていた。日本が嘘を書いているわけではなくて、事故の概要を簡単に書いているに過ぎなかった(あくまでボクがざっと読んだいくつかの記事の中での話)。

 上記記事の詳細を見ると、運転手が54歳のバスをサムットプラカン県の会社が貸し切り、60人ほどの人が乗っていた、とある。乗客は日本の報道通り、サムットプラカン県内にある工場だが、今回は社名は書いていなかった。被害者に配慮したのかもしれない。ただ、どうやらその工場はボクが住む郡内にあることはわかった。

 乗客はタイ人と一部がミャンマー人だったようだ。タンブンはタイ人やミャンマー人にとっては神聖な行いであると同時に、ちょっとした行楽でもある。バス車内は音楽をかけて、和気藹々としていたようだ。そして、踏切に入ったバスと、タイ国鉄の貨物列車が衝突した。

 踏切は故障していたようだ。タイの踏切は有人であることが多いが、場所によってはいないこともあるし。また、タイ国鉄は運行数が日本と比較してかなり少ない。だから、運転手も踏切が作動しなかったことでなにも気にせずに侵入した可能性がある。

 法令でどうなっているのかよくわからないが、タイ人ドライバーは多くが踏切前で一時停止と左右確認をしない。20年くらい前までは渋滞の場合、車が線路を塞いでしまい、列車が車を待つという、日本では考えられないことが普通だった。

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 列車というのは、意外と早いものだ。遠くに見えたと思っていても、あっという間に接近している。この運転手も見ていなかった可能性の方が高いが、もしかしたらまだ来ないと思って侵入した可能性もある。

 そして、日本とタイで大きく違う報道内容は、現場の様子だ。おそらく、列車がバスに衝突した際、真正面にぶち当たった5列に死者が集中していたのではないだろうか。2人掛けなので1列4人と考えればの話だが。

 日本の報道では「18人が死亡した」だけだが、タイの報道では、手足から頭まで死亡者はバラバラになってしまい、レスキュー隊員が現場で吹き飛んだ人体の破片を歩いて集めることになった、とある。すごい現場だ。

 なにしろ、60人の死傷者なので、レスキューも複数のチームが同時に行ったようだ。ボクがいたバンコク都内と地方では運用方法が違うのだが、それでも基本は現場に最初についたチームが取り仕切る。しかし、この事故現場では報徳堂、義徳堂、チャチェンサオ県のレスキューの3チームが同時対応したという。

 そりゃ、日本でも報道されるか、というほどの凄惨な事故現場だったようだ。報道では生存者の証言も載せていて、音楽をかけて楽しい遠足のそうな状態だったところ、突然突っ込まれたそうだ。亡くなった人はなにもわからないまま即死したに違いない。

 これだから、タイでは人が運転する車は信用ならない。ボクの子どもたちは毎日妻が送り迎えをしている。これも幼稚園バスでさえ信用ならないからだ。実際に何回かうち子の学校のバスが事故を起こしている。幸い、死者は出ていないからいいものの。

 日本人が巻き込まれる交通事故は、小さいものなら年間に何十もあるだろう。また、悲惨な事故もときに起こる。だから、タイに来たら、車には注意しなければならない。タイ滞在中、諸々の犯罪よりも、確実にこの被害に遭う可能性が最も高いからだ。子どもころに口酸っぱく親や教師から言われたと思うが、タイでは真剣に道路を渡るときは左右を確認しなければならない。信号が青でもそうだし、中央分離帯を越える場合は都度見なければならない。

 そして、残念ながら、バスやタクシーなど、乗車中の事故は避けられない。運転手を選べないからだ。こればかりは運としか言いようがない。

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