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タイの運転教習はいきなり!?

 前回抜け道の話を紹介したが、バンコクの渋滞がひどいので抜け道標識が増えたという話で締めくくった。バンコクの渋滞は結局のところ、信号システムと道路事情の悪さがある。路面は荒い、不規則な一方通行、狭い道幅などいろいろな道路の悪さがあるが、特に渋滞悪化に影響を与えているのが運転手のマナーの悪さと運転技術の低さだ。

 マナーはもう国民性なのでなんとも言えない部分もあるが、運転技術の低さは本当にひどい。車幅感覚がゼロに等しいし、Uターンなどでなぜかハンドルを少ししか切らないなど挙げたらキリがない。なぜタイ人の多くが運転が下手なのか。それは教習の様子を見ればすぐにわかることだった。

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 この画像は2011年のものになるが、妻が運転教習に行った初日のものだ。

 最近はタイも日本のように私有地に教習施設を持つところも出てきてはいるが、基本的には住宅街など交通量がほとんどなく、広い道路があるところで運転方法を教わる。日本なら仮免許を取得して路上教習だが、タイはゼロのときから公道で練習を始める。ただ、運転方法といっても、試験内容に出てくる幅寄せとか縦列駐車などの練習で、時間にして数時間程度だ。

 もうこれだけ聞けば運転技術が低い理由はわかるだろう。そもそもタイは実技試験を直で受けるのが基本であり、その試験も基本だけできればOKという、簡単なものなのだ。

 上記の画像の話に戻すと、このとき妻は初めて車を運転した。教習を受けつける事務所に停まっていた車に乗り込み、住宅街に向かおうとしているところだ。もう一度言うと、このとき妻は初めて運転席に座り、初めてハンドルを握っている。アクセルのアの字も知らない人に、いきなり目の前の大通りを運転させ、約5キロ先の住宅街に行こうというシーンである。

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 日本で実技を試験場で直接受ける場合、合格は現役タクシー運転手でも難しいと言われるほどだ。しかし、タイは初めての運転でも合格できるレベルだ。車社会なので、合理的に進める必要があるのかもしれないが、極端に安易である気がする。そんな簡単な試験であれば、なぜ教習所に行く必要があるのか。それはいくつか理由があるが、概ね下記のようなところだろう。

1.教えてくれる人がいない

2.ちゃんと習いたい

3.合格したい

 教えてくれる人がいたとしても、そもそも運転技術の低い人ばかりなので、教え方すらわからない。悪い言い方をすればタイ人は想像力が欠如している人が多い。ブラインドカーブで追い越しをして正面衝突もよくある話で、これなんかは想像力欠如の典型だろう。そんな人が、運転の仕方を知らない人に先回りして疑問点を拾い上げ、運転の方法を教えるなんて到底無理な話だ。

 教えてもらう/あげるにも車が必要で、誰しも初心者に自分の車を提供したくない。だから、普通に考えて教えてくれる人というのはタイの一般層の中には存在しないので教習所に来ることになる。数時間で3000バーツとかそういったレベル、日本円で1万円あれば十分試験に通過できる技術が手に入る。

 2番目はまじめな人が、やっぱりちゃんと憶えておこうということで。うちはこういった理由からだ。妻が自主的にそう思ったわけではなく、ボクがちゃんと運転を憶えてほしいというのがあって行かせた。元々の目的は子どもたちの学校送迎に運転できるようにさせたかった。タイの私立は親が送迎することが一般的だ。一応スクールバスがあるが、前述の通り想像力に欠けた人が運転手になるので、子どもを乗せていても全開で逆走をするなど信用できない。事実、この数年間で何回も事故を起こしている。子どもに死者はまだ出ていないが、これも時間の問題でしょう。

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 3番目はちょっと日本では理解できないことかもしれない。日本の公認教習所なら実技免除になるが、タイにはそういった制度がない。一方で、どこの教習所も月に何回か、生徒をまとめて試験会場に連れて行ってくれる。教習サービスを行っている業者は、最初から試験場送迎のサービスも込みであることが一般的だ。むしろ、このサービスがないとここに通うメリットがないとも言える。

 ここからがタイらしいのだが、技術試験は衆人環視の中で行われるので、あからさまな賄賂は通じない。ほかの受験者が並んで待っているためだ。

 一方で筆記試験は話が別だ。今はパソコンを使ったマークシート方式なので、不正なんてやり放題で、試験官がなにかしらの手助けをしてくれる。普段はそういったことはしてもらえないが、教習サービス業者はコネクションがあってその仕事をしているわけで、生徒を引き連れて訪れ、懇意の試験官になんらかしらの便宜を図ってもらう。すると、そこを通して受験すれば、合格率がほぼ100%になる、というわけだ。教習サービスはあくまでも運転技術を教えるだけで、学科関連は下記画像のような教科書のコピーを貸してくれるのみ。ほとんど関連法規に触れることがない。なぜなら、勉強しなくても受かるからだ。

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 こうして技術も最低レベル、交通法規もちゃんと理解していない人が世に放たれる。現在は、最初の発行分は仮免扱いで1年後に更新になり、本免許となるそれ以降は5年ごとの更新だ。更新時に簡単なビデオ鑑賞で講習を受ける。そのときに道交法が変わったいたことがアップデートされるわけだが、それはつまり5年先まで新法令を知る由もないということでもある。

 それでもアップデートされるならまだいい方で、タイは2003年7月まで生涯免許が発行されていた。この年の7月末までに運転免許証を取得した人は、それ以来試験場に更新手続きに来ていないわけだ。そんな人たちも大量に混じってタイの道路で運転しているわけだ。だから、タイ人の運転技術は異様なまでに低いのである。

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