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野良犬の保護団体「ソイ・ドッグ」の活動

 日本も昔はそこら中に野良犬がいたが、最近はあまり見なくなった気がする。特に東京だ。バンコクも20年前と比べれば、野良犬がかなり減った。これはバンコク都の、日本で言う保健所の活動と、民間の保護団体の活躍が大きい。民間保護団体は多数あるが、最も有名なのが「ソイ・ドッグ」だ。ソイとは大通りに対する小路のことで、タイの野良犬をそのように名づけ、保護する活動がプーケットで始まった。欧米人が始めた活動で、たくさんのボランティアの協力の下で野良犬の保護を行っている。

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 今でもタイ国内には多数の野良犬が暮らしている。バンコクも同じだ。ただ、バンコク都内の見えるところにいる野良犬は人に慣れているので、いきなり襲ってくることはない。むしろ、信号を見て道路を渡るくらい頭がいい。おそらくそうして生き残った犬ばかりで、淘汰されたのかと思う。

 一方、バンコク郊外や他県にいる野良犬は、昼間はあまり人を襲わないものの、夜間は徒党を組んで人を襲うので注意したい。怖いのは、タイにはいまだに狂犬病ウィルスを持った犬がいるので、噛まれでもしたらすぐさま病院に行かないといけない。

 タイの野良犬やときには飼い犬もまた日本では考えられない危機が身近にある。それは犬の業者による誘拐・拉致だ。食用で捕獲し、外国に密輸するのだ。

 タイ国内においては犬食の文化はごく一部にしかない。サコンナコン県の一部の村だけと言われている。しかし、ラオスやベトナムでは犬食文化があり、需要があるため、タイの業者が違法に犬を捕獲して密輸している。

 どういう論理かわからないが、食用犬は屠殺前にストレスを与えるといいとされる。おそらく疲労物質を分泌させることで死後硬直が早まらせ、肉の熟成が促進されるからだろう。スポーツ選手も死後硬直が一般的な人よりも早い。「弁慶の仁王立ち」をご存知かと思うが、法医学的にはありえる話だそうで、弁慶の場合、死亡して倒れる前に死後硬直が始まったからだと考えられる。スポーツ選手も弁慶も筋肉に疲労物質が日々の訓練で多く、そうなると見られ、犬もそのようにするためにわざとトラックにぎゅうぎゅう詰めにして運ぶという残虐な方法で密輸しているのだ。

 タイでは形ばかりではあるが動物愛護法が最近になって成立しているし、保健省でも犬肉を食べることを禁じている。そのため、警察も取り締まりを進めるが、イタチごっこでなかなか効果が上がらない。そういった業者の阻止や犬の保護も含めて、民間団体も動いている。そのひとつがソイ・ドッグというわけだ。

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 ソイ・ドッグは2003年にプーケットで活動を始めている。バンコクにも支部があり、そこは画像のように治療設備も備えた施設になっていて、獣医も常駐している。主な活動は野良犬の保護だ。通報によって捕獲し、施設で健康状態を確認したり狂犬病の予防接種を行う。場合によっては元の場所に帰すこともあるし、里親を見つけて幸せに暮らせる場所に犬を送り出してもいる。

 世界中に支部があって、活動資金の寄付を募っている。また、ソイ・ドッグで保護して里親を探している場合においては、海外居住の人でも引き取れるよう、国際輸送ができる状態にして待機している。国際的な法令や基準に則って、保護犬の健康状態などを維持しているのだ。だから、日本の愛犬家もソイ・ドッグから犬を引き取ることもできるので、後述のホームページなどを参照にしてほしい。

 ちなみに、タイの保健所でも犬の捕獲や保護を行っている。現実的に野良犬を放置しておくことは、市町村の運営において好ましいことではない。先述のとおり、タイにはいまだ狂犬病の恐れもあるので、タイの保健所は積極的に野良犬の捕獲を進めているのだ。しかし、日本の保健所と大きく違う点は、保護犬を一定期間係留したのちに殺処分をしないところだ。

 タイは仏教徒が多いので、無駄な殺生は好まない。もちろん日本の保健所が好きで殺しているとは言わないが。たとえばバンコク都の保健所では犬を捕獲したあと、その区域の保健所施設で一定期間係留し、健康状態を良好にする。獣医が管理して、病気などをしっかりと治すのだ。その後、県外にあるバンコクの保健所が保有する施設に送り込み、そこで亡くなるまで飼う。

 一応、保健所でも里親希望者に対し犬を引き渡してくれる。実際、バンコク在住の日本人女性のひとりは保健所から犬を引き取っていた。ただ、どういうわけか、引き渡しはバンコク都内の保健所施設までで、他県に送り込まれたあとは引き渡してくれない。

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 タイの野良犬は野良犬同士の交尾によって生まれるケースもあるが、中には捨て犬も少なくない。前述のとおり、タイには動物愛護法が成立している。ただ、それもわりと最近の話で、また条文を読んでも、数千バーツの罰金くらいで済んでしまう。

 タイはまだまだ動物の立場が低い。タイは仏教徒が多いので殺処分をしないと書いたが、一方では動物は畜生道の生きものなので、人間より立場が低いと見る。そのため、扱いもよくない。だから、かわいいからと飼ってみたものの、大きくなって飽きて捨てるということもよくある。

 若いタイ人女性のSNSを見てても、マルチーズやポメラニアンといった小型犬を飼っている姿が見られるが、あくまでも愛玩といった感じで、ぬいぐるみを扱っているような雰囲気が感じられる。

 もちろん、本当の愛犬家も多い。近年は良し悪しは別にして、動物病院も増えてきたし、ドッグランもある。旅行博でもペットと一緒に泊まれるホテルを売りにするブースも散見されるほどだ。

 タイにはタイ固有種も2種類あって、そのひとつのバンゲーオに関しては日本人の方がブリーダーもされている。ドッグショーでは賞を受賞するなど、その方の活躍はめざましい。実際に賞を取ったバンゲーオと会わせてもらったことがあるが、人懐こくてかわいい。人間でも容姿もよくて性格もいいという、自分とは対極にいる人にたまに会うが、犬の世界も同じようだ。

 また、タイの寺院の中には犬や猫の保護をしているところもある。多くの寺院ではのんびりと暮らす犬や猫を見かけるが、保護をしっかりしているところもあって、希望すれば里親にもなれる。ボクの友人もそれまで猫好きなんて素振りもなかったのに猫を引き取って、今やすっかり愛猫家になっている。

 そして、ソイ・ドッグのような団体もいくつかある。日々、タイでは立場の低い犬や猫の保護を行っているのだ。

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