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タイのアルコール瓶にはなにが書いてあるのか

 前回タイのタバコの警告文や警告画像について書いたが、タイは食品や飲料などの表示義務が事細かに決まっている。東南アジアはいい加減なイメージがあるが、タイの場合、これに関しては公共保健省やタイFDA(食品医薬品局)などのルールが意外としっかりしている。

 コンビニやスーパーで売られている食品パッケージには日本と同じように材料や成分が表示されている。ほか、最近だとアレルギー物質の表示も一部の商品にあったような。日本だとほかにはカロリー表示もあるが、タイはまだ主要な表示項目ではない(はず)。

 あと、日本と大きく違うのはほとんどの食品がイスラム教徒でも食べらるものであるかどうかを示す、ハラル・マークがある。日本だとほとんど見かけない気がする。ムスリムはタイの方が過ごしやすいかもしれない。

 タバコと同様に規制の厳しいアルコールはどうだろうか。アルコールのRTDなどに貼られている裏のラベルを見てみた。

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 タイ政府はアルコールを徹底的に敵視している。確かにアルコールによる事件事故は少なくない。とはいえ、広告はロゴまでOKで、液体そのものや飲んでいる様子などを出して宣伝してはいけないとされている。何年か前には日本料理店がメニューにアルコールの画像を掲載したことで問題になったことがある。また、ビール会社がSNS上で芸能人を利用してステルスマーケティングをしていると疑われて捜査が入ったこともあった。

 メディアだけでなく、ドラマなどでもアルコールの表示は厳しい。昔で言うハードボイルドなんて、アルコールとタバコとセクシーという、タイでは全部規制の対象なので、このジャンルの制作は絶望的と言えよう。

 販売に関する規制も厳しい。まず小売店では11時から14時までと、17時から深夜0時までしか販売できない。また、選挙前日と当日の開票が始まる時間(終わった時間だったかな)、仏教関連の重要な日、そのほか政府が定める日は販売も禁止だし、場合によってはこれらの日に飲んでも違法になる。

 ちなみにタイはバンコク都知事は選挙で選出され、県知事は内務省からの派遣になっている。そのため、都知事選の際はバンコク都内は禁酒日になってバーなどが休みになるのだが、県を跨げば関係ない。最近はBTSも近県に延びているから、沿線の飲み屋はバンコクの選挙日には繁盛していたりする。

 それから、外国人経営の店は禁酒日にもアルコール提供しているケースがよく見られる。これは管轄の警察などに賄賂を払っているケースが多いけれど、グレーすぎるのでかなり危険だ。店主が罰せられるのは当然としても、飲んでいる客は微妙な立場になる。所轄署が黙認しても、近隣住民や競合店が中央に通報してそっちが動いてしまったら摘発もありうる。

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 アルコールに対して当たりが強いので、タイは製品や銘柄の種類も少ない。日本のコンビニなどはタイとは真逆すぎて、酒好きには日本は天国だと思う。ビールの銘柄しかり、RTD、そのほかスピリッツ系や輸入物など、タイでは選択肢は少ない。

 日本だと5リットルのウィスキーなどがあるが、タイでは考えられないサイズだ。というのは、タイではアルコールが異様に高い。去年だったかに酒税改正があったので今はワインが安いのだが、ほかはちょっと高いという印象だ。特にベトナムなどインドシナ好きにはタイのアルコール飲料の値段が気になってしまう。ベトナムなんかは屋台だとソフトドリンクよりもビールが安い場合もある。その点では天国だが、種類に関しては日本の方がすごい。

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 アルコールはタイ産のビール以外はだいたいこうして印紙が貼られている。RTDだと蓋を覆うように貼ってあり、糊が側面についているから、瓶のまま飲むと口に入りそうで嫌だ。

 今はあまり見なくなったが、かつては輸入物のウィスキーなどには瓶の口に中ブタみたいなのがあった。あれはタイが指定しているのか、輸出元がつけている、あるいは輸出元の国で主流なのか。そのあたりはよく知らないが、あれがついていると一気に液体が出ないで、ぴゅっぴゅとちょっとずつ出る。当時の日本人の飲み仲間たちの間ではピヨピヨと呼んでいた。

 2000年の初頭はラチャダーのソイ6にあったディスコ「ダンスフィーバー」によく行った。90年代後半かやはり00年代に、タイ航空のコマーシャルでTOKIOの長瀬くんがディスコに行くシーンが放送されていた。下記の6分10秒から。

 ここが当時から2010年くらいまで人気だったダンスフィーバーだ。普通に行くとボトルで2000バーツくらい取られる。でも、安く遊ぶ方法があった。ディスコの駐車場にいるタバコ売りに頼むと券をもらえるのだ。その券はメンバーカードみたいになっていて、入口で提示するとウィスキーの無料券として使え、ミキサーを500バーツ分頼めば1本無料になる。大概5人くらいで行くし、500バーツ分以上は普通に注文するから、そのカードはホント重宝できた。

 ただ、銘柄がシーバスであるものの、絶対に中身をセンソン(タイの安いアルコール)に換えていたと思う。あるいは、金を払う客には本物を出して、ボクらみたいなしょうもない客にはセンソンに入れ換えたものを出していたのかも。いつも到着時点で酔っぱらっているから味なんてわからないし。

 なぜ入れ換え疑惑を持っていたのかというと、当時のシーバスは絶対にピヨピヨがあるはずなのに、たまにないボトルがあったからだ。だから、我々は中身はセンソンとかの安い酒なのではないかと思っていた。翌日、大体頭痛くなるし。

 我々は酔っぱらったタイ人や店側ともめたりなど面倒が嫌いなので、顔見知りのボーイを捕まえていた。チップをあげて手なずけておき、グラスが減れば彼がどんどんソーダ・コーラ割りを作る。当時はみんなゴーゴーバーの女の子に遊び方を教えてもらっていたので、飲み方もゴーゴーの女の子みたいな感じに、ソーダとコーラを半々で割ったウィスキーを飲んでいた。

 でも、たまにボーイがほかの席の女の子に夢中になっていて全然面倒を見てくれないときもある。そういうときは年下であり、かつナンパをしにせっせとほかの席に声をかけに行くなんてせず、ずっと席に居座るボクがみんなの飲みものを作ったりする。そのときにピヨピヨがあると思って勢いよくボトル傾け、大量にウィスキーを注いでしまうこともあった。

 でも、酔っぱらっているし、入れ直すのも面倒だから、そのまま友人にグラスを渡したりしたな。割合的にはウィスキー9.9以上で、ソーダとコーラが0.1以下。「なんか濃くない?」って言われるけど、こんなもんだよ、って返すと「そう?」なんて。酔っ払い同士どうしようもない。そんな思い出がピヨピヨにある。

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 さて、本題のアルコールRTDにはどんなことが書かれているのか。まず線で囲っているところを見ると、ここが警告文の主体であり、こういうことが書かれている。

・満20歳以下に販売してはいけない

・飲酒は運転能力を低下させる

・満20歳以下は飲酒をするべきではない

 タイ語というのはフォーマルな言葉を使うと文章が長くなる傾向にある。同時に、日本語とは違い表音文字のためにきれいに書くという概念がない。だから、フォントの幅が行ごとに違っていて、日本の出版編集者が見たらイラッと来るのではないだろうか。眩暈がしそうな文字列になっているので、ものすごく読みづらい。

 タバコのときはわりと害を言い切っている感じだったが、なぜかアルコールの警告文は最後の「満20歳以下は飲むべきではない」と禁じているわけではない。法的には禁じているはずなんだが、なんでだろうか。タイは多民族国家なので、いろいろな事情や宗教の関係から明確に禁止できないのであろうか。

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 缶タイプのRTDも同じようなことが書かれている。だから、タバコと違って警告文のバリエーションは少ないと見られ、ほかのアルコールも結局は同じことが書いてあるのでしょう。

 枠の外は製造者や輸入品の場合は輸入者などもある。また、容量、それから国際的なアルコール濃度の表示があるものもある。それは若者が好みそうな輸入物のRTDに多い。あと、アルコール度数か。そんな感じだ。

 タイのこういった食品表示は販売に際して許可制になっているらしい。だから、表示されている内容はすべて法令に則ったものとプラスして健康などに対してデメリットになることが書かれている。

 タイの伝統的な酒で、沖縄の泡盛の原型とも言われるラオカオというものがある。パッケージは基本的には瓶ビールの小瓶と中瓶の間くらいの大きさのガラス瓶で、ラベルは商品ロゴなどが表示される正面だけ。

 となると、警告文はそのラベル内に記載しないといけない。どうなるかというと、虫眼鏡で見ないと読めないくらいの大きさで、かつ幅も極限まで狭めている。最早読ませるためのものではないのかなというくらい。結局、法に従い認可を受けているけど、役人もあくまでも条件を満たしていたらゴーを出しちゃう感じなのかな。タイらしくていいんだけども。

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