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バンコク 抜け道の法則

 渋滞がひどいと言われるバンコクだが、意外と抜け道も多い。それもバンコクの道路事情や地理に精通していなくても、案外簡単にその抜け道を利用できる。運転経験者でないとわからない、バンコクの抜け道の見つけ方を紹介する。

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 まずひとつ言っておきたいのは、ボク自身はバンコクの渋滞がひどいとはあまり思っていない。2017年か18年に海外のウェブニュースでバンコクの渋滞が世界で1位2位を争うレベルでひどいのだと書かれてしまった。それがタイ国内でも広まって、バンコクの交通事情を嘆く声が出始めていた。

 しかし、ボクが初めて来た1998年、それから2007年以前はもっとひどかった。比喩ではなく、本当に1メートル進むのに1時間かかったり、信号の故障で一方向だけ1時間以上赤信号になっているとか、そんなことはよくあった。最近は信号故障はほとんどないし、1時間あればさすがにそこそこ進むことができる。ボクからすれば、過去と比較すると、今は快適なのだ。

 いずれにしても、日中のバンコク中心地は信号のシステムや道路事情、運転マナーの悪さと運転技術の未熟さで渋滞がそこかしこで発生している。それを回避するのは抜け道を使ったり、遠回りをすることだ。

 とは言っても、初めて通る場所だと抜け道を探すのは難しい。今ならスマホでマップを見ることもできるが、ネットのタイのマップは精度が決して高いものではなく、私有地に道が通っていたり、歩道やあぜ道が車道のように表示されていたりと信用性はあまり高くない。ましてや、バンコクは渋滞の発生メカニズムを知らない警官たちが、広域的に物事を判断せず、その場しのぎで突然一方通行にするなど、むちゃくちゃだ。

 それでも抜け道をみつける方法がある。それは簡単なことで、以下の画像のような標識をみつけるだけだ。

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 最近は親切になったので新設標識には英語表記もあって、ちゃんと近道と記されている。古いタイプだと英語がなかったりするが、いずれにしてもこの緑地に黄色の矢印、その下に抜けられる場所が出ている。抜けられる場所は通りの名称だったり、ソイの番号や名称が出ている。

 ときに長いソイ、入り組んだソイもあるが、それも問題ない。曲がらなければならない辻にこの標識があるので、それに従って進めばいいだけだ。よく同乗者に「バンコクの道に詳しいね」なんて言われるが、なんてことはない。この標識を見て走っているに過ぎない。

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 ところで。バンコクの住所は番地-ソイ-通り-地域-区-都-郵便番号で構成されている。日本とは逆になるのだが、街がそもそも大通りとソイで構成されているので、住所自体は非常に合理的だ。

 大通り、あるいは通りがタノンと呼ばれる。そのタノンから派生する小路がソイだ。ソイはタノン級に大きなものから、道幅数メートル、奥行き十数メートルといった小さいソイまで様々ある。

 大きなソイ、あるいは主要箇所、もしくは歴史的になにかあったソイや地主に力がある場合、固有の名称がつくこともある。たとえばスクムビット通りのソイ4はナナ、21はアソーク、ソイ55はトンローなどだ。

 ソイは基本的に起点から見て左側が奇数、右が偶数になる。起点から順番に番号が振られるので、必ずしも近い数字が向かい合うとは限らない。たとえば、スクムビット通りの105近辺でも向かい側は80台だったりする。

 この起点のルールがわかれば、初めてのソイでも奇数と偶数の位置関係を見ればどの方向が起点かがわかる。日本では上り・下りがあり、基本は中心地に向かう。本来は日本橋が日本の道路の起点なので、そちらに向かう方が上り、逆が下りだ。タイの場合は上り・下りはその通りの起点に向かうかどうかを指す。上りはカー・カウ、つまり入る方向という意味で呼ばれ、下りはカー・オーク、出る方向と呼ばれる。まあ、一般的にはあまり使われないかな。レスキューの無線などで事件・事故の位置関係を報告するときに使うくらいというのがボクの印象だ。

 タノン級のソイにはさらに小さなソイがある。トンローなどはトンロー自体がソイではあるが、さらにトンロー・ソイ10などトンロー内もさらに小さなソイに分かれるのだ。

 これまでこのソイの中のソイの呼び方は在住外国人の間では議論になったことがないのだが、下記の事件が昨年12月に発生し、突如「サブ・ソイ」という言葉が在住日本人界隈に登場した。

 それ以前からこの呼称はあったのかと思う。一部の在住日本人がそんな呼び方をしていたのだろう。とはいえ、浸透していた言葉ではない。というのは、Twitter内ではこの事件の際にサブ・ソイという言葉が出てきて、事件よりもこの単語に引っかかった人が多かったからだ。

 ちなみに、タイ人にサブ・ソイは当然ながら通じない。タイ人にとって、ソイはソイ、ソイの中のソイもソイだから、特にそういった呼び方はない。ただ、まったくないわけではなく、旧市街などの場合、ソイの中のソイはトロークと呼ばれる。外国人が歩き回るエリアではあまり見かけない言葉ではあるけれど。

 最後に話を戻すと、バンコク都はおそらく渋滞緩和などを狙って抜け道標識を立ててくれたのだろう。これによって、抜け道が一般化し、そっちが渋滞になることもしばしばだ。すなわち、抜け道を使ったからといって、バンコクの渋滞の呪縛から抜けられるとは限らないのだ。

 いわば、この標識に従って抜け道を使うのはギャンブルでもある。場合によっては正統的に大通りを進んだ方が早いときもある。これに関しては正直、バンコクの地理の知識と運転経験しかない。

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