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タイ人は1食の量が少ない

 何年か前、ベトナムはホーチミンの屋台で現地の若者と酒代について言い合ったことがある。彼は、ベトナムよりもタイの方が安い、と言うのだ。そんなワケがない。ベトナムはレストランでもビールが大瓶で1ドル程度で済む。タイの場合、コンビニで買う350ml缶が1ドル超だ。だから、飲食店で飲む場合にベトナムの方が安いなんて絶対にあり得ない。

 しかし、思うにおそらく彼は勘違いしている。というのは、ベトナムは酒代は安いにしても、食事代はタイと比較してそれほど安くない。たとえば麺類ひとつ見ても、タイは今40バーツくらいが相場だとすれば、ベトナムは6万ドン、すなわち3ドル、バーツに換算すると約100バーツになる。だから、トータルで見ると支払料金に大きな差がない。だから、ビールも安いと思い違いをしているに過ぎない。

 とはいえ、これには大きなカラクリがある。ベトナムの食事が高いのはその量が多いからだ。タイはひと皿の量がかなり少ないという特徴がある

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 これがタイのぶっかけ飯であるラートゲーンのひとつだ。2種類の食材を乗せているが、これで大体50バーツ前後か。見てわかるように、量が少ない。比較するものが写っていないのだが、日本のご飯茶碗の半分くらいなのではないか。

 クイッティアオ(米粉麺)の中にクイッティアオ・ルアというジャンルがある。これは水上市場などで小舟(ルア)から客に出していたものとされ、そのため小舟用の器として量が少ないという特徴がある。日本のわんこそばのようにタイ人もたくさん食べるのだが、それでも丼ひとつにひと口分くらいしか入っていないので、タイ人が食べる総量は結局それほど多くない。

 このようにタイ人は文化的に1食であまり多くの量を食べないようだ。あくまでもタイ人のことであって。決して東南アジア全般というわけではない。

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 というのは、隣国のカンボジアに行くと、とにかくたくさんの米を食べるという印象を受ける。タイと同じようにラートゲーンになるような炒めものやスープをおかずにたくさんの米を食べる。

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 ひと皿に来る米が少なくともタイよりは多い。カンボジア人はとにかくたくさんの米を掻き込んでいた。

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 ボクがカンボジアで食べた料理はそれほど種類は多くないが、タイほど辛いものがなかった。作り方、調味料は似たような感じで、親しみはあった。

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 とはいえ、洗練された印象は受けなかった。タイの方が食に関してはずっと上を行っている。カンボジア料理はまずくはないけれども、決しておいしいと喜べるものでもなかった。

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 カンボジア料理がタイ料理に似ていると感じたのはおそらく魚醤を使っているからだと思う。タイで言うプリック・ナンプラー(トウガラシとニンニクなどが入ったナンプラー)もあったし、厨房を覗くとちゃんと魚醤の瓶があるのがわかった。

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 ベトナムも1食の量が多い。コムタンとか言ったかな。タイで言うラートゲーン屋で、タイと同じようにバットに入ったおかずを指さしで選んでご飯に載せてもらう。タイと違ったのはその量だ。下記の画像のように結構ご飯が多いので、ボリュームがある。

 麺類のフォーもタイのクイッティアオの丼と比べて何倍も大きい。ベトナム麺類の器は日本のラーメン丼にかなり近いサイズと言っていい。冒頭のように、量が多いからこそタイの1食より値段が高いというのはあるだろう。

 ハノイ在住の友人に聞いたところでは、ベトナムはタイのように屋台から料理を持ち帰るということがあまりないのだとか。ベトナムも持ち帰り専門の屋台はあるが、そうでない店から持ち帰ることがあり得ないようだ。

 たとえばタイはどんな飲食店も持ち帰り用のビニル袋や箱を用意している。しかし、ベトナムは必ずしもそうではないらしい。サンドイッチのバインミーなどは別として、先のぶっかけ飯だとかフォーは持ち帰らないようだ。タイなら普通に持って帰るのに。

 あと、ベトナムでは会社員や工場の工員などは昼休憩に自宅に戻って家族と食事を摂る人も少なくないのだとか。これはカンボジアでもあるということだった。タイではそんな話はほとんど効かない。そして、彼らは自宅でたくさんの米を食べるとのだという。

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 カンボジアとベトナム、そして日本と比較すると、タイは1食の量がとにかく少ない。インスタント麺のサイズも日本の半分くらいの量しかない。ただ、あくまでも1食の量が少ないだけだ。タイ人も1日にはそれなりの量は食べる。どういうことかというと、小分けにたくさん食べるのだ。

 日本では考えられないが、たとえば会社員は昼食後から夕食の間にちょこまかなにかを食べていたりする。ボクの前職職場ではデリバリーのピザを注文した強者もいた。

 ある意味では効率のいい栄養摂取方法と言える。以前のタイは貧しかったという事情もある一方で、効率のいい方法で食事するので肥満が少なかった。最近はいろいろなものを食べるようになったので、肥満が社会問題化しつつあるけれども。

 タイは食費が日本よりも安い。とはいえ、どんどん物価が上昇している。15年前はラートゲーンは2種類盛りで25バーツくらいが相場だった。10年くらい前に30バーツになり、今は50バーツが当たり前である。だから、旅費も屋台を中心にすれば一見安く済みそうなイメージだが、若い人は1食ひと皿では到底足りないので、結局そこそこの金がかかるであろう。

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