見出し画像

タイ人の老後に移住したいラノーン県【後編】

 前回はラノーン県の市街地に近い辺りを紹介した。今回は郊外のスポットなどを見てみよう。ラノーンは魅力のある県で、食事もおいしいし、自然もいっぱいで、山も海もあれば、外国もすぐそこだ。ただ、いかんせん雨が多い。行く時期を誤ると、毎日雨雨雨で結構しんどいかもしれない。

 それでも居心地のいい場所なので、もし行く機会があればぜひ足を運んでほしいところだ。バンコクからならプーケットなどビーチリゾートに行く途中にあるので、そこで何泊かしてもいいかもしれない。

画像1

 ラノーンにはバンガロー形式の宿泊施設が多い。山が多いので、山中に、そして小川の畔にバンガローを作ってそこに泊める。

 ラノーン市街地から(たぶん)最も近いのが「バーン・ナイモン」だ。ツリーハウスが特徴的な宿泊施設だった。

画像2

 取材時のウェルカムドリンクはなんと雨水だった。ラノーンはタイで最も雨が降り、山と川と海が近いからか空気が濃く、水もきれいだ。

画像3

 部屋の横には小川が流れる。このときは雨が降っていたので水が濁っているが、普段はきれいなのだとか。そんな川で泳ぎ、ベランダに寝転べばフィトンチッドを存分に浴びられる(かもしれない)。

画像4

 ここで狩っている犬も人懐こくてかわいい。小川でほかの宿泊客と一緒に泳いだりしていた。

画像18

 前回、市街地に一番近い温泉としてラックサワリンを紹介した。ほかにもいくつか一般でも入れるように整備された温泉がある。その中でも人気なのがポーンラン温泉だ。

 この温泉はラックサワリンと違い国立公園内にあるため、入場料がかかってしまう。しかも、日本人は外国人料金だ。そして、金を取るわりには湯温はラックサワリンより低く、日本人には物足りない。

 とはいえ、ポーンラン温泉はエンターテインメント性が高く、家族連れには向いている。ラックサワリン同様に小川が横にあるのだが、ポーンランの方はその川で泳ぐことができるからだ。水深も最大で1.8メートルもある

 公園内に自噴する温泉は6ヶ所あり、上流の屋根つき風呂が最も熱い45℃になっていた。その横の石段から小川に降りると天然のドクターフィッシュが素肌を突いてくる。バンコクでフィッシュスパに行けばここの入場料以上はかかるので、その点ではお得かもしれない。

画像6

 ラノーン県は温泉や川が汚れることを懸念して、すべての源泉で温泉卵を禁止している。ただ、このポーンラン温泉の食堂だけ唯一許されているそうだ。45℃の源泉に実に18時間も卵を浸す。そこまでして食べたいものかというと・・・・・・。

 2017年8月末に群馬県の沼田温泉と水上温泉がラノーン県と温泉地発展のための意見交換をしたと報道されている。そのときの記念碑がこのポーンラン温泉にあった。とはいえ、その碑は隅っこに小さい。こういうところが日本はちょっと弱い。大々的にアピールしてこそ発展に繋がるのではないだろうか。

画像7

 ポーンラン温泉の近くにはプーカオ・ヤーがある。草の山という意味で、ラノーン県の観光事務所も推しているスポットだ。しかし、ここはいわばシンガポールのマーライオンだとボクは思う。世界3大ガッカリのひとつとして、マーライオン、札幌の時計台、このプーカオヤーを入れたい。

 プーカオ・ヤーは文字通り、草だけの小さな山だ。ウィンドウズの草原を思わせるところなのかもしれないが、雨が降っているときは話にならない。もしかしたら乾期の晴れた日なら見る価値があるかもしれないが。まあ、そう期待はできない。

 そんなプーカオ・ヤーから振り返ると、国道を挟んで山の上に滝が見える。タイでも珍しいシチュエーションの景観だ。

 とはいえ、言われないと気がつかないほどであるし、実際に滝の前まで行ってみても、なんとも言いがたい気持ちになる。画像は前回の冒頭に貼った。滝があるンガウ滝国立公園(地図内はガーオ国立公園になっている)にある長い坂道をただ上り、滝の直下まで行けばそこそこに迫力はある。が、わざわざ行く価値があるのだろうか。

 しかも、ここも有料で外国人は100バーツもかかるし、駐車代を30バーツ払わないといけない。ますますおすすめ度が下がる。ただ、チケットはポーンラン温泉と共通なので、同日内であれば半券を見せればもう一方にも入場可能だ。

画像8

 ラノーンは海にもおすすめスポットがある。海洋公園となるレムソン国立公園もあるし、その近辺には陸続きなのに船でしか辿り着けない僻地の村も存在する

 レムナウ村はムスリム100人程度の住民で構成された小さい村で、陸路で来ることができない。この村が主催するホームステイを通さなければ来られない。

 村民以外が来ることのない砂浜もある。村から船に乗り、近くのマングローブまで行く。そこには今にも折れそうな木の細い細い、長い桟橋があった。冒頭の画像がそれである。

 足下に不安を覚えながら徒歩で渡り、森を抜ける。すると、突如として開けた原っぱに出くわす。耳を澄ませば遠くで波が聞こえる。うなり声を遮る小さな林を抜けたら、そこにはどこまでも続く白いビーチがあった。間違いなくここはラノーンの最果て

画像9

 ホームステイのツアープログラムでは民家に泊まり、朝は漁や貝獲りに出かけ、昼は漁船の操船や海水浴を楽しめる。

 ヒジャブをまとった女性たちが、ここで獲れた魚介類で料理を作ってくれる。南部料理や魚介のガパオなどのタイ料理で、海鮮はとにかく新鮮でおいしい。潮風と穏やかな波の音を聴きながらの食事は心も癒やされる。

画像11

 ラノーンには先の漁村のようにイスラム教徒も多い。その中で、ローティーもよく見かける。バンコクだとデザート系の甘いローティーが多いが、ここではちゃんとして料理としてのローティーがあった。クレープも日本だと生クリームのスイーツというイメージだが、フレンチなどでは食事としてのクレープがあるように、タイ南部で軽食としても楽しまれている。

画像12

 ラノーン県は海を隔てて、ミャンマーの最南端、コートーンに隣接している。タイ人の場合はパスポート不要で入国でき、外国人はパスポート持参で条件つきで日帰り入国が可能だ。

 ただ、タイ側は正式に出国するので、場合によっては帰りのフライトの日程を考えたり、リエントリービザなどを取得しないといけない。ラノーン県のイミグレーション事務所もあるが、ここはミャンマー人労働者で恐ろしいほど混雑しているので、バンコクなどで事前に取得することをおすすめしたい。

画像10

 ミャンマー本土最南端の町コートーンに渡るには、ラノーン市街地の外れにある漁港に隣接した船着き場に向かう。ここが出国窓口になる。コートーンの住民が買い出しや仕事でラノーンに来たり、タイ人はカジノに行ったりするようで、案外活気がある。

 船着き場からミャンマーへはルアハンヤオ(尾長船)の乗合船で向かう。取材時の料金はひとり100B(外国人料金)だった。ここで一度パスポートの出国スタンプをもらい、出港後にチェックポイントでさらにパスポートチェックが行われる。

 チェックポイントはタイ出国時はイミグレーションの事務所だと思う。帰りの場合、ミャンマー人が乗船している船だとタイ海軍のチェックポイントに寄ることもある。

画像13

 コートーン着後はおんぼろのミャンマー・イミグレーションに入る。外国人なんてほとんどいないので、ここはわりとすんなり済む。スタンプと同時にビザ料を支払う。ビザ代はタイ人は30バーツ、それ以外の国籍は10ドルだった(取材時)。

 ただし、入国条件があり、ここから入国した場合はミャンマー滞在は1日のみしかいられない。また、38キロ圏内までしか行けない。つまり、コートーン以外には行けないということだ

 そもそも、パスポートを入国審査官に預ける必要があるので、ほかに行きようもないのだが。出国時に引き取りに来るのだが、タイの入国審査窓口が17時までなので、それに合わせてミャンマーを出国しないと行けない。そう考えると、遅くとも16時前にはコートーンを出港したいところだろう。

画像14

 ラノーン県人の気質もいいが、コートーン人の気質もいい。タイ語はそこそこ通じるが、せいぜい50%くらいか。英語なんかは30%も通じなかった。

画像15

 ちなみに、コートーンはタイ語読みで、日本人などはコータウンと呼ぶ人もいる。

 そんなコートーンはタイに近いとはいえ、海を隔てるからか異国情緒があった。こんなに近いのにタイとは常識も違う。そんなおもしろさがあった。かといって、1泊以上滞在したいかというと微妙なほど辺鄙な場所なのだが。

画像16

 コートーンの観光スポットをいくつか紹介しておこう。

 この金色の像はバインナウン王像だ。チェンマイやアユタヤを攻撃した人物で、タイでは当然ながら敵として描かれ、ミャンマーでは英雄として教科書に記載される。

画像20

 ここはビクトリアポイントと呼ばれる祠だ。ミャンマーの本土最南端で、つまり、この画像を撮っている瞬間、ボクが最もミャンマーの南にいた男となる。この祠に描かれる女神(画像で言うと向かって右側の緑のベールを纏う女神)はミャンマーの国土を表すという。

 ほかにも観光スポットは地味だがいくつかあり、たとえばピードーエー・パゴダはコートーン最大級の寺院としてみんな足を運ぶ。パゴダ先端には7からっとのダイヤがあるのだとか。

画像18

 その国に来たら、その国のビールでしょう。コートーンの丘の上にあったレストランでビールを飲んだ。快晴だったらなおいいのだが、ここもラノーンと気候は変わらない。

画像19

 ミャンマー料理は脂っこいとはいうが、ボクにとってはそれほど悪くはなかった。ビールに合うものが多く、嫌いではない。

画像19

 ラノーンの旅はこのように、県内のスポットを楽しめる上、外国にも行けるのがおもしろい。タイの場合、多くが飛行機で出入国するだろう。ラオス、カンボジア、マレーシア、ミャンマーにいくつ陸路の国境ゲートがあるが、ほとんどが橋を渡ったりなどで越境する。しかし、ここはタイでも珍しい、海を渡っての越境だ。そういった体験もできるので、ラノーン旅行がおすすめなのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?