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日本の薬師如来・タイ(中国)の薬師如来

 2019年秋、29年ぶりに日光東照宮に行った。ここまでくれば川の水が透き通っているという、タイにはない自然が見られるということを知っていたのもあるし、滞在先の最寄駅から切符1枚で行ける路線であるということもあった。なにより、というか行くことを決めてからあとでわかったのが、東照宮の中にある薬師堂、鳴き龍で有名なお堂が薬師如来を祀っているという事実もまたここに行く意味があると感じていた。ボクはなにかと薬師如来に縁があって・・・・・・。

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 思いっきり絞りを失敗して白飛びしているが、画像は東照宮の見どころのひとつである陽明門だ。この奥に眠り猫があって、さらにその奥の階段を上ると、徳川家康公の墓所がある。薬師堂はこの陽明門を正面に見て右の方だ。

 薬師堂は過去の神仏分離の関係でいろいろと呼び方がいろいろあるが、それはここでは関係ないので割愛する。日光東照宮は入場料がかかる。薬師堂はその料金に含まれているが、管轄が違うために券が別途必要になる。入場券に半券がくっついているので改めて買う必要はないが、その半券をなくすと入れないようなので注意が必要だ。

 家康公は遺言によって久能山に埋葬され、日光山に改葬されて、東照大権現として祀られている。そして、この東照大権現の本地仏が薬師瑠璃光如来、すなわち薬師如来だ。

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 日光東照宮は今現在、コロナ禍の影響で観光客がほとんどいない。境内があまりにも静かで、どこにいても鳴き龍と拍子木の音が聞こえてくるほどだ。薬師堂もほぼ貸し切り状態でゆっくりと見学でき、鳴き龍も拍子木を打つ係の人とほぼ1対1で話を聞ける。

 2019年に行ったときは並ばされて、前のグループが終わったら入るみたいな感じで、係員も数をこなす感じでゆっくりと説明はされなかったが、今回はだいぶゆっくりめで、以前とは違った話もあった。そのひとつが、薬師堂内の薬師如来像は本尊とは別に干支の数が祀られているのだが、これは全国的に珍しいのだとか。

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 ボクが薬師如来に縁を感じるのは、タイで厄払いをしたときに祈ったのが中国の神、太歳神だったからだ。この太歳神の本地仏もまた薬師如来になるのだそうだ。

 ちなみにだが、宗教などに詳しいわけではないので、あくまでもさらっと調べてボクが解釈している内容である。専門家が見たら違うとなるかもしれないが、ボクはそう思い込んでいろいろと巡っており、今回はその中の話である。

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 像の前に掲げられているタイ語名はタイ・スワイ・ラオ・イアになっている。しかし、一般的にはタイ・スワイ・イアの方が通じるようだ。あるいはこの太歳神は60種類あるらしく、タイ・スワイ・ラオ・イアはそのうちのひとつということなのかもしれない。

 いずれにしても、太歳神はこの中華廟だけでなく、タイ全土の中華廟にも祀られている。毎年年末年始近くになるとタイ字紙が中華系タイ人に向けた記事で、中華廟への参拝方法を紹介する内容を掲載する。そのときにもよく太歳神が取り上げられている。

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 ここは茨城県にある酒列磯前神社である。さかつら・いそさきと読む。茨城県のパワースポットが好きな人は知っている、結構有名な神社だ。

 創建が856年というのだから、今年で1165年にもなる。これだけ古いもの(場所)が現役で地元民を始めとした人々に親しまれているというのはタイにはないので、やっぱり神社というのはいいなと思うわけで。

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 酒列磯前神社が有名な理由はこの亀だ。宝くじのご利益があると信じられ、この亀を撫でると宝くじに高額当選するのだとか。日本のテレビでも取り上げられたほどだ。

 この神社に祀られている神様は少彦名命(すくなひこなのみこと)だ。小人の神様であり、大己貴命(おおなむちのみこと)と共に現れ、国造りに励んだ神とされる。

 この少彦名命は酒や温泉の神様としても知られる。つまり、薬の神でもある。ということは、だ。仏教における本地仏はやっぱり薬師如来ということにもなる。神はいろいろな形で地上に現れるのである。

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 この酒列磯前神社はちょっとした丘の上にある。参道の正面は長く林の中を歩いてくるのだが、横から入る道もあり、そこからは漁港が見える。マップで見ると磯崎漁港だ。

 階段の向こうに漁港と海が広がる風景はなかなか絵になる。残念ながら行った日は雨だったのであんな感じだったが。近くには砂浜もあって、夏は海水浴客でにぎわうのでしょう。

 実はこの少彦名命には伝説があって、義兄弟である大己貴命と国造りをして常世の国に帰ったが、856年にこの地に戻ってきたとされる。その場所は、ここから車でおよそ10分くらい、海岸沿いに南下した大洗だ。

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 その舞い降りたという場所は聖なる岩として、鳥居が建てられている。ちょうど天候が悪く、海も荒れていたのでなんというか荘厳な雰囲気になっていた。

 この鳥居の前にある丘の上に大洗磯前神社がある。ここは大己貴命が主祭神で、少彦名命は配祀神として祀られている。酒列磯前神社はその逆である。つまり、この少彦名命は大己貴命は義兄弟であり、酒列磯前神社と大洗磯前神社は共に兄弟神社のような、セットで参拝するような場所でもある。

 少彦名命の本地仏が薬師如来というのは、東照宮同様、これもまたのちのち知った話だ。だいたいどこかに行くときはなんとなく向かっていて、しかも特に下調べもしないという、ライターにしては悪い癖があるもので。

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