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フライドチキンはなぜ南部のハジャイ発ばかり?

 タイのフライドチキン「ガイ・トート」はタイ国内ならどこにでもあるもので、気軽に食べられるし、値段も高くない。もち米と食べればそれなりにちゃんとした食事にもなる。ヤキトリ同様にどの国にもフライドチキンはあるものだが、ガイ・トートはKFCや日本のから揚げとも違う。おそらくナンプラーを調味料のひとつに使うからだとは思う。

 そんなガイ・トートは大概「ガイ・トート・ハートヤイ」と銘打っているか、店名がこれになっていることが多い。ハートヤイは日本ではハジャイとも呼ばれる。タイ南部の中では街が大きく、ちょっと行けばパダンベサールというマレーシアの国境に着く。ソンクラー県内なので、ぎりぎり深南部に入らないことから、爆弾テロ事件などはたまにしか起こらない地域だ。

 ガイ・トートはタイ中どこにでもある料理なのに、どうしてハートヤイが一番有名なのだろうか。

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 ガイ・トートのおいしい店は本当においしい。ボクの中で一番のガイ・トートはチェンマイの旧市街にある屋台のものだ。そこは下記で一度書いた。

 この素手が云々は置いておいても、まず衣に香草やスパイスが入っていて、本当においしい。こんなにおいしいガイ・トートはほかにはないと思う。

 とはいえ、そうガイ・トートってよく食べるものでもないけれど。一時期はカオマンガイを食べるときにカオマンガイ・トートにしたり、あるいは両方入っているトゥーインワンにしたり。

 どうでもいいけれども、普通のカオマンガイとガイ・トートのふたつが入ったものをトゥーインワンって呼ぶようになったのっていつごろなのかな。2in1とも表記されず、タイ文字で書かれるので、ホント、日本語で言えば「トゥーインワン」と表示する店が多い。記憶では2000年代の頭にはこの呼び方はなかった。当時はパソム(混ぜる)と言うと2種類が載ってきた。

 ガイ・トートはやっぱり皮がパリッとしていて、肉はジューシーというのがいい。KFCだと中がパサパサになっていることがあるが、ガイ・トートはだいたいジューシーだ。ただ、その分油ギッシュで量は食べられない。カオマンガイ・トートもそうだけれども、こういう油っぽい料理は年齢のせいか量を食べられなくなってきたもので。

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 さて、そんなガイ・トートがなぜハートヤイを謳うのか。実際にハートヤイに行っても、そこら中にガイ・トートの店があるわけでもない。むしろバンコクより少ないという印象だ。

 再びどうでもいい話だが、なぜハートヤイをハジャイと呼ぶのだろうか。昔のタイの国名であるサイアムが、日本ではシャムという発音になったのと同じように、昔の日本人が発音できなかった可能性はある。最近でもジイさんとかには冷たい水のナームイェンが言えなくて、ナムジェンっていう人がたまにいるし。でも、近年は現地の呼び方に忠実にする傾向があるのに、ハートヤイだけはハジャイっていまだに残っている気がする。

 本題に戻ると、諸説ある中ガイ・トートがハートヤイを謳うのには理由があるらしく。それは、30年くらい前にハートヤイの市場で鶏肉販売をしていたワンさんとトーンカムさん夫婦が始まりなんだとか。

 鶏肉店を営んでいても、バンコクと違い全部を売り切れない日もある。そんなときに夫のトーンカムさんが売れ残りの肉を独自に編み出したスパイスに漬け込んで、それを自分たちで食べていたのだとか。そのうち、それすらも食べ切れずに腐りかけてしまったことがあり、苦肉の策でから揚げにし、店頭に出した。それがおいしいと評判になった。

 夫妻は未明から明け方まで(タイの市場はだいたい日が出る前に始まり、昼前に終わる)は鶏肉を売り、その後余った肉をから揚げにした。評判もよくなってきた中、夫妻はみんなの誉め言葉が香りのことばかりであることに気がつく。それでスパイスを改良して香りがよく、カリカリな衣になるように努力を重ねた。

 これが話題となり、外がカリッとして、香りがいいものがガイ・トート・ハートヤイの特徴になった。メディアにも取り上げられ、そのうちガイ・トートはハートヤイということになったようだ。

 レシピを特に公開しているとか、特許的なものを申請しているとかではないため、今では誰もがガイ・トートの店にハートヤイと冠するようになった。情報ではタイの一村一品運動のOTOPのアンテナショップでガイ・トート・ハートヤイのスパイスがあるらしいが。

 結局、バンコクで見かけるガイ・トート・ハートヤイはオリジナルではないということのようで。

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