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バンコクから日帰りで行ける地方都市の旅【サムットプラカン県】

 タイ好きも何度も足を運んでいればそろそろ行くところがなくなってくるのでは? そんな中で案外行っていないのがサムットプラカン県なのではないかと思う。特にパクナムと呼ばれる、いわゆる県庁所在地となる地域は、日本なら横浜のような位置関係で、タイ人の認識もほぼバンコクというイメージがある。そのため、旅行者もそこに行く理由がないと判断し、足を運んだことがない人ばかりになる。今回はそんなサムットプラカン県のパクナムを中心にその魅力を見てみよう。

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 サムットプラカン県はバンコクの主に南側で接する県だ。チャオプラヤ河の河口にあり、そのため中心地、すなわち県庁所在地は河口を意味するパクナム(正確にはパーク・ナーム)と呼ばれる。古くはアユタヤ王朝時代に港が建設されたことが始まりで、その後近隣諸国がフランスの統治下に置かれる中でフランス海軍と交戦したりなど、歴史的な事件も起こっている。

 冒頭でサムットプラカン県に行ったことのない旅行者ばかりという書き方をしたが、正確には「パクナムに行ったことがない人」が大半で、サムットプラカン県に行ったことのない外国人入国者は逆に少ない。というのは、タイの玄関であるスワナプーム国際空港がサムットプラカン県内にあるからだ。

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 現在、パクナムへはバンコクの中心地を走る高架電車BTSで行ける。スクムビット線の沿線にあるので、乗り換えなしで行けるほど便利になった。中心地はまさにパクナムという駅で、下車後通りを南下していけばサムットプラカン市街地に入ることができる。

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 一般タイ人にとって「サムットプラカン」と言うと「パクナム」を指す。これは他県も同じで、県とつけずに県名を言うと、基本的には中心地を指す。

 バンコクは特殊な行政地域になっているので、都内は「区」で分かれている。タイ語ではケートという。一方、他県は「郡」で分かれる。アンパーと言い、区も郡も地名がつく。

 県庁所在地のある郡はムアンと呼ばれる。どの県も同じだ。だから県とつけない県名を言うと、それはムアンを指していて、「サムットプラカン」もムアンを指す。サムットプラカン県のムアンは別に「パクナム」という呼称もあるというわけだ。

 そして、そんな一般的なタイ人にはサムットプラカンもしくはパクナムはバンコクの一部という認識が強い。たとえばタイ政府の統計などにおいて県別に数字をまとめている一覧を見ると、サムットプラカン県、ノンタブリ県、サムットサーコーン県、ナコンパトム県、パトゥムタニー県を中央部に入れるケースと、別途「パリモントン」とに分けることがある。パリモントンは簡単に訳すとするとバンコク郊外、もしくは首都圏といったところか。だから、一般的にパクナムはバンコクの一部分と思われている。

 しかし、首都圏とはいえ上の画像のようにBTSの終点であるケーハ駅まで行くと地平線が見えそうなほど土地が広く余っているし、パクナムからチャオプラヤ河を渡った側はマングローブの林がどこまでも広がっているほど自然が豊かでもある。

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 BTSで見ると、BTSサムロン駅からサムットプラカン県内に入る。サムロン駅にはインペリアルという地元民向けのデパートがあったり、その向かい側の商店街は昔ながらの街並みになっている。

 少し先には3つの頭を持つ象の銅像が立つエラワン美術館もある。この辺りは外環道が走っているので、タイ全土に移動しやすい。車を持っていれば、暮らすにはかなり便利な場所かもしれない。

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 BTSパクナム駅を越えていくと、終点駅近辺からワニ園に行ける。自称世界最大のワニ園だそうだが、かつてはタクシーなどで行くしかなかったところ、このようにBTSでも行けるようになった。ただし、ケーハ駅からは徒歩圏ではないので、結局ここからタクシーを使うが。

 ワニ園はワニしかいないわけではなく、ほかの動物もたくさんいる。ワニ園は通称で、正式名称は「サムットプラカン・クロコダイル・ファーム&ズー」なので、動物園でもある。ワニのショーだけでなく象のショーもあるし、トラと写真を撮ったり、餌づけもできる。その距離感は日本では体感できないほどだ。

 ほかにも終点近辺にはタイの歴史的建造物や観光名所をミニチュア化したエンターテインメント施設もある。ボクは行ったことがないけれども・・・・・・。

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 サムットプラカン市街地はこのような様子だ。いわゆる「ごく普通」のタイの姿なのだけれども、どちらかというと旧市街のニュアンスを感じる。バンコクで言えば中華街のヤワラーなどのような「昔のタイの都会」の空気感が残るのだ。

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 この市街の雰囲気は他県のムアンも同じような雰囲気だ。ナコンラチャシマーもチェンマイもウドンタニーも大体こんな感じなのである。

 そう聞くと、つまらない風景に思えるかもしれないが、バンコクの隣にそれがあるというのがおもしろい。わざわざ遠くに行かなくても、電車で30分も揺られればこのようにタイの地方を堪能できる。だからサムットプラカンがおすすめスポットになるのだとボクは言いたい。

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 パクナムはすなわち河口という意味である。本当のチャオプラヤ河の河口はもう少し下流にあるのだが、このパクナムには漁港もある。そのため、実は市場の海鮮も素晴らしい。

 上記でパタヤの海鮮市場を紹介した。ここでは市場で購入した魚介類を調理してくれる店があるので、観光客でも楽しめる。

 しかし、パクナムの市場は基本的には地元民のための市場なので、そういった調理しれくれる店が見当たらない。もしかしたらあるかもしれないし、近隣の食堂に持ち込んで調理してくれる可能性はある。ただ、いずれにしてもパタヤのように調理してもらったものを食べる公園やビーチが近くにないので、このあたりにおもしろみはあまりない。

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 このように地元民の市場なので、野菜なども売っている。そして、市場は朝である。このパクナムも朝が特に活気があっていい。

 今さらの話だが、ボクがここまでパクナムを推すのは、ボク自身の住まいがサムットプラカン県内にあるからだ。自宅からパクナムまでは車で15分くらいか。パクナムの市場にはそう滅多に行かないが、海鮮を自宅で食べるときにはここに来て魚介類を物色することもある。

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 パクナムが地方感を出す様子のひとつにこの三輪自転車がある。この三輪自転車タクシーはタイ語でサームロー・ティープと呼ぶ。

 サームローは三輪で、トゥクトゥクも人によってはこう呼ぶ。プーケットのトゥクトゥクは軽自動車だし、トゥクトゥクが必ずしも三輪ではないからだろう。そして、エンジンつきとなしで区別するためか、蹴るという意味のティープで、サームロー・ティープと呼ばれる。

 サームロー・ティープは先のBTSサムロン駅近辺でも見かける。また、パクナム以外ではノンタブリ県、カンチャナブリ県など、いろいろな地域の、一部のエリアで利用される。

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 先の市場の北側、BTSパクナム駅すぐ近くが本当のサムットプラカン中心地になる。川沿いにある県の敷地があり、その中や周辺に役所が集中する。郡役場や警察署、裁判所やイミグレーションだ。

 また、この辺りから見える対岸にパゴダが見える。タイ語ではジェーディーというのだが、ここはサムットジェーディー寺院で、サムットプラカンの県旗にも描かれている。

 この敷地では毎年10月の末日、あるいは11月の頭の1週間、近辺の道路も通行止めにして祭が開催される。近くの寺院に関係した祭のようなのだが、出店が大量に出ているので、かなりおもしろい。

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 今回紹介する祭の画像は2019年度のものだ。

 上の画像の奥にタワーが映っている。だいぶ前に完成しているのだが、いまだにオープンしていない。噂では2022年に一般公開となるらしい。パクナムを上から眺めるとどんなものなのか、非常に期待のできる施設である。

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 タイでは移動式遊園地がごく普通にある。特に地方では当たり前の光景だ。こういったすぐに崩壊しそうな観覧車や、チープさの抜けないお化け屋敷、円筒の中の壁を走るバイクショー、漏電により火花を散らしながら子どもを乗せて走る豆汽車など、見どころは尽きない。

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 パクナムの祭はこういった雰囲気で、夕方6時前後から深夜まで続く。日本の縁日みたいな感じで、ワクワクしてくる。

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 実際に、日本の縁日のように射的だとか、様々なイベント屋台も目白押しだ。ビンゴ大会会場だってある。ただ、景品がしょぼいぬいぐるみだったり、著作権絡みで日本に持ち帰れないだろうものばかりであるが。

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 飲食関係も充実している。最近のこの祭にはムーガタ(韓国式焼肉のタイのオリジナルアレンジ)屋台なども出ていて、軽食からがっつり系まであらゆる食事が楽しめる。

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 こういった昔ながらのアイスキャンディーもある。要するにタイの伝統菓子もたくさん出ているのだ。

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 このようなサムットプラカンとは関係のない、どこか地方の料理も堪能できる。上記の画像はアントーン県(うろ覚え)のハチミツかなにかを塗っているガイヤーン(タイ式ヤキトリ)だ。

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 こんなブタの丸焼きもある。肉は100グラム単位の価格を提示しているので、好きな量を買う。重さで指定するか、払う金額で量を決める。

 飲食系の出店には和食的なものもあるし、韓国料理風のものもある。とにかくなんでもあるので、まさに日本の縁日の雰囲気がそのままだ。昭和的な匂いすら漂ってくる。

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 最近は見なくなってしまったのだが、パクナムのイミグレーションオフィス近くにこのイカ焼きの屋台があった。

 このイカ屋台は祭とは関係なく、毎日夕方にこの場所に出ていた。先のように、サムットプラカンは漁港でもあるので、イカが妙に新鮮でおいしかったりする。あれだけ人気だったのに、なぜいなくなってしまったのか。

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 BTSパクナム駅をひとつバンコクに戻ると、チャオプラヤ河の側にタイ海軍の士官学校がある。その反対側は海軍博物館だ。庭には水上飛行機やこういった軍用ボートが飾られているのですぐにわかる。

 しかし、ここは無料とはいえ展示物はそれほど興味深いものではない。それであれば、パクナムから対岸に渡って、要塞跡地に向かうべきだ。

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 上のマップを見ると、パクナムの市場近辺から対岸のサムットジェーディー寺院の方に渡る渡し船が出ていることがわかる。これに乗って対岸の船着き場に行き、そこからタクシーなどでプラジュンジョムクラオ要塞に向かう。コツは往復でタクシーをチャーターすることだ。要塞から船着き場に戻る足がないからだ。

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 この要塞には「パクナム事件」と呼ばれる、フランス海軍と交戦したときの砲台や、この要塞の名所にもなっているチュラロンコーン大王の銅像がある。

 また、日本人が注目するべきはこのメークロン号の静態保存だ。この軍艦は日本製である。戦中に日本で作られ、タイ海軍に納入され、戦後は練習感として使われていたそうだ。艦内に入ることができるので、日本の下手な博物館よりもずっと楽しめる。

 この船の横には海軍直営のシーフードレストランもある。わりと安めの料金設定で、かつおいしいので人気がある。

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 パクナムは今BTSの延伸部開通で行きやすくなった。朝出て、ざっと観て、夕方にはバンコクに戻ることができる。日帰りの距離感としては最適だ。夕方になればパクナムの役場広場の前からこういった夕焼けを拝むこともできる。バンコク旅行の際にはサムットプラカンも訪問先候補にぜひ入れてほしいところだ。

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