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変なタレをかけるならナンプラーがいい

 タイ料理というのは基本的に調味料の味だと思う。要するに味が濃い。だからこそわかりやすい味になり、世界中で愛される料理となる。和食でも子どもが好きな料理はやっぱり味が濃い目のものではないか。わかりやすいからだ。

 そんなタイ料理にも味が薄めのものもある。素材の味のままのものというか。そんな料理には絶対と言っていいほど「ナムチム」がついてくる。ナムチムとはタレあるいはソースのことだ。ナームが水などの液体を意味し、チムはちょっとつけるといった意味である。焼肉で使うタレとか、寿司で言えば醤油のような存在と言えばわかりやすいか。

 そして、タイ料理は一見臨機応変に見えて、意外と保守的な面も強い。そのため、ナムチムも基本的にはこの料理にはこれといった感じに決まっている。それがおいしければいいのだが、どうしても口に合わないものもあり。

 そういったものをナムチムにするなら、ボクはナンプラーだけの方がシンプルでいいと思っている。

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 薄味ではないが、たとえば鶏肉を載せたご飯のカオマンガイだ。これにはタオチアオという、大豆を主原料にした調味料で作ったナムチムを出すケースが多い。味噌に似ているという人もいるが、空心菜炒めに入っていると言えばわかる人の方が多いのではないか。

 揚げた鶏肉バージョンのカオマンガイ・トートは甘い蜜にトウガラシが入ったナムチム・ガイを出されることも多い。ちなみに、カオマンガイの場合、子どもには黒蜜っぽく甘いシーイウ・ダムを出してくれることもある。

 ほかにもエビの炭火焼きにはトウガラシとナンプラーを中心に作ったシーフードソースのナムチム・タレ―、南部のムーサテにはトウガラシ入りの酢とか。ナムチムはどれも味つけが店によって少し違うけれども、根本部分はほとんど同じだ。

 そして、それを好まないので違うものにしてもらおうとしても、頭のよろしくない料理人だと理解ができなくて、ほかのナムチムを用意してくれないこともある。たとえば米粉麺クイッティアオは薄味になっている。しかし、これもテーブルの調味料で味つけをすることが前提だ。薄味なのは最終的に客が好みの味に仕上げるから。ソムタムも客の注文に従って作るなど、タイ料理には臨機応変さも垣間見られる。しかし、一方で、これと決まった道から外れることも嫌うのだ。

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 タイ式というか、中華式のチャーシューは肉の周りが赤くなることから赤いブタという意味のムーデーンがある。タイでは一般的な料理で、ご飯に載せて食べる。三枚肉の唐揚げムーグロープだとか、グンチアンという甘いソーセージを合わせて載せることもある。

 この画像を見るとわかるが、ナムチムはシーイウ・ダムで、そのほかにご飯に赤いソースがかけられている。中国式の香草が効いたソースで、とろみがある。なにより、とても甘い。

 ボクはこのタレが大嫌いで、基本的にご飯にムーデーンを載せて食べることはない。しかし、場合によっては食べられるものがなくて、これしかないということもある。

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 そんなときはボクはソースをかけないでもらう。大体不思議そうな顔をされるが仕方がない。このときは簡単に「マイ・ラート・ナーム」と言えば通じる。液体をかけないで、である。

 一般的にはアヒルを焼いた肉を載せたご飯カオ・ナー・ペットもよくわからないソースをかけられる。そのときも注文時に「マイ・ラート・ナーム」と言って、なにもかけていない状態にしてもらう。

 そして、このときに頼むのがタイの万能タレである「プリック・ナンプラー」だ。ナンプラーだけでも甘いソースよりは100倍もいい。しかし、それだけだと味気ないので、トウガラシやニンニクが入ったプリック・ナンプラーにすればよりおいしく食べられる。とにかくこのタレはなんにでも合うというのもこれにしてもらう理由だ。

 だからボクはこのムーデーンもカオ・ナー・ペットもプリック・ナンプラーで食べるのである。ちなみにチャーハンも同じだ。タイ式チャーハンのカオパットの専属タレは基本的にはプリック・ナンプラーである。

 もうひとつ、ちなみにを言わせてもらうと、プリック・ナンプラーを教えてくれたのは初めてのタイ人彼女である。もう20年前の話だ。プリック・ナンプラーとの出会いについてはボクは妻に一度も話したことがない。

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