見出し画像

【2020年】タイ入国者数の推移【1~6月】

 あっという間に2020年も後半に入った。いや、やっとと言うべきか。2020年が始まって2ヶ月くらいは世界がこんなことになるなんて誰も思いもしなかった。特に東南アジア各国は新型コロナウィルスに敏感に反応し、各国政府かかなり強硬な手段に出て、今現在も鎖国状態が続く国ばかりだ。そのおかげもあって、タイは国内の新規感染者のゼロ推移が続き(新規感染はすべて国外からの帰国者で、強制隔離中に発覚している)、規制緩和が始まった。7月に入って、いよいよタイは外国人の入国者受け入れを再開しようとしている。

 そんなタイだが、実際、2020年上半期でどれくらい観光客が減ったのだろうか。タイのイミグレーション警察――日本の出入国在留管理庁(旧入国管理局)に相当する部門から入国者の統計が毎月発表されているので見てみた。

画像1

 2020年の中国旧正月は元旦が1月25日だった。この時点でタイでも新型コロナウィルスが中国で蔓延し始めていることが報道されていたが、それ以前のSARSや豚インフルエンザ、鳥インフルエンザなどと同じように、脅威ではあるものの、人ごとのように感じていた。

 そして、1月下旬あるいは2月初頭にタイ国内でも感染者が確認され始めていたが、基本的には中国人、あるいは中国で感染したタイ人であった。それも2月中に一時的に新規感染が減少した。そこでタイ国内は安心ムードになって油断が生じたためムエタイの興行でクラスターが発生するなど、2月下旬から3月上旬にかけて危機感が高まることになる。

 そして、3月下旬から入国の制限がかかり、かつ非常事態宣言が発出された。こうしてあっという間に外国人に対する規制が強化され、入国者数もがくんと減ることになる。

画像2

 しかし、統計を見てみると、意外とたくさんの外国人が往来している。欧米に対する入国制限はかなり早い段階で厳しくなっていたし、元々、欧米からタイへの渡航者はそれほどの人数ではなかった。統計で国籍別に見てみると、例年トップは中国人の数で、ほかに上位に隣国のマレーシアやラオス、空路では韓国、そして日本と続く。

画像4

 1月の統計はまだウィルスが広まる以前なので、例年の人数とほぼ同じくらいだった。むしろタイへの訪問者が年々増加しているので、2020年1月度の入国者数は前月比、前年比よりも多かったくらいと言っても過言ではない。

 今年1月の中国人の入国者数は105.5万人だった。中国は共産主義なので商ルールが一般的な国とは違う。タイが渡航先として人気なのは、中国政府の後押しもある。そして、中国政府は旧正月後に国外への団体旅行を禁じたので、あっという間に激減した。1月に100万人超だった統計が2月は17万人、3月は6.6万人に減り、4月5月は4000人を切っている。

 日本人も例年通りであり、1月は通常通りとしても、2月でさえそれほど入国者数の減少は見られなかった。しかし、入国規制が始まった3月には3万人をちょっと切るまでに減っている。

 これらの数字は上記のタイ・イミグレーション警察のホームページから抽出したものだが、規制しているわりには意外と入国者数が多い気がしないだろうか。

 実はこの統計にはカラクリがあって、物資を輸出入する船舶、航空機の乗務員が含まれている。経済的にも鎖国するわけにはいかないので、運送関連従事者の一時的な出入国は規制対象外だった。そのため、先の統計には空港や港に到着して、トンボ返りする人も含まれているのだ。

画像5

 こういった船員や航空機乗務員を除いた場合の人数を見てみる。中国は世界中に工業製品を輸出しているわけで、タイもその輸出先のひとつである。中国製品をなくしてはタイの生活は成り立たない。そのため、中国人船員などの往来はかなり多めだったようだ。

 先の中国人の2020年1月入国者数である105.5万人から船員などを差し引くと、同月に入国したのは104万人ということになる。2月には16.6万人台にまで一気に減り、5月に到ってはたった1人しかタイに入国した人がいない。

 この数字は入国許可の分類を基準に渡航目的別に分類されている。これには観光客、ビジネス関係での渡航、政府関係者、医療関係者が含まれる。もちろんこんな時世なので観光客は基本的には入ってこないので、どの国の人数もかなり少ない。

 韓国も同国企業が多くあるにもかかわらず、5月の入国者数はたった1人になる。中国と韓国を比較対象にすると、日本はまだ多い方だ。しかし、マレーシアやラオスの方が圧倒的に入国者が多い。これは国境は封鎖されているものの、隣接している国境近辺の街の商売の関係で出入国者数が多いと見られる。

画像3

 7月から日本人に対しては労働許可証を所持している者、タイ人配偶者がいる者などに限定して入国を許可している。すでに入国した人もいるが、簡単な話ではないようだ。

 まず、航空券を買うには実質的に在日タイ大使館を経由することになる。というのは、ビザとは別に大使館から入国許可証を発行してもらう必要があるからだ。それがないと航空会社も日本人を乗せることができない。

 さらにタイ入国には先の許可証のほか、72時間以内に発行された検査陰性証明、海外旅行傷害保険のうちかなりグレードの高いものが必要になる。

 タイ入国後はタイ政府指定のホテルで14日間の缶詰になる。これは有料で、名乗りを上げているホテルが高級ホテルばかり。このため、今タイに渡航するには、入国するだけで数十万円がかかる見込みだ。

 ここ数日、日本は新規感染者が数百人となっていることはご存知の通りでしょう。タイだけでなく東南アジア各国からすると異様な光景で、アジア圏内で日本はかなり厳しい目を向けられる。昨日あたりからSNS上ではタイ入管が海外旅行傷害保険の約款に新型ウィルスにも対応することが明記していないと入国拒否をするという噂も立っている。普通、約款などに病名は明記されないのだが。

 日本人に対する警戒心が強まっているために、対応が再び強硬になっているのだ。こう見ると、今しばらくはタイへの入国は厳しいものとなる見込みで、今後の入国者数の統計を見ても、かなり低い次元で数字が推移することだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?