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【世界共通?】東南アジアで学んだ「値切り交渉術」

 最近は東南アジアも「定価」が一般的になってきたが、場所によっては今も値札がなく、支払い前に値段交渉が必要になる。定価が基本の日本人にとってはこの交渉が案外難しい。しかし、この値段交渉のコツを掴むと、買いものが楽しくなってくる。「買う」という行為そのものが楽しくなるのだ。

 ここではタイ歴22年のボクが東南アジアで体得した「値切り交渉術」を紹介したい。どこでも通じるというわけではないが、これを基本に買いものの仕方を憶えて自分流にアレンジしてもらえれば、きっと東南アジアの値札ナシ店でも買いものがおもしろくなること請け合いだ。

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値段交渉の流れ

 まずは大雑把に買いものの流れを見ていこう。タイのローカル店やベトナムの旧市街などの値札がない店では概ね、こういった流れで買いものが進んでいく。

1.商品を見る/みつける

2.自分の中でその商品の価値(目標額)を考える

3.値段を訊く

4.言い値と目標額を比較

5.目標額を再設定

6.値段交渉を開始する

7.落としどころを探る

8.店側が最終価格を提示

9.納得がいくなら買い、行かないなら立ち去る

10.こちらの言い値になる

1~3 交渉前の準備段階

 当然ながら、ほしいものがあるかどうか、だ。東南アジアでは昔で言うウィンドウショッピングは最近の話で、基本的には必要なものを買うための行動が「買いもの」である。

 だから、なんともなしに店に立ち寄って買いものをしようという行動はほとんどなかったと言っていい。そのため、客側に予算があっての来店であるということが前提だからこそ値札がなかったわけだ。

 つまり、東南アジアでの買いもの、すなわち値切り交渉は事前になにを買うかをあらかじめ決めておき、かつある程度その商品やその地域の物価を勉強していなければならない、ということでもある。

 といっても、我々は外国人なので、相場などはわからない。ボクの交渉術は、相場もわからない中でもなんとか適正価格以下で買いものができるようにするための簡単なステップでもある。

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 まず重要なのは、最終的に買う値段を決めるのは自分であると強く自分に言い聞かせておこう。納得がいかないなら買わないという腹づもりでいることだ。自分がそれをどれだけほしいかを心に問い、いくらの価値があるかは自分で決める。ここがブレないための大切なポイントだ。

 いずれにしても、まずは店側がいくらで売っているのか。そこも大切である。ここで値段が自分の決めた金額よりも低ければ交渉の必要はない。そこで買ってしまえばいい。もしかしたらもっと安いかもしれないが、思ってたより安いなら気持ちはすでに得しているからだ。コツとしては、買ったあとにほかに店で値段を聞かないことだ。がっかりすることもあるからだ。

 ただ、そうは行かないのが東南アジアの商人たちだ。基本的に思っているほど安くないことのほうが大半だ。百戦錬磨の彼らはまずはかなり高い値段をふっかけてくる。交渉ありきだからというのもあるし、高く売れるに越したことはないので、始めは高め設定にする。

 ここで怯んではいけない。前述の通り、商人は交渉するつもりで値段を言ってきている。我々もここから作戦を立てていくことになる。

4~5 交渉前の目標額設定

 言い値と自分の目標額がどれだけ乖離しているかをまずは考えよう。

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 その前にここで注意しておきたいことがある。それは値段交渉は悪ふざけでしてはいけない、ということだ。相手も商売であり、生活がかかっている。冷やかしが一番嫌がられる。交渉決裂しない限り、値切りを始めたら買う覚悟を持っていなければならない。交渉を始めるということは、すなわち「値段が合えば買う」という意思表示なので、だからこそ相手も値段交渉に応じるのだ。

 また、東南アジアでは、特にその日1番目の客が買いものをしないというのはその日の売れ行きが悪いというジンクスがあると信じている商人が多い。だから、特に午前中などは値切り交渉が成立しやすい反面、冷やかしに対して非常に厳しい。

 さて、値段が予想とあまり離れていない場合、そもそも相手が相場に近い値段で言ってくれる「いい人」である可能性、自分の予想が本当の相場に合っている可能性、一方で自分が決めた相場が高かった可能性がある。

 このあたりをはっきりとさせる方法はひとつだ。ほかの店にも当たることだ。1軒目では値切り交渉をせず、言い値だけ聞いて別の店に行き、同じ商品の値段を訊く。何軒か回れば相場(と言っても言い値だが)がわかってくる。

 これを元に目標額を再設定しよう。東南アジアは問屋街的な雰囲気のエリアが多いので、似た店は同じ場所に集まる傾向にある。数県回るのは容易い。

6~8 値段交渉開始

 ここからが値段交渉である。ただ、本番は実はこの次の章になる。まずはここで値段をすり合わせていく。

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 言い値の相場を確認して打ち出した目標金額は商品やその地域の物価、商人の感触などで臨機応変にしていきたいところだ。とはいえ、簡単に決める方法もある。店の言い値と自分の目標額の半額のうち小さい方を交渉の開始値段にするのだ。

 半額スタートにすることで交渉の余地が生まれる。相手は当然、そこに納得しないので、お互いに落としどころを探り合うことになる。相手には徐々に下げさせ、こちらも譲歩して少し上げていくという譲り合いですり合わせをする。

 ただ、最終的に自分の許容範囲を超える金額にまで譲る必要はなく、ある程度で譲ることをやめる。こうして譲り合いを何度か繰り返せば、最終的に相手が最終価格を出してくる。だいたいここまで来ると商人も手強い我々にイラッとして、キレ気味に最終価格を提示するだろう。

 この価格に納得がいけば買うべきだ。東南アジアでは「客は神様」という概念はないので、これ以上踏み込んだ場合、向こうはこちらに買う意志がないと判断して交渉を中止するだろう。交渉決裂、つまり、追い出される。だから、最終価格が出た場合、OKなら買う。

 そして、もしOKでないのなら・・・・・・。

9~10 値切り交渉を成立させる方法

 ある意味、ここが値切り交渉の本番である。もし店側の最終価格がイマイチというのであれば、奥の手を繰り出そう。それは秘技「立ち去り」である。相手に値段決定権がなく、さもこちらにあると見せかける技だ。

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 もちろん、全然納得のいかない値段が最終価格であれば本当に立ち去るしかないのだが、ここではあくまでも交渉の術として立ち去る素振りを見せる。

 この立ち去りを出したとき、もし本当に彼らの限界値、つまり正真正銘の適正価格である場合、彼らは追ってこない。しかし、我々は一度立ち去ってしまった以上戻るわけにはいかない。

 ただ、相手の反応は我々に収穫があったと言える。本当の相場がわかったわけだ。だから、別の店でその価格を参考に交渉すればいい。だいたいどこも同じ品揃えだから問題ないだろう。

 一方で、もし呼び止められた場合、多くのケースでまだ値下げできる余地がある。ここまで交渉が進んでいると大幅な値下げは期待できないが、こちらの希望価格が通るのであればそれになるし、さすがにそこまではいけないという場合では、本当の本当である最終価格が出てくる。

 ここでもうひとつ注意が必要なのは、最終段階でもっと下げられそうだと粘りすぎないことだ。たとえば1000円目標でこちらが1000円まで提示してしまったあとに、いけそうだからと990円と下げるのはルール違反である。

 これが東南アジアにおける買いもの値引き交渉のテクニックである。こういったプロセスが面倒な人には大変だが、現地の人との戯れだと思うと、こういった交渉はとてもおもしろい。買いものは楽しんでするものなのだと、改めて感じたりするのだ。

 言語に不安を持つ人もいるだろう。言葉なんか必要ない。ボクだってタイならともかく、ベトナムやカンボジアではそこの言語ができないし、市場などでは英語のできない商人も少なくない。しかし、こういった値段交渉は言葉ができたって、結局は電卓の上で数字を打っていくだけなのだから、数字だけ読めれば問題ないのである。

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