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救急救命系慈善団体「サワン・ボリブーン」で功徳

 タイにはレスキュー系の慈善団体がいくつかあるが、最も古いのはボクが所属している華僑報徳善堂、通称「報徳堂」だ。タイ語ではポーテクトゥングと呼ぶ。しかし、今は大きな団体がいくつか出てきていて、むしろ報徳堂より大きいのが通称「サワン」になる。チョンブリ県を始め、東北地方は主にサワンが活動の中心になっているほどだ。そんなサワンの9番目の支部、パタヤ拠点の「サワン・ボリブーン」に行ったので、タンブン(功徳)した

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 サワンに触れる前に以前書いた報徳堂の成り立ちと活動の紹介記事を貼っておく。タイのレスキュー系慈善団体あるいは公共救急車の生い立ちなどがこれでわかると思う。

 タイは国民の大半が仏教徒で、来世のために徳を積みたいと考えている。そういった想いとマンパワーがいろいろな活動に利用され、救急救命の世界もそのひとつになる。むしろ、タイの救急救命ではタイ人の徳を積みたい気持ちに因るところが大きい。公共救急車の配備も早急に進めるべきではあるが、こういった慈善団体の存在と活動もまた一般市民の功徳に必要で、なくなることはないだろう。

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 サワンは明るいといった意味があり、ロゴの中心には漢字で「明」と書かれる。ただ、サワンの成り立ちははっきりと公表されている部分が少なく、職員でさえ歴史をあまり知らない。

 報徳堂と運営も全然違うようだ。報徳堂はバンコクの中華街に本部があり、各県に支部を置く。支部は直営というよりは、各県のボランティアの代表が権利を借り、県内の活動を管理している。いずれにしても、本部が方針を決め、全支部の活動を統括している。

 一方サワンは各支部が独立しているのか、なんなのか。そのあたりがよくわからない。まず、タイ国内にバンコク都内も含めて現在52の支部がある。報徳堂と大きく違うのが、各支部で名称が違うことだ。名称の一部に「サワン」が入るが、「サワン・ボリブーン」というと、パタヤのサワンだけを指す。たとえば、ブリーラム県のサワンは「サワン・ジャンヤタム」、チャイヤプーム県は「サワン・クンタム」など、正式名称が各支部で違う。

 レスキュー系慈善団体は中華系ばかりで、サワンも例外ではない。そのため、サワン全支部に漢字の名称もある。しかし、タイ語の正式名称が違うということは、同じく漢字も違うわけだ。第1事務所であるチョンブリ県シーラチャー郡は「明燈善壇」、第2は同県バンブン郡で「明心善壇」、第5支部のラヨーン県は「明福善壇」、そして第9支部になるパタヤは「明滿善壇」と、タイ語呼称同様に52支部すべて違っている。

 サワン・ボリブーンの職員によると、サワンは報徳堂のように本部はなく、あくまでも事務所に番号がつけられているだけ、なのだとか。実際、第1事務所はシーラチャー郡だが、活動の始まりはバンブン郡らしい。このあたりは報徳堂もそうなのだが、創設時期と慈善団体としてタイ政府の認可を得た時期が違うので、拠点の番号の違いはありえる。

 つまり、サワンはおそらく運営は支部ごとに独立していて、あくまでもそれぞれはグループのひとつということなのではないかと推測する。

 サワンの起こりは1941年に遡るようだ。この年にチョンブリ県内でマラリアやコレラが大流行し、たくさんの死者が出た。そのときに、中華系住民のサワン・クンジャック氏を始めとした有志たちが死体を回収して、葬儀を行ったことが始まりとされる。死体回収が起源という点は報徳堂に似ている。

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 チョンブリ県内で始まった慈善団体なので、チョンブリ県内にはサワンの支部がいくつもある。その中には無縁仏の墓もあり、そのひとつがチョンブリ県内で一番の心霊スポットとも言われている。ボクはこのパタヤの支部がそれなんだと思うが、実際はどこなのだろうか。これは別途調べて紹介したい。

 そんなサワン・ボリブーンの本部隣は中国廟になっている。仏教施設ではあるが、タイ式ではなく中国式の寺院だ。

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 2階が本堂になっていて、お参りセットを1階で受け取り、2階でお祈りをするという手順だ。

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 報徳堂も同じだが、元々死体回収が活動の始まりなので、サワンでの功徳とはすなわち棺桶などを作る金を喜捨することになる。報徳堂やタイ第2のレスキュー団体と言われる義徳堂(ルアムガタンユー)はいくらでもよかったのだが、ここはセット料金になっていた。

 無縁仏の棺と死体を包む布のセットは250バーツ、死体に着せる服(死に装束)は150バーツ、棺と死に装束で400バーツだ。一応一番下には好きな金額でもいいと書いてあるが。

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 このように伝票のようなものに住所や名前などを書く。あとで2階でお参りするときに燃やしてしまうのが普通だが、高額の喜捨の場合、こういった伝票を確定申告で提示すれば控除される。だから、タイでは貧乏人はこういった団体などでボランティアとして働き徳を積み、金持ちは金を出して徳を積む。そして、金持ちはその功徳が節税にもなる。

 サワン・ボリブーンは海鮮市場のナグルア市場に近い。パタヤ観光の際に海鮮を楽しむついでに立ち寄ることもできる。駐車場も広いので、入りやすいし、近隣にはちょっとした食堂も何軒かあるので、市場に向かう前に功徳して、腹ごしらえして、というコースがおすすめだ。

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