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「タイは治安が悪い」は本当か?

 タイは治安が悪いというが、実際に犯罪被害に遭った人はそれほど多くない。だから、中にはタイは安全だと思い込んでしまい、ついつい油断してしまう。

 ボク自身も深夜に人気のない場所をひとりで平気で歩いたりしていたので、だいぶ危機管理がおろそかになっていたと思う。つい先日、バンコクで日本人男性がタイ人強盗に襲われてニュースになった。正直な話、タイでは日常的に起こる事件ではある。しかし、襲われたのが日本人だったことで、少なくとも在住日本人にはショッキングな事件だった。

 ボク自身もこのニュースには強い衝撃を受けた。実際に自分も夜中に歩いていた場所だったので、あるいは被害に遭っていたのはボクだったという可能性だってある。冷や水を浴びせかけられたかのような事件だったので、ニュースサイトでも記事にさせてもらったほどだ。

 そう考えると、やはりタイの治安は悪いというのが概ねの事実だ。殺人事件の認知件数は10万人あたりの発生件数は日本の十数倍とも言われる(100万人あたりだったかもしれない)。日本と同じで、危ない地域に行かなければ問題は確かにない。外国人が多いエリアなら、歓楽街であっても比較的安全とは言える。

 しかし、先の強盗事件は外国人居住者が多いエリアなので、結局のところ、どこも危険がつきまとう。要するに、我々外国人居住者たちはライオンやハイエナの群れの上に架けられた平均台の上に立って、タイは安全だと勘違いしてしまっているに過ぎない。平均台だって幅が狭いので結局危険だし、落ちれば助かるかもしれないし、危ないかもしれない。少なくともバンコクはそういう世界なのだ。

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 殺人や傷害、それから麻薬関連の事件も多い。最近は麻薬の売人がタイ中にはびこっていて、容易に手に入るという。モノクロにした上の画像はオーバードース(薬物の過剰摂取)で錯乱した若い女の子を救急隊員が病院に運ぶところだ。現在のタイの情勢不安を引き起こした元凶とも言えるタクシン・チナワット元首相やその派閥が政権を握っている時期は取り締まりが強化されるので鳴りを潜めるが、それ以外の政党が与党になっていると、麻薬が世にはびこり、こういったオーバードース、そのほか麻薬に関連した事件・事故が相次ぐ。

 そういった時期は麻薬や覚せい剤の値段もかなり安くなる。極端な言い方だと、アルコールで酩酊するよりも覚せい剤で酩酊した方がコストパフォーマンスがいいくらいである。実際に麻薬常習者に現在の価格相場を聞いたときに思わず聞き返すほどの価格相場だった。

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 交通事故もバンコクは多い。運転免許証の取得が日本では考えられないほど容易で、正直タイ人の運転スキルの平均水準はかなり低い。20年くらい前までは永久免許があったので、一度取得してしまえばもう更新の必要がない。法令が変わっても、積極的に調べていなければ、アップデートされないまま過ごしていることになる。

 社会全体がこのレベルなので、交通マナーも悪い、法令遵守の精神も低い。警察さえ見ていなければなんでもありといった様相なので、事故が多発する。さすがにバンコクの日中は渋滞がひどいため、危険な交通事故は起こりにくい。とはいえ、大通りの通行可能域が時間帯、曜日、場所によって違う。

 たとえば、日本人が多く暮らすスクムビット通りは、東の方では片側4車線だが、西に進むと途中で中央分離帯(高架電車BTSの橋脚)を越えて片側6車線:2車線と不規則になる。これに気がつかずに道路を横断したら、見ていない方向から突っ込まれるということもありえる。

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 バイクの事故も多い。バンコクだとレンタルバイクはあまりないが、バイクタクシーを利用する人は少なくない。これだけ運転マナーが悪いので、バイクタクシー自体も危ないし、車側がまったくバイクを見ていないことも多い。それから、タクシーの乗客がうしろを見ずにいきなりドアを開けてバイクが巻き込まれることもある。

 このように、身体に危害が加えられてしまう事件・事故は少なくないのがタイだ。普通に生活、あるいは観光している分には危なくないのだが、いつ巻き込まれるかわからない。また、安心しだしたころ、つい危ないところに踏み込んでしまい危険に巻き込まれることもある。

 先にも述べたが、タイを歩くときは平均台の上を歩いていると思うことだ。安全に見えても踏み外すことがあり、落ちたらライオンたちの餌食になるかもしれないことを覚悟していなければならない。

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