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センセーブ運河ボートに乗って

 バンコクは渋滞もひどいし、交通網があまり発達していないので、移動がやや不便というデメリットがある。その分タクシーは安いのだが、運転手の質がよくないので、結局不便に変わりはない。しかし、一方で日本にはない移動手段が日常的にあるのもおもしろい。だ。

 チャオプラヤ河を走るエクスプレスボートや、運河を駆け抜けるボート・サービスがある。今回はバンコクの中心地から外を東西に抜ける「センセーブ運河ボート・サービス」を見ていきたい。敬遠する人は徹底的に乗りたがらないが、旧市街に行くには最も便利な乗り物だとボクは思う。

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 センセーブ運河ボートはバンコクの中心を絶妙に外して東西に走る。たとえばアソークやトンロー、エカマイと言えば日本人も多く住み、かつ働いているエリアだ。しかし、どちらかというとスクムビット通り沿い、つまり高架電車のBTS沿線が最も賑やかな場所である。この運河ボートの船着き場はスクムビットから北に数キロ行った場所にあるので、わざわざ乗るには微妙ではある。

 センセーブ運河はバンコクの旧市街から、タイの玄関口であるスワナプーム国際空港をさらに東にずっと行った、チャチェンサオ県にあるバンパコン河まで続く運河だ。1837年にベトナムとの戦争に備え、物資輸送用に14年かけて造られた運河なのだとか。その際に南部のムスリムを奴隷代わりに使ったとかで、センセーブ運河沿いにはモスクが多くある。

 この運河ボートはそんなセンセーブ運河の中心部分の18キロを朝5時半から夜8時半まで往復している。本当かどうかは不明だが、1日に4万人利用者がいるのだとか。

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 サービス区間の中央船着き場はプラトゥーナームだ。日系デパートの伊勢丹のほぼ斜め前にある。この船着き場とひとつ西側のサパーン・フアチャーン船着き場はBTS駅から徒歩圏内なので、アソークとかトンローと比べれば乗り継ぎやすい。

 この中央船着き場から東には22の船着き場がある。アソークやトンロー、エカマイを経て、プラカノンの先で別の運河に合流し、そこからはラムカムヘン通りやラムカムヘン大学に行ける。その先はタイのAKB48であるBNK48が拠点を置く、ザ・モール・バンガピにも行ける。未確認だが、さらにそこから11キロほどサービスが延長され、ミンブリーまで行けるようになるらしい。

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 プラトゥーナーム船着き場から西へは旧市街へと繋がっていく。5つの船着き場があり、サパーン・フアチャーンはBTSラーチャテーウィー駅に近く、また雑居型商業施設で人気のMBKも徒歩圏内になる。オリジナルTシャツなどが安く作れる服飾市場のボーベーにもダイレクトに行ける。

 西の最終地点はパンファー・リラート船着き場だ。この船着き場の近辺には黄金の仏塔が丘の上に経つワット・サゲーウがあるし、カオサン通りや王宮なんかも目と鼻の先になる。

 また、目の前には上の画像の白い橋「泪橋」がある。普通に車が通り、それほど大きな橋ではないが、この橋は重要文化財に指定されているようだ。ボクにとって泪橋は南千住にある泪橋だが、この橋の由来は日本のとは全然違う。日本は刑場の前の橋だが、この泪橋はラマ5世王(チュラロンコーン大王)を偲び涙する人の姿を残した橋なので、別名が泪橋(サパーン・ローングイハイ)だという。

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 運河の水は汚く臭う。また、ハイスピードで走るので、その汚水が顔にかかったりなど、結構ハードだ。2017年3月にはエンジンが爆発するという事故が起こった。70人が乗船していて、軽傷58人、重傷2人の事故だった。

 この事故を受けて政府は運営会社に対し船の改善などを言い渡している。そのため、最近は多少、船がきれいになった。それでも先の汚水のリスク、事故の怖さもあって、日本人はあまり使わない。

 しかし、渋滞なく旧市街まで行けるので、ボクはカオサン方面に行くときはこの船を利用する。効率のいい乗り換え方法は、BTSで伊勢丹が近いチットロム駅か、BTS国立競技場駅、あるいはラーチャテーウィー駅まで行き、徒歩で船着き場に行き、パンファーでバイクタクシーなどに乗る。これが一番早くて便利だ。

 料金も中央船着き場からパンファーまでは10バーツ(だったはず)だ。この安さもまた利用価値が高いと思う。

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 乗降時は注意が必要だ。胴体の長い船は水の流れなどによって頭か後部から寄せて停まる。そのため、到着直後は足下の隙間が広いときがある。そんなときは慌てて降りず、少し待ってから乗り降りしよう。船頭も横長のミラーでちゃんと乗降を見てくれているので、焦ってはいけない。落ちたところで誰も責任を取ってもくれないのだから、落ち着いて乗り込むようにしよう。

 そして、乗り込んだらロープや柱などにしっかり掴まり、素早く座るようにしたい。揺れているので、転落の可能性があるからだ。

 乗客席は船のタイプによってはかなり狭い。近くで降りるならば真ん中に座らないようにしたいところだ。ただ、そのためには目的の船着き場が右舷と左舷のどちらに発着するかを憶えておかなければならないが。

 それから、左舷か右舷の端に座った客にはある義務が発生する。それは、汚水よけのブルーシートを持ち上げることだ。特に屋根の支柱近辺には引っ張る紐があるので、船が走り出したらそれを引っ張ってブルーシートを持ち上げてあげないといけない。外国人といえども、そのルールに従う必要があるので、その点だけ忘れないようにしたい。

 それでも汚水が顔にかかるのだから、改善の余地がありすぎるのだけれども。

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