見出し画像

オペラ・オーディションの新しい形。NYIOP Anonymous Audition Project

今回は、最近私が参加したとあるプロジェクトについて書きたいと思います。

突然ですがみなさん、ブラインド・オーディションという言葉を知っていますか?

「カーテン審査」とも言われるこの選考方法は、オーケストラのオーディションなどでその公平性を保つため、広く使われてきました。例えば、誰かの門下生だからと、他の審査員に忖度することを防いだり、年齢や性別などで、音を出す前から先入観を持たなくさせる目的もあります。最近では、器楽界で人種や性差別をなくすためにも重要になっていると言えるでしょう。

長年、この方法はオペラや声楽の世界では使われてきませんでした。オペラのオーディションでは演技や表情も演奏の一部であるため、それを見えなくしてしまってはしっかりとした審査ができないとされていたためです。また、オペラ歌手は役者でもあるため、外見も大きな選考要素として、重要視されてきました。

しかし昨今の人種差別を見直す世の中の動きに合わせ、オペラ界でもマイノリティの作品を取り上げたり、キャスティングの透明性や公平性を見直す動きがアメリカを中心に出てきています。

劇場やコンサート幹部の多くを白人が占める欧米のクラシック界、特にオペラの業界では我々日本人もマイノリティに入ります。アジア人に対する差別を受けた留学生や音楽家も少なくないのではないでしょうか。

そこで企画されたのが、今回私が参加したNYIOP Anonymous Auditionというプロジェクトです。(Anonymous=匿名)

画像1

日本を含め、コロナ禍の影響が特に強い欧米では、多くの音楽活動がオンラインに移行しており、レッスン、コンサートの多くがリモートで行われていました。それに合わせ、オンラインでのオーディション・コンクールも既に多く行われています。

このオンラインの特性を活かし、これまでニューヨークやベルリン、ロンドンなどの都市で、様々な歌劇場やエージェントの合同オーディションを開催してきたNYIOPという団体が、zoomを使った初の試みであるオペラ界のブラインド・オーディションを開催しました。

参加者はzoomに入る時点で名前も伏せられ、顔も隠されます。多くのコンクールでネックとなる年齢制限もなく、学歴や音楽歴を書いたレジュメも、審査終了まで公開されません。

この方式が、真に差別を取り除き、公平な審査が望めるか、それはわかりません。結局はキャスティングに委ねられますし、平等なキャリアなどあり得ません。しかしこうした、新しい方式が取り入れられたことは大きな一歩ではないかと思います。

さて前置きが長くなりましたが、このオーディション、私も最終の15人のファイナリストに選ばれまして、オンラインのFace Reveal Concertに参加することとなりました!
このコンサートのコンセプトは、これまで全く顔や名前が明かされていなかった出場者が、曲の中で徐々に素性(?)を明かしていくというものです!

YouTubeで3/14、日本時間午前2時よりライブ配信されます。深夜ですので、興味のある方はアーカイブでぜひご覧ください。私を始め、多くのアーティストが「おうち」スタイルでの参加となりますので、音質・画質について最高のものを保証できるかどうかはわかりませんが、演奏後に短いトークなどもありますので是非、お時間ある方はご覧になって下さい(English Only)。私の出番は最後から2番目です🤗

曲目は、2018年ロシア・ナショナル管弦楽団来日公演でプレトニョフ氏と共演して以来、私にとって大事なレパートリーな一つである、チャイコフスキー『イオランタ』より ロベルト公爵のアリア「私のマティルダに誰が比べられよう?」です。

このNYIOPでは、年間通じて様々なオーディションを開催しています。今回のように完全オンラインの機会は、今はまだ少ないかも知れませんが、若いアーティストの皆さん——特に留学中の方などは、是非チェックしてみて下さい。私も、今の欧州のエージェントと知り合うきっかけはここからでした。

※ヘッダー画像は過去のものです。(シカゴ・リリック・オペラの専属歌手オーディションより)

最後まで読んで頂きありがとうございます! 是非サポートご検討下さい。動画作成など、様々な企画や音楽活動の資金にさせて頂きます☆