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野良デザインの蒐集

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本来の用途の枠を超えて使われる道具たち。街で出会った匿名の創意工夫「野良デザイン」の蒐集をテーマに、街を歩くことがちょっぴり楽しくなるような記事を投稿しています。
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2024年1月の記事一覧

野良デザイン#183|ペール缶のバリカー

野良デザイン 街を散策すると、本来の用途を超えて活用される工業製品に出会うことがある。それらを、路地に生息する「野良な」デザイン成果物と捉え、道具の可能性や、生活のリアルを探る試みである。 時に、飼い猫よりも野良猫の方が、猫らしい生き方を見せるのだ。 住宅地の一角に置かれた自動販売機。その赤い側面を守るように、2本のコの字状のバリカー(BarrierとCarを組み合わせた造語:車両用のバリヤー)が設置されている。 それぞれのバリカーを、セメントで満たした2つのペール缶に差

野良デザイン#182|牛乳パックのハンドル

勝手口の脇に置かれた2つのゴミ箱。丸と四角のプラスチック製の筒には、いずれも頂点に把手が成形された蓋が被せられています。 小さな把手が持ちづらかったのか、把手には折り畳まれた牛乳パックが、蓋の開閉の補助具として備え付けられています。 主に針葉樹のパルプを原料とする厚手の紙に、さらに耐水加工を施した加工紙でつくられた容器。その丈夫な直方体を折りたたみ、既存把手の幅に合わせて端部を折込み、ビニール袋で保護。ビニールテープで、ゴミ箱の把手に固定されています。 ビニールテープは

野良デザイン#181|ベンチのフェンス

微笑みの国タイ。共働きの家庭が多いからか、タイでは夕食を屋台で食す外食文化が深く根付いているようだ。バンコク近郊の主観道路沿いには、マーケット会場が設けられ、大量のテント屋台が軒を寄せ合い、夕刻の賑わいを静かに待つ。 飛行機が離陸できそうなほど広いマーケットの敷地には、駐車場が備えられ、黄色い腰丈ほどのフェンスの群れが、車両や人の動線を制限している。 その一角には、同色のフレームでつくられたベンチが並び、フェンスの役割を果たしていた。 夜闇と電飾の中、マーケットで買ったば

野良デザイン#180|金網フェンスのコートラック

休日の公園。鬼ごっこに勤しむ子供たちを、金網のフェンスが囲う。その編み込まれた鋼線が形作る菱形に、袖やフードなどの端部を通すことで、衣類が固定されている。 大きい服と小さい服。掛けられている位置の違いが、持ち主の背丈や年齢を物語る。 フードが垂れる重みで衣類が落ちないよう、フードを菱形に二重に通す工夫が見られる。 金網フェンスのコートラック ボールの飛翔範囲を制限する道具 → 衣類を一時的に保管する道具 Habitat|Hyogo, Japan