野良デザインの蒐集

本来の用途を超えた道具の活用【野良デザイン】の蒐集

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    本来の用途の枠を超えて使われる道具たち。街で出会った匿名の創意工夫「野良デザイン」の蒐集をテーマに、街を歩くことがちょっぴり楽しくなるような記事を投稿しています。

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野良デザイン#00|街で出会う匿名のデザイン

はじめまして、デザイナーの眞木(さなぎ)と申します。 私は日頃、設備機器や家電製品をデザインして暮らしています。いわゆるプロダクトデザイナーというお仕事です。 観察する眼 ところで、みなさんはデザイナーと聞くと、どんな仕事を想像しますか? 私は学生の頃、デザイナーは美しい造形や色彩を設計したり、時にはイラストや言葉を巧みに操ってアイディアを伝えるプロフェッショナル、そんな漠然としたイメージを持っていました。 ところがどっこい、いざデザインのお仕事をするようになると、

    • 野良デザイン#187|ビールケースの旗立て

      駅前のテナントに店を構える居酒屋。その軒先にはカラフルなノボリ旗が三本、ビル風になびかれている。 三本のノボリ旗は樹脂製のビールケースに差し込まれ、固定されている。瓶飲料の輸送のための道具が、旗を固定する道具として活用されているのだ。 ビニールで被覆された鉄製のノボリ旗の支柱が、ビール瓶を固定するための枠とビール瓶の間にできた隙間に入り込み、絶妙に固定がなされている。ビール瓶がない状態では不安定な仕組み。そのラベルの風化具合からも、中の瓶はノボリの固定具として、長い間放置

      • 野良デザイン#187|フラワーバケットのパイロン

        とあるスーパーマーケットの車両用通路に立つパイロン。馴染みの赤色の足元は、黒い樹脂製のケーシングで覆われています。その正体は商用の花を保護・流通するためのバケット。「ELFバケットシステム」という流通システムで使われているもののようです。 パイロンの四角形の脚が切り取られ、逆さまに置かれたフラワーバケットに差し込まれています。スタックできるバケットの形状を活かし、2つのバケットが重ねられ、結束バンドで固定されている点も特徴です。 パイロンの設置面積が小さくスリムである点や

        • 野良デザイン#186|タイヤの高欄

          常夏の国マレーシア。日本から7時間ほど離れた空港から一歩出ると、高い湿度と暑さに包まれます。熱帯雨林らしい若草色の景色を背景に、マレー系、中華系、インド系と、多様な文化と人種が入り混じる興味深い土地。 そんなマレーシアの郊外で見つけた野良デザイン。車両用のゴムタイヤが、公道の脇を流れる用水路に架かる、橋の高欄(=落下防止用の柵)として機能しているのです。 直径60cmほどのゴム製のリングが地面に対して垂直に立てられ、その4分の1ほどが道路のセメントに埋められ、橋からの人や

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          野良デザイン#185|コンクリートブロックのツールホルダー

          路地に面した角地の軒先。ブロック塀にもたれるように置かれたコンクリートブロックの穴に、シャベルや熊手が差し込まれている。 収められた2つの園芸具は、塀の足元の雑草を手入れするためのツールだろうか。ブロック塀を構成するピースが、別の役割を持って共存している点も面白い。 Habitat|Osaka, Japan

          野良デザイン#185|コンクリートブロックのツールホルダー

          野良デザイン#184|塗布剤容器の把手

          家の軒先に出されたゴミ箱。足元のペダルを踏み込むと、天面の蓋が開く便利なタイプだ。 その蓋には見慣れないパーツが取り付けられている。どこかで見覚えがあると思いきや、肩こりや炎症を抑えるために使用される塗薬の頭である。 炎症やコリの解消のため用いられる市販薬。手の届きにくい個所への塗布を容易にすべく、塗面がL字に折れ曲がっているデザイン。その折れ形状を切り取り、テープで固定することで、蓋開閉のための把手として利用しているのだ。 コンクリートブロックの不安定な足場ゆえ、本来

          野良デザイン#184|塗布剤容器の把手

          野良デザイン#183|ペール缶のバリカー

          野良デザイン 街を散策すると、本来の用途を超えて活用される工業製品に出会うことがある。それらを、路地に生息する「野良な」デザイン成果物と捉え、道具の可能性や、生活のリアルを探る試みである。 時に、飼い猫よりも野良猫の方が、猫らしい生き方を見せるのだ。 住宅地の一角に置かれた自動販売機。その赤い側面を守るように、2本のコの字状のバリカー(BarrierとCarを組み合わせた造語:車両用のバリヤー)が設置されている。 それぞれのバリカーを、セメントで満たした2つのペール缶に差

          野良デザイン#183|ペール缶のバリカー

          野良デザイン#182|牛乳パックのハンドル

          勝手口の脇に置かれた2つのゴミ箱。丸と四角のプラスチック製の筒には、いずれも頂点に把手が成形された蓋が被せられています。 小さな把手が持ちづらかったのか、把手には折り畳まれた牛乳パックが、蓋の開閉の補助具として備え付けられています。 主に針葉樹のパルプを原料とする厚手の紙に、さらに耐水加工を施した加工紙でつくられた容器。その丈夫な直方体を折りたたみ、既存把手の幅に合わせて端部を折込み、ビニール袋で保護。ビニールテープで、ゴミ箱の把手に固定されています。 ビニールテープは

          野良デザイン#182|牛乳パックのハンドル

          野良デザイン#181|ベンチのフェンス

          微笑みの国タイ。共働きの家庭が多いからか、タイでは夕食を屋台で食す外食文化が深く根付いているようだ。バンコク近郊の主観道路沿いには、マーケット会場が設けられ、大量のテント屋台が軒を寄せ合い、夕刻の賑わいを静かに待つ。 飛行機が離陸できそうなほど広いマーケットの敷地には、駐車場が備えられ、黄色い腰丈ほどのフェンスの群れが、車両や人の動線を制限している。 その一角には、同色のフレームでつくられたベンチが並び、フェンスの役割を果たしていた。 夜闇と電飾の中、マーケットで買ったば

          野良デザイン#181|ベンチのフェンス

          野良デザイン#180|金網フェンスのコートラック

          休日の公園。鬼ごっこに勤しむ子供たちを、金網のフェンスが囲う。その編み込まれた鋼線が形作る菱形に、袖やフードなどの端部を通すことで、衣類が固定されている。 大きい服と小さい服。掛けられている位置の違いが、持ち主の背丈や年齢を物語る。 フードが垂れる重みで衣類が落ちないよう、フードを菱形に二重に通す工夫が見られる。 金網フェンスのコートラック ボールの飛翔範囲を制限する道具 → 衣類を一時的に保管する道具 Habitat|Hyogo, Japan

          野良デザイン#180|金網フェンスのコートラック

          野良デザイン#179|タイヤのパイロンウェイト

          とある屋外駐車場で出会った野良デザイン。砂利敷きの広い敷地に、杭とロープで区画分けされた簡素な駐車場。その中に点々と置かれたパイロンが風で飛ばされぬよう、車用のゴムタイヤが被せられている。 パイロン用に設計されたゴム製のウェイト(写真左側)に比べ、重心が高くなるぶん、安定性が悪化するが、分厚めのタイヤは重量がかなりありそう。 駐車場という「場」に文脈のある活用は、乱雑な配置さえも風景の味にしてしまうようだ。 Habitat|Chonburi, Thailand

          野良デザイン#179|タイヤのパイロンウェイト

          野良デザイン#178|コンクリートブロックのパイロン

          路地に面した敷地境界いっぱいに、塀が設けられた住宅。車がすれ違うことが難しい程度の幅の道。ドライバーへ塀の存在を示す為、黒と黄色のパイロンが置かれている。 よく見ると、パイロンの脇には、黄色く塗られたコンクリートブロックが置かれている。どちらが先に置かれたか、あるいは風に吹かれるパイロンの保険として置かれたものか。 寝かせたコンクリートブロックの活用は、住宅地の景観的観点から唐突なパイロンと比べ、サインとしての機能と、景観に対する親和性のバランスが取れたアイディアのように

          野良デザイン#178|コンクリートブロックのパイロン

          野良デザイン#177|ペットボトルのコンセントカバー

          とある住宅の軒先。窓と窓の間に立つ金属製の柱に、ペットボトルが吊り下げられています。 ペットボトルをぶら下げているのは電源コード。屋外に設置した小さな噴水の電力を供給する為の配線です。 しかしケーブルの長さが足りなかったのか、屋外でコードを継ぐことにしたようです。しかしそこは雨風に晒される屋外。コードの中継点を保護する為、ペットボトルの底を切り取り、雨よけのカバーとして活用されているのです。 飲料を飲みやすくするために設計された、ペットボトルの飲み口。屋内側のコードの先

          野良デザイン#177|ペットボトルのコンセントカバー

          野良デザイン#176|ペール缶のカメラフード

          とある郊外の、工場を兼ねた民家の軒先で見つけた野良デザイン。敷地への侵入者を牽制する防犯カメラには、雨よけのフードが被せられています。 このフード、実はプラスティック製のペール缶を切り抜いて作られたものなのです。工事現場などで見かける、ペンキや塗料などが入っている、円筒状の容器です。 下から見上げるとこんな感じ。地上への視野を確保できるよう、信号機のフードのように斜めに切断されている様子がわかります。 また、電源やデータ移送用のケーブルを通せるよう、雨水の侵入リスクの低

          野良デザイン#176|ペール缶のカメラフード

          野良デザイン#175|ポリタンクのプランター

          下町風情が残る住宅地。路地の両脇には、各戸の敷地と路面を区切るブロック塀が並びます。その塀のほとりには、銀色の見慣れぬプランターがずらり。 寒いシーズンでは石油、最近ではキャンプなどのアウトドアシーンでも活躍を見せる、ポリタンク。その頭頂部を切断し、土を詰めてプランターとして活用しているのです。 ポリエチレン製の容器に、大口のキャップ口が備えられた設計が特徴的なポリタンク。その特徴の一つを切り捨て、丈夫な容器としての一面に焦点を当てた、明快な活用です。 塀と排水溝の間の

          野良デザイン#175|ポリタンクのプランター

          野良デザイン#174|看板の用具ホルダー

          とある墓地の入り口に立てられた看板。墓地利用に関する注意書きが記された板が、金属製の角柱の枠に取り付けられ、これまた同じ角柱でできた2本の脚で自立しています。 2本の脚は看板背面に固定されており、脚と看板の間の隙間を利用して、傘や、スコップなどの道具が収められています。看板の構造が、傘など棒状の用具のホルダーとして活用されているのです。 この墓地、実は小学生の通学路にも接しており、通学時間帯には誘導員のおじいちゃんが常駐しているのです。看板の脇に置かれたパイプ椅子は、彼ら

          野良デザイン#174|看板の用具ホルダー