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野良デザインの蒐集

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本来の用途の枠を超えて使われる道具たち。街で出会った匿名の創意工夫「野良デザイン」の蒐集をテーマに、街を歩くことがちょっぴり楽しくなるような記事を投稿しています。
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2023年11月の記事一覧

野良デザイン#175|ポリタンクのプランター

下町風情が残る住宅地。路地の両脇には、各戸の敷地と路面を区切るブロック塀が並びます。その塀のほとりには、銀色の見慣れぬプランターがずらり。 寒いシーズンでは石油、最近ではキャンプなどのアウトドアシーンでも活躍を見せる、ポリタンク。その頭頂部を切断し、土を詰めてプランターとして活用しているのです。 ポリエチレン製の容器に、大口のキャップ口が備えられた設計が特徴的なポリタンク。その特徴の一つを切り捨て、丈夫な容器としての一面に焦点を当てた、明快な活用です。 塀と排水溝の間の

野良デザイン#174|看板の用具ホルダー

とある墓地の入り口に立てられた看板。墓地利用に関する注意書きが記された板が、金属製の角柱の枠に取り付けられ、これまた同じ角柱でできた2本の脚で自立しています。 2本の脚は看板背面に固定されており、脚と看板の間の隙間を利用して、傘や、スコップなどの道具が収められています。看板の構造が、傘など棒状の用具のホルダーとして活用されているのです。 この墓地、実は小学生の通学路にも接しており、通学時間帯には誘導員のおじいちゃんが常駐しているのです。看板の脇に置かれたパイプ椅子は、彼ら

野良デザイン#173|ビール瓶の忍び返し

タイ バンコク郊外の居住区。工業地区に隣接し、砂がかった舗道の脇には、中層階建ての集合住宅が立ち並びます。各敷地はフェンスや塀で覆われていることが多いが、その中に興味深いブロック塀を見つけました。 コンクリートブロックを積んで塗装した、人の背丈よりも少し低い簡素な塀の上辺に、馴染みのある茶色のガラス片が忍び返しとして取り付けられているのです。とても攻撃的な見た目です。 実はこのガラス片、ビール瓶を粉砕して作られているようです。こちらの写真のガラス片で気づきました。酒場の乱

野良デザイン#172|ペール缶の雨樋

おいしい匂いで満ちた町中華の店先。道路に面して敷地いっぱいに店舗が建てられ、エントランスの横には大きなメタルパイプが鎮座している。店内の調理場につづく換気扇から滴る油などを受ける為の雨樋として機能しているようだ。油煙が建物外壁を汚さないよう、換気扇にはフードが被せられ、そこから滴る油を誘導するよう設計されている。 その地面に至る端部には、樹脂製のペール缶が置かれており、集めた油をキャッチできるようになっている。元々セメントを保管・流通する為の容器が、屋根に落ちた雨水を集める