見出し画像

彼の名前はランスロット(His Name Is Lancelot)とゲイカルチャー


『スパマロット(Spamalot)』は、イギリスを代表する世界的コメディグループモンティ・パイソンの伝説的な映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』に基づいたミュージカルです。
私はこの作品でハーバート王子として出演しました。ハーバート王子は、コミカルで感情豊かなキャラクターで、彼の登場するシーンは観客に大きな笑いを提供します。

その中でも、非常に印象的なシーンが、王子が投げた手紙を見てそれが囚われた姫からの手紙と勘違いして助けに城までやってきたランスロット(Lancelot)に焦点を当てた「His Name is Lancelot」という楽曲です。
この曲は、ランスロットが自身のセクシュアリティに気づく場面を描いています。


歌詞に出てくる「Y.M.C.A」


His Name is Lancelot」は、明るくポップな調子で進行しますが、その内容はランスロットが実はゲイであることをコミカルに表現しています。
特に注目すべき歌詞に次のようなものがあります。

You can all find him pumping at the gym At the Camelot Y.M.C.A.!

He can finally come out and say that he is G.A.Y.M.C.A.


歌詞の中に2度もYMCAが登場します。
これらのYMCAは、1978年に大ヒットしたVillage Peopleの「Y.M.C.A.」を直接的に参照しています。「Y.M.C.A.」自体は、当時のゲイカルチャーと密接な関係があり、特にジムやY.M.C.A.(Young Men's Christian Association)は、ゲイ男性が密かに集まる場所として知られていました。

ここでの言葉遊びは、Y.M.C.Aゲイ文化に関連していることを観客がすでに知っているという前提で行われています。
「G.A.Y.M.C.A.」という言葉の掛け合わせは、ランスロットがついに自身のゲイであることを公言できる瞬間をユーモラスに強調しているのです。

YMCAとゲイカルチャーの関連


Y.M.C.A.は、もともと宗教的な団体ですが、1970年代以降、都市部におけるゲイ男性の社交場として知られるようになりました。特に、Village Peopleのヒット曲「Y.M.C.A.」は、ジムや公共の場所で出会うことを暗示する内容として、ゲイコミュニティから支持を受け、結果的にLGBTQ文化の象徴的な楽曲となりました。

このミュージカル内では、ランスロットがカミングアウトする過程で、「Y.M.C.A.」という曲がゲイ男性の解放感を表現する要素として引用され、
彼のセクシュアリティを明るく笑いに変えています。

歌詞全文と和訳

(歌詞)
Lancelot you might as well just fess up
Really you're a different kind of guy
Move aside your scabbard
For underneath your tabard
There is waiting to escape a butterfly
His... name... is Lancelot
And in tight pants a lot
He likes to dance a lot
You know you do

So just say thanks a lot
And try romance, it's hot!
Let's find out who's really you.
His name is Lancelot
He visits France a lot
He likes to dance a lot and dream
No one would ever know
That this outrageous pro
Bats for the other team.

You're a knight who really likes his night life
And by day you really like to play
You can all find him pumping at the gym
At the Camelot Y.M.C.A.!

His name is Lancelot
Just watch him dance a lot
He doesn't care what people say
For when he starts to dance
Just grab your underpants
He can finally come out and say that he is G.A.Y.M.C.A.
He's Gay!

(日本語訳)

ランスロット、もう認めちゃったらどうだい?
君は本当にちょっと変わったやつだ
その剣を脇に置いて
タバードの下に隠れているものを
逃げ出そうとしている蝶がいる

彼の名前はランスロット
ピタッとしたパンツが好きで
たくさん踊るのが好きだ
君もそうだよね?
だから感謝して言っちゃおう
ロマンスを試してみて、それは熱いんだ!
本当の自分を見つけよう

彼の名前はランスロット
よくフランスを訪れる
踊るのが大好きで夢見るんだ
誰も気づかないけど
この派手なプロは
別のチームでプレーしているんだ

君は夜の生活が本当に好きな騎士だ
昼間は遊ぶのが好きで
彼はキャメロットのY.M.C.A.で筋トレしてるよ!

彼の名前はランスロット
彼の踊るのを見て
彼は人が何を言おうが気にしない

踊り出すときは
下着をつかんで
ついに彼はこう言えるんだ、「僕はG.A.Y.M.C.A.!」
彼はゲイだ!

歌詞の言葉遊びと皮肉


さらに歌詞の中には、いくつかの興味深い言葉遊びやInnuendo(あいまいな言葉を使った皮肉や暗示)があります。

Bat for the other team
これは「同性愛者であること」を示すスラングです。スポーツに例えて、通常のチーム(異性愛)ではなく、他のチーム(同性愛)の側でプレーしているという意味になります。

Move aside your scabbard / For underneath your tabard / There is waiting to escape a butterfly
ここでは、剣と鞘(男性性の象徴)butterfly(蝶、つまり内なる自己=セクシュアリティ)の解放を表現しています。この蝶が解放されることで、ランスロットは本当の自分を見つけ出すのです。

この歌詞は、ランスロットの勇敢さと強さの裏にある柔らかさや、本当の自分を認める勇気を象徴しています。

His Name Is Lancelot


まとめ


His Name is Lancelot」は、『スパマロット』の中でランスロットのキャラクターに深みを与える、コミカルかつ重要な楽曲です。Y.M.C.A.とゲイカルチャーの関係性を踏まえた上で、この曲がどのようにユーモラスでありながらもLGBTQコミュニティへの敬意を込めているのかが理解できるでしょう。

さらに、歌詞に散りばめられた言葉遊びや皮肉は、観客を笑わせつつも、ゲイであることを明かす瞬間の緊張感と解放感を絶妙に表現しています。このような手法は、モンティ・パイソンの独特なユーモアに通じるものであり、シリアスなテーマをコミカルに描き出す素晴らしい例と言えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?