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2020 Movie RANKING

2020年に「劇場で」観た新作(※リバイバル, 4Kリマスターなどはカウント外)

劇場停止期間もあり、途中丸々3ヶ月ほど映画館に行けないという滅多にない事態になったりもしたものの、最終的には劇場鑑賞 43本、自宅77本で Total 120本。
必然的に自宅で見る本数が増えた1年だったのは他の多くの方と同じかもしれません。
配信作品で「これを今年の数に含めなくていいのか…」と悩む作品(例:シカゴ7裁判)もあり、ちょっと本当に来年から一考しなくてはという思いもあるものの、今年は例年通り劇場新作として鑑賞した分だけでいきます。
では、以下全ランク!

2020年 新作

第1位 レ・ミゼラブル
第2位 スウィング・キッズ
第3位 レイニーデイ・イン・ニューヨーク
第4位 ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語
第5位 ハスラーズ
第6位 フォードvsフェラーリ
第7位 2分の1の魔法
第8位 リチャード・ジュエル
第9位 ミッドサマー ディレクターズカット版
第10位 グッド・ボーイズ
第11位 彼らは生きていた

第12位 ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋
第13位 透明人間
第14位 ランボー ラスト・ブラッド
第15位 ジョジョ・ラビット
第16位 mid90s
第17位 オン・ザ・ロック
第18位 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
第19位 燃ゆる女の肖像
第20位 ミセス・ノイズィ
第21位 パラサイト 半地下の家族
第22位 異端の鳥
第23位 佐々木、イン、マイマイン
第24位 名もなき生涯
第25位 ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!
第26位 アナと雪の女王2
第27位 スキャンダル
第28位 TENET
第29位 ジュデイ 虹の彼方に
第30位 テリー・ギリアムのドン・キホーテ
第31位 アンダードッグ(前後編)
第32位 ワンダーウーマン 1984
第33位 パブリック 図書館の奇跡
第34位 デッド・ドント・ダイ
第35位 1917
第36位 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編
第37位 アングスト/不安
第38位 スパイの妻 <劇場版>
第39位 今宵、212号室で
第40位 ミッシング・リンク

今年のこと

異例の事態が発生し、映画やエンターテインメント産業自体のあり方やその製作方法の変化も含めて問われた年となりました。
また大林監督やチャドウィック・ボーズマン、その他にも惜しくも亡くなられた偉大な方々のことが一抹の寂しさとともに影を落とす1年となったところもあると感じています。
劇場公開なし・配信onlyに踏み切ったディズニーとそれに対する批判の声が上がる一方で、今後の事態によっては我々のような1映画ファンに対する視線も「映画なんて観に言ってる場合か」という風潮に変化しても何らおかしくない状況になるかもしれません。
不要不急か?という価値観は一面的な見方に大いに依存すること。
今年、多くの人が考えたテーマだったと予想します。

その結果、誰もが自分勝手。
・これは俺にとっては不要不急じゃない。(→だからやっていい)
・ここまではセーフ。(→だからやっていい)
・どうせ若者は罹患しても大丈夫。(→だから普通に生活する)
・実際の死者数は少ない。(→自粛してるやつは経済不況により死者が出る方を深刻視すべきだ)
 
 
この一種の思考実験は究極の極論としていまなお存在する「なぜ殺人はいけないか」という問いにも似ています。
・法律で決まっているからダメなんだ。
・同じ種を殺めてしまうことは生物学的な滅亡に繋がるからダメだ。
・ただしこの人物は重大な国家反逆犯であり危険思想の持ち主だ。(→だからコイツは死刑でいいんだ)
・ただしこいつには家族を殺された。(→だから復讐する)
・XX 人は人間ではない。(→だから民族もろとも粛清する)
 
この「なぜ殺人はいけないか」は愛読している名著「高橋ヨシキのサタニック人生相談(スモール出版)」に登場した中で、一番感銘を受けた質問とその答えからの引用になります。
こうして並べていくと、各人にとって心のどこかに「やってもいいライン」が存在していることに気づくはずだ、と。
この問いに対する答を他者に求めるような人に明確な回答をすることは危険であるため、ここでは答えないが、なぜいけないかと自分の引いたラインの意味を考え続けてもらうこと自体が質問に対する答えそのものになる、とこの本では述べられていました。
結局自分勝手に答を出すしかないわけで、もし正しくないことをしそうになっても、そこで引き返すことができれば全然いいと僕は思います。
その都度、自身の行動を省みる想像力を我々は養っていかなくてはいけない。
なんのために映画を観るのか?ということをテーマに総括した2018年のMovie Rankingでも触れたとおり、僕は個人がこれまで見てきた経験だけから来る想像力などまるで信用していない。
自分で経験できることには限界があります。
「だから映画を見て他者の人生を経験しよう!」という安易な結論に行きたいのは映画ファンとしてやまやまですが、これもまたひとつの一元的なものの見方に他なりません。
それに勉強のために映画を観てる訳ではもちろん、ない。

ちなみに僕が今年の映画で一番心に残ったセリフは

「お前など何度も殺せたが、最後まで残しておいた」
【ランボー ラスト・ブラッド】

ここで書いてきたことと関係ないでしょと言いたかったわけですが、、それにしてもかっこいいセリフだな。
でもランボーから感じ取った言語化していない感情はほかにきっと沢山あり、それが自分の想像力や善悪の判断などに多様に影響していることは想像に難くありません。
少なくとも僕は死者を人数で捉え「死者は少ない」などと多寡で言い放つ考え方には戦慄を覚えるし邪悪であると思っています。
死んでる人は(いるのに)多くないんだから(生きてる自分たちのために)経済を回すべきなど超Fuck offです。
不安になって言ってしまうことはあるかもしれないが、誰かになだめられ考え直し鞘に収められることを願ってやみません。
その上で、大声で触れ回るような人間には想像力が足りない。
しかしそういう人間は存在する。
その社会で僕らや仲間たち、その子供の世代は生きていくこととなります。
 
今年のテーマは「そういうことになっているから」と考えないふりをすることは、個人が勝手に行きてる社会でいずれ無理を来すし、
その場の風潮に流されず自分の行動に理由を持つこと。誰も責任は取ってくれない。という点です。
これはスピルバーグが数々の作品で繰り返し描いている主人公のようなテーマだといま思いました。
その結果、例年と違ってほぼ迷うことなくこの順位に到達しました。

上位11作品のこと

ベスト11が本当に全部好きなので本当は全部一言書きたいのですが、、、
【第11位 彼らは生きていた】
これが技術の正しい使い方。企画と射程がものすごいので紹介だけでも見てみてください。
【第10位 グッド・ボーイズ】
ブックスマートも良いんだけどオレはこっち派です。
【第7位 2分の1の魔法】
かなり地味なルックなため注目されにくかったけど、実はこれピクサー史上一番いいんじゃないかと思ってます。
僕はというと泣けるとかいうレベルじゃなくて、体がブルブルと震えるくらい感動してしまい、劇場でなんとか声だけは出さないように必死に抑えて観ました。あまりグッズもなくて、海外サイトでいろいろ買いました。
【第5位 ハスラーズ】
とにかくJ.Loの登場シーンにつきる。マジかっけええええ

【第6位 フォードvsフェラーリ】、【第4位 ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語】
この辺はあらゆる点で見事で普通に各紙でもこのどっちかが1位獲ると思うし、字数も全然足らないので良かったよとだけ。
今年の映画で好きだったシーンのたぶん1番はフォードvsフェラーリでクリスチャン・ベールが息子とレースのシミュレーションしてて「あれが見えるか?」って語る顔を息子がそっと見るけど父はカーブの手前を見つめてるシーンです。

レイニーデイ・イン・ニューヨーク


【第3位 レイニーデイ・イン・ニューヨーク】
これだけ変則的。生涯ベスト監督であるウディ・アレンのもしかしたら最終作、かと思ったまま観ました。(実際はまだ撮るらしい)
過去だったらウディ・アレン本人がやっていたであろう理屈っぽいニューヨーカーの役、
というか過去作の男たちを全員足したようなキャラクターを中心に据え、挿入歌も過去作のJazzばかりで構成されてるので、
これ最後か?最終作なんじゃないか?と思ってしまうのもやむなしな展開だったのですが、「結末だけが」これまでと違う。
結末に「自分で選ぶ」方を取るシャラメに完全に虚を突かれてしまいました。
恵比寿ガーデンシネマ(ウディ・アレンといえばここ)から恵比寿駅までの道すがら、自分の感じたことを繰り返すうちに
なんとも涙が溢れて止まらず、メソメソと帰りました。
これに関しては偏愛の域に入ってるのでかなり説明が要るのですが、ウディ・アレン入門編として、そして間を飛ばし長年の愛好者にとって、
その両者に最適な、オシャレで苦い最高の人生の教科書としてのウディ作品にまた新たな1本が加わったと思います。
これは絶対盤買っちゃうわまた。

スウィング・キッズ

【第2位 スウィング・キッズ】
ウォーターボーイズ系韓国映画だろうくらいの期待値で観に行き、ある種想定された結末を踏まえて観るなら、
最後には随分と遠いところへ連れてこられたなという感想を抱かせる恐ろしく長い射程距離を持った作品でした。
タップダンスとJazz Musicに象徴される自由意志の達成が、物語的にも映像的にも時代・時空を超えて、
大文字で言うところの「自由」ではない、自由「意思」、すなわち時代や制度にとらわれない個人の意思を貫くことに帰結する。
誰も責任などとってくれないまま時間は過ぎていくが、それに気づき行動を選び取ることは難しい。本当に難しいと思う。
時代だっていずれは変わっていくんだから、という最後の余韻を「切なさ」以上に「アゲ」に変えて終わる、
非常~~~~に感慨深いラストには唸らざるを得ませんでした。韓国すごいな…

レ・ミゼラブル

【第1位 レ・ミゼラブル】
*2012年のアン・ハサウェイとかのじゃなくて今年日本公開の別なやつの方です。
これが2020年の No.1ということは見終わった瞬間から決まってました。
権力はドラッグだ、とまざまざ見せつけられることが多い昨今、敷かれたレールのごときルールの中で
それぞれの「ロール」を与えられた、とりあえずの権力側、ルールの支配下にある民衆。
ルールの名の下で徐々に正当化される「暴力」と、権力を監視する民衆の武器「視線」。
状況が逼迫してくるにつれ両者にもはや正義はなく、常にノーミスが要求される社会の中で緊張感は増すばかり。
そこから生まれる隠蔽、小さな嘘、虚勢により、わずかに残ったなけなしの正義感はやがて飲み込まれ、
取り返しのつかない事態へエスカレートしていく。
ひとつひとつの小さな小さな描写を丁寧に積み重ねた結果、エンターテインメントとしてまず非常に引き込まれるし、
最終的に巨大な問いをこちらに投げかけた状態で答は出さずに映画は終わる。
「そういうことになっているから」、「ルールに則って生きてる」だけでは、不利な者からの逆襲は必ず起こるし、
とにかく考え続けるしかなく安寧の道はない。
いつだって自分が想像もしなかった悲劇は起こり得るし、なんとか後悔を少なくしていくようにやっていくしかないのかもしれませんね。

これから

来年も映画館で映画が観られることを願っています。
10年前の自分だったらこんなの信じないと思うけど、大事なものは自分ごととして大事にしていかないと。
映画など無くたっていいと思う人がこんなにいる世界に生きているんだから。
これはすべての趣味に当てはまること。
誰もがある種、自分勝手に行動するしかそもそもない中で、想像力だけは失くさずにいたいものです。
 
 
さて2021年も楽しみ。
いま期待してるのは「ビバリウム」です。
あと配信ドラマだけど「コブラ会 シーズン3」

今年もお世話になりました。良いお年を*

TAKA


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