コント「待ち時間」

傘を差しながら待っているA、B

B「雨降ってるなー」
A「降ってるねー」
B「結構雨久しぶりだよね」
A「そうね、最近晴れ多かったからねー。」
B「付いてねーなー」

B「中川早く来ねーかなー」
A「遅いねー」
B「もう10分すぎてるぜ?こんな寒い所で待たせてよー。」

B「予報見た?今日最高気温10℃らしいぜ。寒くなったよなー。」
A「ふーん、今日は見てないわ。」
B「(携帯を確認して)うわ、今東京7℃しかないってよ。そりゃあ寒いわけだ。」
A「そうなんだー。」


A「本当に7℃?」
B「うん、今の東京」
A「もうちょっとあると思うけどなー」
B「いやサイトにはそう書いてあったよ?」


A「もう数度高いと思うけどな…」
B「数度の違いまでまで分かるの?」
A「ちょっと待ってて」
B「何?」
(A、目を閉じる。一歩進んで扉を開けるそぶり。顔を前に出して、すぐ戻す。扉を閉めるそぶり。)
B「こんなところで何やってるの?」
A「ここの今の気温は、9℃だね。」
B「はい?」
A「俺さ、今現在の天気がどうなのかが正確に分かるんだよね。」
B「は?さっきのあのそぶりは?」
A「目を閉じると、目の前に百葉箱が見えるの。その中身を見れば今の気温が何度かが分かるんだよ。」
B「なんかよく分かんないけど、すげー能力を持ってるってこと?」
A「まあ、そうなのかな…」
B「ちょっと、もう一回やってくれる?」
A「いいよ」
(A、目を閉じる。一歩進んで扉を開けるそぶり。顔を前に出して、指さして温度確認。すぐ戻す。扉を閉めるそぶり。)
B「あ、扉あけた。覗いた。温度確認、戻す。」
A「やっぱ9℃だね。」
B「すげー。まじで。本当?」
A「まあ、間違いないね。本当かは、温度計持ってないから分からないけど。」
B「へぇーそうなんかー。じゃあさ、今の雨がどんぐらいかとかもわかるの?」
A「うん。ちょっと待ってね。」
(A、目を閉じる。一歩進んでしゃがむ。中をのぞいて確認)
A「今は、3mmだね。」
B「ほー。すげー。」
A「まあ本当の雨量は測りづらいし、別に、分かったところでなんだって話だけどね。」
B「いやいやすげーよお前。聞いたことないもん。じゃあさ、これからの天気を予測することとかは?」
A「それはできないな。俺にできるのは、目を閉じて、気温とか、風速とか、雨降ってるときは降水量とか。今だけ。」
B「ほう」
A「予測できたら、そりゃあ便利だし、人の役に立つんだろうな、なんて思うけどね」
B「そうなんかー。今が分かるだけで十分凄いって。俺にはないよ、そういう特技。」
A「誰でも何個かはあると思うけどなー」
B「そんなことないけどな…。」

B「もしかして、他にもあるの?」
A「他には、別にたいしたことはないけど、会った人の年齢を当てられることとか?」
B「えっ?年齢当てられるの?誤差なしで?」
A「うーん」
B「じゃあさ、今向こうにいる人たちの年齢分かるの?」
A「まぁ」
B「例えばあそこにいる駅員さんは?」
A「27歳だな」
B「おー。あそこで切符買ってる女の人は?」
A「あの人は、56歳だね。」
B「へぇー。結構若作りしてるんだな。じゃあさ、向こうのおじいちゃん、おばあちゃんは?」
A「おじいちゃんは82歳で、おばあちゃんは70歳だね。」
B「へえ、結構年の差離れてるんだな。」
A「そのぐらいの年になったら、年の差なんて関係なくなるんかね。」
B「そうか?そのぐらいになるとさ、体力の違いというか、老老介護っていうの?おばあちゃん大変だろうね。」
A「それもそうね」

B「いやーーー、この会話、楽しいな」
A「本当年齢信じてもらってるけど、間違ってるかもしれないよ?確認できないし。」
B「でも自信あるんでしょ?」
A「そうね」
B「それが凄いんだよなー」
A「でもどっちの特技も役に立たないよ。」
B「実用的かと言われたらしょうがないけど。」

B「いや、この特技さ、最強の待ち時間の話のタネじゃない?」
A「待ち時間の話のタネ?」
B「待ち時間で何話すかって一番難しいじゃん?すぐに天気いいねとか、寒いねとかしょうもないことばっか話して、後はしーんとなっちゃって。」
A「確かに。」
B「そんな時にさ、天気何度とか、年齢何歳とかいう話ができたら、面白いじゃん。現に今人生で一番楽しい待ち時間の過ごし方してるし。」
A「あ、なるほどね。そういう視点はなかったわ。」
B「でしょ?」

A「ありがと。」

A「お、中川来た。行こうぜ。」
B「来ちゃったわー」
A「来ちゃったわではないだろ」

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